今回は2017年10月下旬に発売予定、抗精神病薬のビプレッソについて解説します。
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ビプレッソとは?
名前の由来は分かり次第更新します。
ビプレッソの作用機序と特徴
ビプレッソはの成分はセロクエルと同じクエチアピンですが、厚生労働省の「医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」にて、適応外使用の是正・適正化のために開発要請された医薬品になります。
双極性障害におけるうつ病では、通常のうつ病治療薬を使用した場合悪化してしまう可能性があり、海外ではクエチアピンが双極性障害の第一選択薬とされています。
今回ビプレッソが販売されることにより、日本でも双極性障害(うつ症状のみですが)に対して、クエチアピンを保険適応として使用することができるようになるというわけです。
うつ病などの精神症状は、脳内の神経伝達物質(セロトニンやノルアドレナリンなど)の不足によって起きていると考えられますが、実際にクエチアピンがどのような経路でうつ症状に効果を発揮しているのかは明確になってはいません。
ただ脳内において各種受容体に作用し、神経伝達物質の消費を抑えることによってその総量をコントロールし、効果を発揮していると考えられています。
具体的には、セロトニン5-HT2A受容体、ドパミンD2受容体遮断作用の他、セロトニン5-HT1A、ヒスタミンH1、アドレナリンα1の各受容体に対しても作用し、脳内におけるセロトニンやドパミンなどの神経伝達物質の量を増加させます。
その中でもセロトニン5-HT2A受容体への親和性に優れているため、錐体外路症状(EPS:extra pyramidal symptom)や高プロラクチン血症などの副作用を軽減できています。
さらに、クエチアピンは代謝されることでノルクエチアピンとなり、このノルクエチアピンがセロトニン5-HT1A受容体に対してパーシャルアゴニスト(部分作動薬)として作用することでノルアドレナリンの取り込みを阻害し、抗うつ作用を発揮できるものと思われます。
ビプレッソとセロクエルとの違い
ビプレッソ | セロクエル | |
成分名 | クエチアピンフマル酸塩 | |
適応症 | 双極性障害におけるうつ症状の改善 | 統合失調症 |
剤形 | 徐放錠 | 普通錠、細粒 |
服用回数 | 1日1回 | 1日2~3回 |
食事の影響 | あり | なし |
ビプレッソとセロクエルは、ともにクエチアピンフマル酸塩を主成分としている医薬品ですが、使用方法等が異なりますので確認していきます。
まずは適応症。セロクエルでは「統合失調症」に適応があるのに対し、ビプレッソでは「双極性障害におけるうつ症状の改善」となっています。
剤型も異なっており、セロクエルは普通錠と細粒が販売されているのに対し、ビプレッソでは徐放錠のみとなります。それに伴いセロクエルは1日2回~3回の服用が必要(1日1回で処方する場合もあり)ですが、ビプレッソでは1日1回就寝前の服用で効果を発揮できるようになりました。
ただ徐放錠になったことで、吸収の際に食事の影響を受けるようになってしまいました。ビプレッソを食後に服用すると、血中濃度が2倍に上昇するとの報告がありますので注意が必要です。
薬価についてはあまり変わりはないですね。
商品名 | 規格 | 薬価 |
セロクエル細粒50% | g | 647.4 |
セロクエル25mg錠 | 錠 | 38.3 |
セロクエル100mg錠 | 錠 | 131.5 |
セロクエル200mg錠 | 錠 | 245.2 |
ビプレッソ徐放錠50mg | 錠 | 71 |
ビプレッソ徐放錠150mg | 錠 | 188.6 |
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ビプレッソの副作用
まず錐体外路症状、高プロラクチン血症。セレネース(ハロペリドール)などの第一世代の抗精神病薬よりは少ないものの、一応注意が必要です。
またビプレッソには抗ヒスタミン作用がありますので、眠気の副作用がみられる場合があります。また、α1受容体遮断作用もあり、起立性低血圧(めまい、ふらつき)が現れる可能性があります。投与初期、増量時は特に注意するようにして下さい。
血糖の上昇や脂質異常、体重増加なども報告されています。体重増加は比較的多目です。
特に高血糖については注意が必要であり、口渇、多飲・多尿、頻尿などの症状がみられる場合は直ちに病院を受診して下さい。糖尿病の方、既往歴のある方は禁忌となります。
稀ではありますが、悪性症候群にも注意が必要です。37.5℃以上の高熱が出る、発汗、手足の震え、身体のこわばり、頻脈、血圧上昇、意識障害、嚥下困難(飲み込みが悪くなる)などの症状が現れた場合も直ちに病院を受診するようにしましょう。
眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下がみられる場合があるため、セロクエル服用中は自動車の運転等危険を伴う機械の操作は避ける必要があります。
ビプレッソの相互作用
ビプレッソは様々な代謝経路を通して代謝されますが、メインはCYP3A4になります。CYP3A4を誘導(増やす)する薬剤や阻害する薬剤は併用注意となっています。
特にイトラコナゾール等のCYP3A4を阻害する作用が強い薬との併用では注意が必要であり、同系統のケトコナゾールとの併用により、ビプレッソの血中濃度が3倍以上まで上昇したという報告があります。
グレープフルーツジュースについてもビプレッソ服用中は控えるようにしましょう。
また、CYP3A4を誘導する医薬品としては、テグレトール(カルバマゼピン)やアレビアチン(フェニトイン)などがあり、これらと併用するとビプレッソの血中濃度が66%程度まで低下したという報告もあります。
それではビプレッソについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。