今回は漢方薬の竜胆瀉肝湯(リュウタンシャカントウ)について解説します。

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竜胆瀉肝湯の名前の由来

 

含まれる9種類の生薬(次項参照)のうち、主薬の「竜胆」、肝経という経絡の走行にある組織に生じた湿熱を瀉する(排尿困難を伴う発熱、炎症を抑える)作用から「瀉肝」、この2つを組み合わせて竜胆瀉肝湯と命名されています。

竜胆瀉肝湯の作用機序と特徴

 

竜胆瀉肝湯は排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ(おりもの)に対して適応を持っている漢方薬で、含まれている生薬は以下です。

  • 地黄(ジオウ)
  • 当帰(トウキ)
  • 木通(モクツウ)
  • 黄芩(オウゴン)
  • 車前子(シャゼンシ)
  • 沢瀉(タクシャ)
  • 甘草(カンゾウ)
  • 山梔子(サンシシ)
  • 竜胆(リュウタン)

 

東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。

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竜胆瀉肝湯に適応のある証は実証・熱証・水毒であり、体力があって火照りやすく、水分調節がうまくできない状態の人に向いている漢方薬です。

 

添付文書には以下のように記載されています。

効能又は効果
比較的体力があり、下腹部筋肉が緊張する傾向があるものの次の諸症:
排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ

用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。添付文書には以下のように記載されています。

ツムラ竜胆瀉肝湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用

 

漢方薬の科学的な作用機序は解明されていないものが多く、竜胆瀉肝湯も例外ではありません。そこで、含まれている生薬から、その効能効果を考察していく必要があります。

 

名前からもわかる通り、竜胆瀉肝湯の主薬は竜胆です。竜胆は瀉火薬といわれる分類となり、強力に炎症を改善する効果を持っています。

 

黄芩・山梔子も同様に強力な抗炎症作用を持ち、体にたまった熱を発散させる効果を持っています。車前子・沢瀉・木通は利水作用を持ち、体内で行き場をなくした水分をコントロールする役割を発揮しています。

 

これらの作用が複合的に発揮されることで、水分排泄に伴う炎症、つまりは膀胱炎・前立腺炎などを緩和する力を発揮します。

 

また、当帰・地黄は血の循環を助け、停滞を緩和します。それによって女性特有のおりものに対する悩みにも効果を発揮すると考えられます。

 

おりものの原因ではカンジタという真菌が原因となる場合もあり、その場合でも抗炎症効果が作用して改善を促すことが可能です。

 

ただし、感染症の場合には医師による抗真菌薬の処方がなければ完全に改善させることが難しい場合もあるため、自己判断での治療はおすすめしません。

 

また熱を発散させる効果を持つため、皮膚に熱を持って発症する乾性のアトピーやニキビにも効果的に作用する場合があります。

 

ただし、皮膚科疾患に対しては適応があるものではないため、どこまで効果が発揮できるかは体質による部分が大きいです。

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竜胆瀉肝湯の副作用

 

竜胆瀉肝湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。

 

低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。

ミオパチー:ここでは難病である先天性ミオパチーではなく、薬剤性ミオパチーを指しています。薬剤性ミオパチーは何らかの医薬品の影響で筋肉が痩せていき、力が入りにくいという自覚症状を伴います。服用を中止することで改善することが可能です。

 

それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。

 

また、肝機能検査値の異常を伴う肝機能障害・黄疸や、咳嗽・呼吸困難・肺音の異常などが現れる間質性肺炎も重大な副作用として報告されているため、合わせて注意が必要です。

 

その他の副作用として、食欲不振や胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状が報告されています。

 

添付文書には記載されていませんが、山梔子を含んでいる漢方薬を長期間服薬することによって、腸管膜静脈硬化症を発症するリスクがあります。

 

腸管膜内を流れる静脈の石灰化によって大腸に炎症を起こし、初期には下痢・腹痛などを繰り返すことが主な病態になります。

 

服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。

竜胆瀉肝湯の飲み方と注意事項

 

竜胆瀉肝湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが、気づいた時点で服用しても構いません。

 

服用に当たっては、約60℃のぬるま湯で溶かして服用する方が効果的だと言われています。あまりに熱いお湯では薬効成分が揮発する可能性があるため、注意してください。

 

有効成分の重複には注意を要するものがあり、甘草を含む漢方薬の併用には注意しなければいけません。

 

前述している甘草による副作用が発現してしまう可能性があるため、甘草を含有している漢方薬はもちろん、甘草の有効成分として含有されているグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があり、併用注意となっています。

 

体力が低下気味の患者や、胃腸障害・悪心などを呈している患者では、消化器症状を起こしやすくなってしまうため、患者の証をしっかりと確認した上で使用する必要があります。

 

妊娠中の使用は、添付文書では「有益性が危険性を上回る場合」となっています。含まれている生薬は胎児や母体に対して不利益が出るようなものではありませんが、使用の可否は自己判断せず、必ず医師の判断に従うようにして下さいね。

 

それでは竜胆瀉肝湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。

出典:
クラシエ竜胆瀉肝湯:添付文書
クラシエ竜胆瀉肝湯:インタビューフォーム
ツムラ竜胆瀉肝湯エキス顆粒(医療用):添付文書
ツムラ竜胆瀉肝湯エキス顆粒(医療用):インタビューフォーム
日本漢方生薬製剤協会「漢方薬による腸管膜静脈硬化症」
廣川書店「医療における漢方・生薬学」

>>ツムラの漢方薬一覧(番号順)と知っておきたい知識