肝機能が悪い方に睡眠薬を処方する時は結構悩むところ。なぜなら睡眠薬は基本的に肝臓で代謝されるからです。

 

今回は医師から「重度の肝機能障害がある患者に睡眠薬を処方したい」という相談を受けましたのでご紹介したいと思います。

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睡眠障害と睡眠薬のタイプについて

タイプ 症状
入眠障害

夜なかなか寝付くことができない

寝るのに30分~1時間錠かかる

中途覚醒 夜中に何度も目が覚めてしまう
熟眠障害 どれだけ寝ても寝た気がしない
早朝覚醒 朝早く目が覚めて、その後寝付けない

ご存知の方が多いと思いますが、一応確認していきます。睡眠障害は症状により上記4つのタイプに分類されます。

 

タイプ 主な睡眠薬 一般名 半減期(時間)
超短時間型 ハルシオン トリアゾラム 2~4
マイスリー ゾルピデム 2
アモバン ゾピクロン 4
ルネスタ エスゾピクロン 5~6
短時間型 レンドルミン ブロチゾラム 7
リスミー リルマザホン 10
エバミール、ロラメット ロルメタゼパム 10
中間型 エリミン ニメタゼパム 21
ロヒプノール、サイレース フルニトラゼパム 24
ユーロジン エスタゾラム 24
ベンザリン、ネルボン ニトラゼパム 28
長時間型 ドラール クアゼパム 36
ソメリン ハロキサゾラム 85
ダルメート、ベノジール フルラゼパム 65
非ベンゾジアゼピン系 ロゼレム ラメルテオン 1
ベルソムラ スボレキサント 10

また、睡眠薬は半減期により大きく4つに分類されます。半減期とは薬の血液中の濃度が最高になった後、それが半分の濃度になるまでにかかる時間を指します。これが作用時間の目安となります。

 

処方する際は睡眠障害のタイプによって睡眠薬を使い分けます。2種類以上併用する場合もあります。

 

ただ睡眠薬に関しては、生理機能についてはあまり考えずに処方されるケースが多い印象を受けます。

睡眠薬の多くは肝代謝型

睡眠薬の多くは肝臓の薬物代謝酵素CYPで代謝されます。つまり、肝機能が低下していると代謝機能が低下し、血中濃度が上昇することで効きすぎる危険性があるのです。

 

当然副作用発現のリスクも高まります。

 

そのため、薬によっては(マイスリーなど)重篤な肝障害のある患者様は禁忌に指定されているものもあります。

 

そこで今回私が提案したのはロルメタゼパム(エバミール、ロラメット)です。

ロルメタゼパム(エバミール、ロラメット)を提案した理由

理由はロルメタゼパムが第Ⅰ相の肝薬物代謝酵素を介さず、第Ⅱ相のグルクロン酸抱合のみで代謝されるという特徴があるからです。

製品の治療学的・製剤学的特性

本剤は肝の代謝過程においてグルクロン抱合化が行われ,肝薬物代謝酵素による代謝を受けないベンゾジアゼピン系睡眠剤である.

エバミール錠1.0インタビューフォームより引用

グルクロン酸抱合を受けると水溶性が高まりますので、尿中に排泄されることになります。

 

ただロルメタゼパムは代謝物も活性を持ちませんので、腎機能障害のある患者様にも比較的安心して使用することができます。

強い不安を伴う場合はロラゼパム(ワイパックス)も有用

ロラゼパム(ワイパックス)は抗不安薬ですが、ベンゾジアゼピン系ということもあり、抗不安作用とともに中程度の睡眠作用も持ち合わせています。

 

ロラゼパムも主にグルクロン酸抱合で代謝されるため、肝機能障害のある患者様に使いやすいと言えるでしょう。

代謝部位及び代謝経路

肝臓で代謝され、尿中に排泄される。大部分が直接グルクロン酸抱合される。

ワイパックスのインタビューフォームより引用

 

患者様によっては「これ以上薬を増やしたくない」という方もいらっしゃると思います。そのような時はロラゼパム1剤で対応できる場合もあります。

 

ポリファーマシーの観点からも有用です。

 

肝機能障害のある患者様に睡眠薬を処方する際、参考にして頂ければ嬉しいです。最後まで読んで頂きありがとうございました。