今回は漢方薬の抑肝散(ヨクカンサン)についてお話していきます。

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抑肝散の名前の由来は?

 

肝臓の経路である「肝経」の運動失調により生じる発熱、興奮、ひきつけなどの症状を抑制するという効能に由来して抑肝散と命名されています。

抑肝散の作用機序と特徴

 

抑肝散は認知症にも有効であると言われている漢方薬であり、一般的には虚弱な体質で神経が昂る人に対して効果的な漢方薬です。

 

含まれている生薬は蒼朮(ソウジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、川芎(センキュウ)、釣藤鈎(チョウトウコウ)、当帰(トウキ)、柴胡(サイコ)、甘草(カンゾウ)です。一部の漢方薬では、蒼朮の代わりにを白朮(ビャクジュツ)使用している場合がありますが、抑肝散の効果に大きな違いはありません。

 

古代中国で用いられていた時代では、子供向けの漢方薬として使用されていました。現代になり、その効果に対して大規模な試験も実施され、認知機能の改善に効果があることが判明し、認知症患者にも多く使用されるようになりました。

 

その効果を期待して、証を気にせずに処方されている例も多くありますが、本来であれば虚証の人に向けて作られた漢方薬です。

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抑肝散の添付文書には以下のように記載されています。

効能又は効果

虚弱な体質で神経がたかぶるものの次の諸症:神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症

用法及び用量

通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

ツムラ抑肝散エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用

 

抑肝散の主な作用は抗不安作用、攻撃性抑制作用、睡眠障害改善作用の3つ。

 

抑肝散がこれらの効果を発揮するのは、グルタミン酸への作用が要因となっています。認知症の患者には神経細胞の脱落がみられ、その原因の一つとしてグルタミン酸が関与していると考えられています。

 

グルタミン酸が多くなると神経に傷害を起こしてしまうため、過度に上昇しないように抑肝散が調節する作用を持っているのです。

 

さらに、グルタミン酸が結合する受容体に対しても保護するように働くことから、二つの効果を持ってグルタミン酸に影響を与えています。グルタミン酸への作用は、抑肝散の中でも特に甘草によって発揮されているとされています。

 

さらに、抑肝散にはセロトニンへの作用も認められています。アルツハイマー型認知症の患者では、脳内のセロトニン濃度が関係することで攻撃性の上昇が起きていると言われており、抑肝散はセロトニン受容体を刺激することで攻撃性を抑制する働きを発揮しています。

 

この作用は抑肝散に含まれている釣藤鈎によって発揮されているという研究結果が出ています。

・グルタミン酸:自然界にも多く存在しているが、人の体内では興奮系神経伝達物質の一つとして働いている。過度に存在すると神経毒として機能する。

・セロトニン:脳内では神経伝達物質として働いており、睡眠や体温の調節のほか、感情の制御なども担っている。

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抑肝散の副作用

 

漢方薬の副作用は、ほぼ含まれている生薬によって決まります。抑肝散の副作用は多くは報告されていませんが、偽アルドステロン症やミオパチー、肝機能障害の報告があるので注意しましょう。

 

これらの副作用により、血圧の上昇やむくみ、脱力感などを感じてしまう場合があります。また薬剤性間質性肺炎についての報告があり、その兆候として呼吸困難、発熱、異常な呼吸音などがあります。

 

これらの症状が現れた場合には速やかに服用を中止し、処方医の指示を仰ぎましょう。

 

その他の副作用として、発疹などの過敏症状、食欲不振、胃部不快感、悪心などの消化器症状、傾眠や低カリウム血症、浮腫、血圧上昇、倦怠感などが報告されています。

抑肝散の飲み方と注意事項

 

抑肝散は、最初から粉の形状の薬です。そのため、漢方薬でよく言われているお湯に溶かして服用するということをする必要がありません。

 

一般的には妊婦や授乳婦ではあまり使用経験がないため、使用は避けることとなっています。必要であれば医師の判断によって処方されることもありますので、まずは症状と状態を医師にきちんと伝えることが大切です。

 

小児に関しての使用経験がないと添付文書には記載されていますが、抑肝散は小児に向けた漢方薬です。きちんと証を理解している医師のもとで使用するのなら問題はないでしょう。大人に比べて少量での服用となる点のみ注意してください。

 

様々な生薬が含まれているため、それらに関する注意点があります。抑肝散を服薬している時に他の漢方薬を使用した場合、含まれている生薬の量が多くなりすぎる場合があります。

 

そうなってしまうと副作用の危険性が増しますので、注意して下さいね。自己判断での併用はせず、医師や薬剤師の判断に従うことが大切です。

 

それでは抑肝散については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。