今回は漢方薬の加味帰脾湯について解説します。
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加味帰脾湯の名前の由来
帰脾湯に柴胡と山梔子を追加したことに基づいて命名されています。
加味帰脾湯の作用機序と特徴
加味帰脾湯は不眠や神経症などに用いられている漢方薬です。
含まれている生薬は黄耆(オウギ)、柴胡(サイコ)、酸棗仁(サンソウニン)、白朮(ビャクジュツ)、人参(ニンジン)、茯苓(ブクリョウ)、竜眼肉(リュウガンニク)、遠志(オンジ)、山梔子(サンシシ)、大棗(タイソウ)、当帰(トウキ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、木香(モッコウ)です。
東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。加味帰脾湯が効果を発揮する証は虚証・気虚・血虚であり、虚弱体質で気力が低下しており、顔色が悪いタイプの人に向いています。
メーカーによっては白朮に代わって蒼朮を配合している例がありますが、適応となる証から考えれば、脾を補う効果のある本来の白朮を用いた漢方薬の方が効果的なのは言うまでもありません。ちなみにツムラは蒼朮、クラシエには白朮が配合されています。
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添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果
虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症
貧血、不眠症、精神不安、神経症用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ツムラ加味帰脾湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
漢方薬の科学的な作用機序はあまり解明されておらず、加味帰脾湯も例にもれず、薬理作用は判明していません。
一部の研究では、加味帰脾湯の投与によって脳内のアセチルコリン濃度が増加し、コリン代謝、モノアミン代謝が改善されたという報告があります。
アセチルコリンやモノアミンは、その濃度の濃淡によって脳内において不安障害・気分障害などを含む精神疾患を引き起こす可能性があるものと考えられています。
抗うつ薬などが標的にしている部分に対して、抗うつ薬特有の副作用を発現させずに効果を発揮する可能性がある医薬品として、今後の研究の進展が待たれる医薬品です。
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加味帰脾湯の副作用
加味帰脾湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その発現頻度に関するデータも存在しておらず、どのくらいの頻度で起こるのかが不明です。
重大な副作用として報告されているのは、甘草に由来しているものであり、その前駆症状には注意が必要です。
低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症や、低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチー、検査値異常や黄疸、強い倦怠感を引き起こしてしまう肝機能障害の発生が報告されています。
添付文書への記載はされていませんが、山梔子を含む漢方薬を長期間服用した際には、腸間膜静脈硬化症を引き起こしてしまう可能性があります。
下痢・腹痛を何度も繰り返している、または便潜血があった場合には即時に中止する必要があります。
その他の副作用として、発疹、蕁麻疹などの過敏症状、食欲不振、胃部不快感、悪心、腹痛、下痢などの消化管症状の報告があります。服用中にこれらの症状が現れた場合は、医師、薬剤師に伝えるようにして下さいね。
加味帰脾湯の飲み方と注意事項
加味帰脾湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが気づいた時点で服用しても大丈夫です。
加味帰脾湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。そのため、服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。
あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。
有効成分の重複には注意を要するものがあり、甘草を含む漢方薬の併用には注意しなければいけません。
甘草の有効成分として含有されているグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があり、その他にもループ系利尿薬・チアジド系利尿薬などの血清カリウム値の変動や血圧変動を起こす危険性があるものに関しては併用注意となっています。
妊娠中の服用に関しては、添付文書では安全性が確立していないため、有益性がある場合のみ投与となっていますが、含まれている生薬の中に胎児や母体に負の影響を及ぼすものは含まれていないため、妊娠中の不眠などに処方される可能性はあります。
医師の判断のもとで使用する際には、安全性が高いと言えるでしょう。ただし自己判断で中止や服用を決めるのではなく、必ず医師の指示を受けるようにして下さい。
それで加味帰脾湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。