今回は漢方薬の麦門冬湯(バクモンドウトウ)について解説します。
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麦門冬湯の名前の由来
麦門冬湯は6種類の生薬で構成されています(下記参照)。その中の主薬である麦門冬から麦門冬湯と命名されています。
麦門冬湯の作用機序と特徴
麦門冬湯は長引く咳の症状に対して多く用いられる漢方薬で、含まれている生薬は麦門冬(バクモンドウ)、粳米(コウベイ)、半夏(ハンゲ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)、人参(ニンジン)です。
漢方薬を用いるには、適応となる証を確認することが重要になります。証とは人間の体質をはかる東洋医学の考え方で、麦門冬湯の証は体力が中等度から虚弱気味の人であり、のぼせ気味である場合です。
発熱が強い場合には逆効果になってしまうことがあるので注意が必要とされます。
添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果
痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく用法及び用量
通常、成人1日9.0gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
添付文書での適応は「痰の切れにくい咳、気管支喘息、気管支炎」となっており、その効果は末梢性の作用により発揮されています。
中枢性の鎮咳薬で効果不十分な例にも効果を発揮した例があり、間質性肺炎や百日咳にも効果を発揮したという記録も存在しています。ただし、この効果に関しては作用機序が解明されたわけではなく、現在も研究が必要な分野です。
一般的な咳に対する作用機序は、ニュートラルエンドペプチダーゼ(neutral endopeptidase:NEP、中性エンドペプチダーゼともいう)の働きを円滑にすることにより発揮されます。
NEPは咳反射の末梢神経に存在しているバニロイド受容体の活動を低下させる作用で知られており、その他にも炎症性物質の働きを抑制する効果もある為、気管支炎に対しての効果が期待できます。
また、βアドレナリン受容体に作用して気管支の拡張効果を発揮し、アレルギーを誘発するケミカルメディエータも抑制することから、気管支喘息に伴う咳にも効果を発揮し、特にアレルギー反応が高い症状に著効を示すとされています。
臨床的な有効性は十分に理解されていますが、その作用機序は一部が判明しているのみで、全体像は今もつかめていません。今後の研究の進展により、さらなる汎用性の拡大が期待できる漢方薬と考えられます。
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麦門冬湯の副作用
麦門冬湯では、副作用が明確になる調査は行われていません。そのため、その発現頻度に関するデータも存在しておらず、どのくらいの頻度で起こるのかが不明です。ただし重篤な副作用の報告もあるため、服用時にはその前駆症状に注意しなければいけません。
重大な副作用として報告されているものは、まずは甘草に由来しているものです。
低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症や、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチー、検査値異常や黄疸を引き起こしてしまう肝機能障害の発生が報告されています。
それらの可能性がある場合には、服用を中止したり、カリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。
次に、間質性肺炎の報告もあるため、呼吸困難や咳、発熱や肺音の異常などが出た場合には服薬を中止しなければいけません。適切な検査を行い、炎症を抑えるためのステロイド剤の投与などの処置が必要になります。
その他報告のある副作用ですが、発疹や蕁麻疹などの過敏症などになります。重大な副作用を除けば副作用が少なく、比較的使用しやすい漢方薬と言えるでしょう。
麦門冬湯の飲み方と注意事項
麦門冬湯はもともと液剤だったものを抽出して散剤にしたものです。ですので、服用時にはそれに即してぬるめのお湯で服用したほうが効果的だと言われています。
約60度のお湯が最も効果的であり、あまりに熱いお湯では有効成分が揮発してしまうので注意しなければいけません。
甘草を含有している漢方薬ですので、その重複に注意して服用する必要があります。漢方薬の併用などにより過量に甘草を摂取してしまうことで、前項で紹介している重大な副作用が誘発されやすくなってしまう可能性があるため、注意が必要です。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
ツムラ麦門冬湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
妊娠中の使用に関しては、添付文書上では服薬の安全性が確立されておらず、治療上の有益性が危険性を上回る場合に使用するように書かれています。
麦門冬湯は妊娠中の長引く咳などに用いられことが多い漢方薬ですので、医師の判断で用いる場合には安全性は高いと言えます。日本臨床漢方医会でも推奨されていることから、信頼性も高いと考えられます。
ただし、医師は個人の証を判断して処方していますので、自己判断での服用は避けるようにしましょう。必ず医師の指示の元服用するようにして下さい。
それでは麦門冬湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。