今回は漢方薬の潤腸湯(ジュンチョウトウ)について解説します。

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潤腸湯の名前の由来

 

潤腸湯には排便を促す作用を持つ生薬が多数配合されています。「便秘=腸内が乾燥した状態」に対して、「腸内を潤すことにより排便を促す」という薬効から潤腸湯と命名されています。

潤腸湯の作用機序と特徴

 

潤腸湯は便秘に用いられている漢方薬で、含まれている生薬は地黄(ジオウ)、当帰(トウキ)、黄芩(オウゴン)、枳実(キジツ)、杏仁(キョウニン)、厚朴(コウボク)、大黄(ダイオウ)、桃仁(トウニン)、麻子仁(マシニン)、甘草(カンゾウ)です。

 

麻子仁丸と共通している配合生薬が多数を占め、麻子仁丸から芍薬を除いて桃仁、当帰、地黄、黄芩、甘草を加えたものが潤腸湯となります。

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麻子仁丸にはない血虚の改善効果をもった潤腸湯は、名前の通り、便を潤してスムーズな排泄を促す漢方薬です。ころころとした硬い便に対してより効果的になるように配合されています。

 

東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。潤腸湯に適応がある証は中間証・血虚であり、体力が中等度で水分不足、顔色が悪いようなタイプの人に適しています。

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大黄に含まれているセンノシドAが腸内細菌によって代謝され、腸管を刺激するレインアスロンとなることによって下剤としての効果を発揮するほか、厚朴・枳実にも蠕動運動の促進効果があり、麻子仁、杏仁、桃仁によって便に水分を送り込んで柔らかくなるように整えることも排泄をスムーズに促します。

 

当帰や地黄は血を補って血流を改善させることができるため、比較的体力が低下している高齢者の便秘にも使用しやすい漢方薬です。

 

ただし、虚弱体質となってしまっている高齢者では、潤腸湯に含まれている大黄などによって腹痛や下痢を起こしてしまうことも考えられるため、より効果が穏やかな大建中湯を検討していくことになります。

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便秘の種類や使用者の体力、便秘の強度によって使用する漢方薬や使用量を調節していくことが重要なのです。

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潤腸湯の副作用

 

潤腸湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。

 

低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。

 

他にも肝機能検査値異常や黄疸、強い倦怠感、かゆみなどを引き起こしてしまう肝機能障害や呼吸困難や咳、発熱や肺音の異常などが起きる間質性肺炎の報告もあるため、そういった兆候が現れた場合には服薬を中止しなければいけません。

 

その他の副作用として、食欲不振や胃部不快感、下痢・腹痛などの消化器症状に関する報告があります。服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。

潤腸湯の飲み方と注意事項

 

潤腸湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果の減弱や悪心などの副作用が出やすくなる可能性はありますが、毎回でなければ気づいた時点で服用しても大丈夫です。

 

潤腸湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。そのため、服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。

 

あまりに熱いお湯では薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。

 

胃腸虚弱の患者や食欲不振の患者、軟便の患者などでは、症状を悪化させてしまう可能性があるため、使用は慎重に判断する必要があります。

 

大黄・甘草を含有している漢方薬であるため、それらの生薬の重複には注意しなければいけません。特に甘草では先ほどお話したように重大な副作用の報告もあるため、甘草を含んでいる漢方薬との併用はもちろん、その有効成分であるグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があります。

 

妊婦に対しては、一般的には使用されない漢方薬であり、含まれている大黄・桃仁により子宮が収縮することがある為、流早産となる可能性があります。授乳婦に対しても服用は避けるべきものであり、成分が乳汁中に分泌されてしまうため、乳児が下痢になってしまう可能性があります。

 

妊娠中・授乳中の便秘には、体内に吸収されずに作用を発揮するタイプの便秘薬(酸化マグネシウムラキソベロンなど)が存在しているため、あえて潤腸湯を選択する理由はないですね。

 

それでは潤腸湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。