腎臓は体内の不要な物質を排出するための重要な器官です。その器官が適切に機能出来ているかどうかが、現代の治療において重視しなければいけないポイントとなります。

 

腎臓が正常に機能しているかどうかを調べるために用いられる指標、eGFRとCcrの違いとはどういったものであるのか、お話していきたいと思います。

スポンサーリンク

eGFRとは?

 

推算糸球体濾過量の英語表記を略したものがeGFR(estimated glemerular filtration rate)です。腎臓の糸球体からどの程度体内の不要な物質が排泄されているかを調べるために用いられ、eGFRの値が低ければ腎機能が低下していると判断することができます。

 

本来であれば推算ではない糸球体濾過量(GFR:glemerular filtration rate)が腎機能を調べるために用いられるべきですが、GFRを測定するためには人間の体にもともと存在していない「イヌリン」という物質を使用しなければなりません。

 

イヌリンは多糖類の一種で、体内で代謝されず糸球体で排泄され、腎尿細管での排泄・再吸収を受けない特性を持っているため、腎臓の機能を調べるのに適しています。

 

糸球体の機能を測る上でイヌリンは都合が良い物質ではあるのですが、これを投与して測定するための手技は非常に複雑となります。そのため、イヌリンに近い挙動をする物質としてクレアチニンの値を使用し、GFRの値を推算したものがeGFRなのです。

Ccrとは?

 

クレアチニンクリアランスの英語表記を略したものがCcr(Creatinine Clearance)です。

 

糸球体と尿細管をあわせて、どの程度体内の不要な物質が排泄されているかを調べるために用いられ、Ccrが低ければ腎機能が低下していると判断することができます。

 

クレアチニンは体内において筋肉などから生成されるため、改めて検査のために投与する必要がありません。

 

本来であれば24時間かけて実際に排泄されたクレアチニンを測定することにより求められる実測Ccrを使用するべきです。しかし採血によって血清クレアチニン値を得られれば推算Ccrとして簡便に測定することも可能であり、医療現場においてはこの推算Ccrが使用されています。

 

%e3%82%b3%e3%83%83%e3%82%af%e3%82%af%e3%83%ad%e3%83%95%e3%83%88%e3%81%a8%e3%82%b4%e3%83%bc%e3%83%ab%e3%83%88%e3%81%ae%e5%bc%8f

代表的なのはコッククロフトとゴールトの式(Cockcroft & Gault equation)ですね。女性はこれに0.85をかけます。

 

さて、推算Ccrを用いる上で注意しなければいけないのが、血清クレアチニン値が筋肉量によりばらつきを生じてしまう点です。

 

計算式の中には体重などの項目も存在しており、肥満体型や高齢者であれば実測Ccrよりも推算Ccrの方が高くなってしまう例もあるため、注意しなければなりません。

スポンサーリンク

eGFRとCcr両者の違いとは?

 

どちらもクレアチニンを用いて腎機能を測定するために使用されるものであり、兄弟関係のようなeGFRとCcrですが、細かく見ていくといろいろと違いがあることがわかります。

 

eGFRは糸球体からの排出を測定するもの、Ccrは糸球体からの排泄に加えて尿細管からの再分泌も含んで測定するものです。よって尿細管での再分泌が加わる為、CcrがeGFRに対して約3割ほど大きくなります。

 

eGFRは腎臓の濾過機能を測ることに特化しているため、慢性腎不全(CKD:Chronic Kidney Disease)の診断に用いられており、Ccrは腎臓全体から不要物質がどの程度排泄されるかを調べることができるため、腎臓から排泄される医薬品の投与量を決めるために活用されています。

 

Ccrは血清クレアチニン値、年齢や体重などの要素から計算で求めることができ、Ccrがわかればさらに計算式によってeGFRも求めることができます。計算式は実測Ccrと推測Ccrで異なり、

eGFR=0.715×実測CCr
eGFR=0.789×推測CCr

となっています。

 

Ccrがすでに計算できているのならeGFRを求める意義は薄く、特別な目的がない限りは必要となることは少ないといえるでしょう。そのため現代ではCcrが腎機能を測るうえで主要な検査項目となっています。

まとめ

 

現代の医療において欠かすことのできない腎機能の測定を簡便に行えるようになったのは、Ccrを測定できるようになったからといえるでしょう。

 

医薬品の投与量を決定するためにもなくてはならないものですが、計算上の数値にばかり注意が向いてしまい、患者の本当の姿を見失ってしまってはいけません。

 

数値はデータとして活用し、患者本来の姿もきちんと目に止めておく必要があります。また体重に比べて筋肉量はどうかなど、注意するべき点は数多くあります。

 

それではeGFRとCcrの違いについては以上とさせて頂きます。最後まで読んでいただきありがとうございました。