今回は漢方薬の柴胡桂枝乾姜湯（サイコケイシカンキョウトウ）について解説します。
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柴胡桂枝乾姜湯の名前の由来
「小柴胡湯から人参、半夏、生姜、大棗を抜いて、括楼根、牡蛎、桂枝、乾姜を加えたこと」を簡単に表した処方が柴胡桂枝乾姜湯になります。
柴胡桂枝乾姜湯の作用機序と特徴
柴胡桂枝乾姜湯は不安障害や更年期障害に使用されている漢方薬であり、含まれている生薬は柴胡（サイコ）、黄芩（オウゴン）、栝楼根（カロコン）、桂皮（ケイヒ）、牡蛎（ボレイ）、甘草（カンゾウ）、乾姜（カンキョウ）です。
東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。柴胡桂枝乾姜湯に適応のある証は、虚証、気滞であり、体力が低下気味で気持ちがふさぎ、イライラ・のぼせがあって胸部・腹部が苦しい状態の人に向いています。
添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果
体力が弱く、冷え症、貧血気味で、動悸、息切れがあり、神経過敏のものの次の諸症：
更年期障害、血の道症、神経症、不眠症用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2～3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ツムラ柴胡桂枝乾姜湯エキス顆粒（医療用）より引用
漢方薬は作用機序の科学的な解明がされていない場合が多く、柴胡桂枝乾姜湯も例外ではありません。
含まれている生薬から考えれば、柴胡と黄芩を組み合わせることによって強い抗炎症作用を発揮し、桂皮によって熱・痛みを発散させることで効果を発揮するとされています。
栝楼根には心身を潤す効果があり、口渇などの症状を緩和することができるため、更年期障害による症状の緩和に効果的です。
また柴胡にはストレスを軽減する効果もあり、そこに精神を落ち着ける効果がある牡蛎、体力を補って温める乾姜、効果を束ねて調整する甘草が加えられることで、不安障害やうつ症状に効果を発揮していきます。
うつ症状を呈する女性には、古くから加味逍遥散が用いられてきました。加味逍遥散では血を補いながら気の循環を改善し、特に熱を冷ます効果に優れるため、カッカしやすい更年期障害を合併しているうつ状態に効果を発揮していきます。
関連記事：加味逍遥散の作用機序と特徴、副作用
柴胡桂枝乾姜湯も加味逍遥散とよく似ている効果を発揮することが知られており、気を補充する効果を持ちながら、より水を補完する能力に優れたものとなっています。
熱を放散して必要な部分を温める効果に優れるため、ほてりはあるが冷えやすくもあり、不眠や不安を感じる場合にはより効果的な漢方薬だと言えるでしょう。
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柴胡桂枝乾姜湯の副作用
柴胡桂枝乾姜湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。
低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。
また、肝機能検査値異常や黄疸、強い倦怠感、かゆみなどを引き起こしてしまう肝機能障害や、呼吸困難や咳・発熱や肺音の異常などが起きる間質性肺炎の報告もあるため、そういった兆候が現れた場合には服薬を中止しなければいけません。
その他の副作用として、発疹・発赤を呈する過敏症状の報告があります。服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。
柴胡桂枝乾姜湯の飲み方と注意事項
柴胡桂枝乾姜湯は1日2～3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが気づいた時点で服用しても大丈夫です。
柴胡桂枝乾姜湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。そのため服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。
あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。
甘草を有効成分として含んでいるため、甘草を含んでいる漢方薬との併用はもちろん、その有効成分であるグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があります。
妊娠中の使用に関しては有益性がある場合にのみ使用することとなっていますが、含有している生薬の乾姜が、妊婦には慎重投与とされているものです。基本的に妊娠中の使用はあまり選択されない漢方薬だといえるでしょう。
それでは柴胡桂枝乾姜湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。
