今回は後発品の発売も迫っている抗HBV薬のバラクルードについて解説します。

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バラクルードとは?

 

それではまず名前の由来からいきましょう。

 

バラクルードBaracludeと表記されますが、これはB型肝炎の“B”と、作用機序から「~を閉じ込める、~を邪魔する」の意味を持つ“occlude”、この2つを組み合わせて命名されています。一般名はエンテカビルになります。

 

バラクルードの作用を簡単に説明すると「B型肝炎ウイルスが増殖する時に必要な酵素の働きを邪魔することで、ウイルスの増殖を抑制する」になります。

 

B型肝炎について詳しく知りたい方はこちらの記事をぜひご覧になって下さいね。

関連記事B型肝炎のまとめ~潜伏期間や症状、感染経路、予防など

バラクルード の作用機序と特徴

 

バラクルードは、B型肝炎ウイルスに対して特異的に作用する抗ウイルス薬で、同効薬のゼフィックス(一般名:ラミブジン)に耐性を獲得したB型肝炎ウイルスにも効果を発揮できる抗ウイルス薬です。

 

バラクルードはそのままの形では効果を発揮できないプロドラッグと言われるもので、体内に取り込まれてリン酸化されることによって、抗ウイルス効果を発揮する活性体、エンテカビル三リン酸(ETV-TP)へと変化します。

 

バラクルードの作用を理解するには、ウイルスが人間の体内で増殖するメカニズムを理解しなければいけませんので、ここで簡単に説明していきましょう。

 

通常、生物は細胞によって構成されており、細胞内で遺伝子情報であるDNAデータを読み込んで、新たな細胞を複製しています。しかしながらウイルスにはこの細胞がなく、DNAやRNAなど、遺伝子情報のみで存在している状態です。

 

つまり、ウイルスは自分自身で増殖するための細胞を持っていないために、他の生物の細胞にある増殖システムを奪い取って、自分の遺伝子情報を複製させるしかありません。

 

細胞に感染したウイルスは、自分のDNAをその感染先細胞に放出して紛れ込ませ、仲間となるウイルスの複製を行うのです。この時に、ウイルスのDNAを読み込ませるための酵素が、DNAポリメラーゼになります。

 

今回のバラクルードは、このDNAポリメラーゼに作用する薬です。バラクルードの活性体であるETV-TPは、B型肝炎ウイルスのDNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの増殖を抑制します。

 

そしてこの時、人間の持つDNAポリメラーゼを阻害することなく、B型肝炎ウイルスのDNAポリメラーゼのみを阻害してくれるのです。

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バラクルードの副作用

 

バラクルードの国内での検査の結果、主に発現している副作用は、頭痛、下痢、鼻咽頭炎であり、臨床検査値の異常は15%~25%の患者に発現しました。

 

ラミブジンによる前治療の有無で副作用の発現率が異なっており、ラミブジン不応の患者では副作用の発現率が高くなる傾向にあります。

 

重大な副作用としては報告されているものは、複数存在します。まずは肝機能障害ですが、これは肝機能検査値の上昇として現れます。

 

B型肝炎の治療薬ですので、肝機能検査値はもとから悪い値としてスタートしているため、鑑別が難しいところですが、肝機能検査値が改善しない場合など、効果が期待できない場合には服用を中止する必要があります。

 

次に、投与終了後の肝炎悪化も重大な副作用として報告されており、これは警告としても記載されている事項です。6~12%の患者に報告されており、服用終了後から急激な肝炎の悪化が報告されています。

 

この予防のため、服用終了後も数か月は十分な検査と観察が必要となります。

 

死亡例がある副作用としては、乳酸アシドーシスが挙げられています。悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状に加え、過呼吸、筋肉痛、倦怠感がある場合には、速やかに服薬を中止しなければいけません。

 

他にアナフィラキシー様症状を呈した例も存在します。咳や呼吸困難などの呼吸器症状、蕁麻疹やかゆみなどの皮膚症状、目や唇の腫れや血圧の低下などが起きた場合には、すぐに適切な処置が必要になります。

バラクルードの注意事項

 

バラクルードは腎排泄型の医薬品ですので、腎機能が低下している患者では血中濃度が上昇する危険性があります。クレアチニンクリアランス(腎機能を評価する指標の1つ)によって投与間隔を延長して対応します。

 

また、腎排泄型の医薬品や、腎機能を低下させる医薬品を併用した場合には理論上血中濃度が上昇する可能性がありますが、現在のところそういった相互作用は報告されていません。

 

服用時間にも注意が必要です。バラクルードは食事の影響を受けてしまい、吸収率が低下するため、必ず空腹時に服用しなければいけません。食事の前後2時間以上あける必要があります。

 

がん原性や変異原性、生殖毒性は動物実験において危険性のあるレベルではありませんでしたが、胎児毒性は存在しているため、妊娠中の服用は避けるべき医薬品です。バラクルード服用中は避妊するのが望ましいでしょう。

 

授乳婦においても、母乳中に移行してしまう可能性があるため、服用中の授乳は中止するべきだと考えられます。もちろんこれらは一般的な考え方であり、主治医と相談の上、その指示に従うようにして下さいね。

 

それではバラクルードについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。