ゾビラックスは単純疱疹や帯状疱疹に適応をもつ抗ウイルス剤です。

 

1985年に点滴静注剤、眼軟膏剤が承認されて以来、経口剤をはじめとする様々な剤形で世界中に販売されており、高い医療ニーズに今もなお応え続けているお薬です。

 

今回はそんなゾビラックスについて解説したいと思います。

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ゾビラックスとは?

 

それでは名前の由来からいきましょう。商品名のZovirax:ゾビラックスは、帯状疱疹意味する「Zoster」、抗ウイルス剤を意味する「Antiviral Agents」を組み合わせて命名されています。一般名はaciclovir:アシクロビルです。

 

ゾビラックスの作用を簡単に説明すると「ウイルスの増殖を抑えることで、単純疱疹、帯状疱疹の症状を改善する」になります。

 

それではまず、ゾビラックスの適応症である単純疱疹と帯状疱疹について簡単におさらいしておきたいと思います。

単純疱疹、帯状疱疹とは?

 

発症する原因ですが、それぞれ原因となるウイルスが異なります。単純疱疹では単純ヘルペスウイルス(HSV)、帯状疱疹では水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が宿主(ウイルスが寄生する生物のことでここではヒトを指します)に感染することによって発症します。

 

いずれの場合も一度感染してしまうと、宿主が生きている限りはウイルスが死滅するということはなく、宿主の細胞内に居座り続けます。そして、例えば風邪による高熱や疲れなど、抵抗力が弱まった場合に再発してしまう恐れがあります。

 

単純疱疹の症状としては、皮膚や粘膜に水ぶくれ(水疱)やただれといった病変がみられます。体のどこにでも感染する恐れがありますが、特に口唇ヘルペスや性器ヘルペスが多く、性器ヘルペスは年に何度も再発する恐れがあり非常に厄介です。

 

帯状疱疹は痛みやかゆみを伴う赤い発疹や水ぶくれが広範囲にわたってできるもので、体の片側に帯状(おびじょう)の症状がみられるのが特徴です。人によっては夜寝るのも難しいぐらい激しい痛みを伴うこともあります。

 

単純疱疹と帯状疱疹とでは治療に要する薬剤の量や服用期間が異なりますが、基本的にはどちらの症状もウイルスが増殖することで広がっていきますので、ただちに抗ウイルス剤でそのウイルスの増殖を抑える必要があります。

 

また治療が遅れると、ウイルスの増殖の進行により重症化し、症状はひどくなります。結果、水疱が改善しても神経障害による痛み(帯状疱疹後神経痛)が残る可能性も高くなってしまいます。

 

このようなことからも、早期に治療を開始する必要があるということがおわかり頂けるでしょう。

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ゾビラックスの作用機序と特徴、バルトレックスとの違い

 

それではゾビラックスの作用機序をできるだけ簡単に、わかりやすく解説したいと思います。

 

先ほどもお話しましたが、単純疱疹、帯状疱疹ともにウイルスが増殖を繰り返すことによって症状を悪化させていきますので、その『ウイルスの増殖』を止めてしまえば症状の悪化も食い止めることができるわけです。

 

その役割を果たしてくれるのが、ゾビラックスの主成分であるアシクロビルです。

 

感染細胞内に潜んでいるウイルスは、細胞内に入ってきたアシクロビルを「増殖するために必要な材料である」と勘違いして細胞内に取り込みます。その結果、アシクロビルが増殖メカニズムに誤作動を起こさせ、増殖を停止させてくれるのです。

 

都合のいいことに、ウイルスに比べてヒトの細胞の性能は非常に高く、アシクロビルはヒトの正常細胞にはほとんど影響しないという特徴があります。

 

続いてゾビラックスとバルトレックスの違いについて。バルトレックスはゾビラックスの改良版で、主成分はバラシクロビルといいます。

 

ゾビラックスの成分であるアシクロビルは非常に吸収されにくい(肝臓で分解されやすい)という性質があります(バイオアベイラビリティ10~20%)。成人で1日5回、小児で1日4回も服用する必要があるのです。これって結構大変ですよね。

・バイオアベイラビリティ:薬が体に入ってそのうちどれだけの量が実際に作用するかを%で表したもの

 

これを解消するためにバルトレックスが開発されました。バルトレックスは吸収効率が高められているため、1日2~3回の服用で済むように改良されており、アドヒアランス向上が期待できます。

アドヒアランス:患者様自身が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること

 

具体的にはゾビラックスにアミノ酸のL-バリンを結合させています。この1つの行程だけで腸管からの吸収率が大幅にアップ(バイオアベイラビリティ54.2%)しているのです。

 

吸収された後は体内の酵素によりL-バリンの部分が分解されてアシクロビルに変換されますので、感染細胞内にたどり着く頃にはゾビラックスと同様に抗ウイルス効果を発揮してくれます。

 

バルトレックスのようにそのままでは薬効を発揮せず、腸管から吸収された後に代謝されて初めて効果を発揮するプロドラッグ製剤といいます。

 

また剤形ですが、ゾビラックスには錠剤、顆粒、注射、軟膏、眼軟膏、クリームがありますが、バルトレックスは顆粒と錠剤のみとなっています。

ゾビラックスの副作用

 

主な副作用として頻度はそれほど高くありませんが、消化器症状を主体とする腹痛・嘔気・下痢などがあげられます。

 

傾眠や眠気、頭痛などの報告もありますので、運転や危険な機械の操作などを必要とする職業の方には特に注意が必要です。

 

また、中性脂肪の上昇や、肝・腎機能異常もみられることがあります。

 

稀なものとしては意識障害や幻覚などを伴う精神神経症状、肝機能障害など重大な副作用の報告もありますので、黄疸や急な発熱、倦怠感など、通常では考えにくい異常が見られた場合はただちに受診するようにして下さい。

ゾビラックスの注意事項

 

ゾビラックスは主に腎臓から排泄されるタイプの薬剤です。そのため、腎機能障害をお持ちの方が服用される場合は、腎機能の悪化や精神神経症状の発症リスクが高まるおそれがありますので注意が必要です。

 

投与する際はクレアチニンクリアランスの値に応じて1回量を減じたり、投与間隔を延長して対応します。

 

また、比較的若い方でも発症のおそれがある単純疱疹や帯状疱疹ですが、やはり高齢になるほど抵抗力も弱まり、その発症リスクは高まります。

 

一般的に高齢の方は腎機能をはじめとする諸機能の低下が考えられますので、特に慎重に服用していただく必要があります。

 

それではゾビラックスについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。