今回は骨粗鬆症治療薬でヒト副甲状腺ホルモン(ヒトPTH)製剤の「テリボン、フォルテオ」についてお話していきます。

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テリボン・フォルテオとは?

 

それでは名前の由来からいきましょう。まずはテリボンから。一般名のテリパラチド(Teriparatide)と骨(Bone)を組み合わせ、TERIBONE:テリボンと命名されました。

 

また、骨を新しく生まれ変わらせるという意味からリボーン(Re- + Bone)という意味も含んでいます。一方のフォルテオは特に名前の由来はないようです。

 

テリボン・フォルテオの作用機序を簡単にお話すると「骨芽細胞を活性化し、骨形成を促すことで骨を丈夫にするとなります。それではまず骨粗鬆症についてお話していきましょう。

骨粗鬆症とは?

 

骨粗鬆症は”骨がもろくなることで骨折しやすくなる病気”のことをいいます。

 

私達の体は毎日古くなった骨を壊し、壊した部分を新しく作った骨で修復しています。これにより健康で丈夫な骨を維持することができるのです。これを骨の新陳代謝、または骨代謝と言います。

 

古くなった骨が壊されることを骨吸収といいます。そしてこれを行っているのが破骨細胞です。逆に骨が新しく作られることを骨形成といい、これを行っているのが骨芽細胞になります。

 

骨吸収と骨形成のバランスが崩れる、つまり骨吸収が骨形成を上回ってしまうと、壊した骨の分を補いきれなくなります。この状態が続くと骨量が減少してしまい、スカスカのもろい骨になってしまうのです。

 

骨粗鬆症は高齢者、そして女性に多く見られます。高齢者は個人差はありますが、一般的に食事量が低下する上、腸管からのビタミンやカルシウムなどの吸収が低下する傾向にあります。

 

また運動は骨に適度な負荷がかかり、骨芽細胞を活性化させる物質の分泌を促すのですが、高齢者は運動量が低下するため、骨粗鬆症になりやすいと言えます。運動量の低下は筋力の低下にも繋がるため転倒による骨折のリスクも上がります。

 

女性については閉経後に卵巣の機能が低下すると、女性ホルモンであるエストロゲンが減少するためです。

 

エストロゲンは破骨細胞を活性化する物質、インターロイキン1、インターロイキン6(IL-1、IL-6)や腫瘍壊死因子(TNF-α)などが作られるのを抑える作用を持っています。

 

エストロゲンが減少することで破骨細胞が活性化してしまい、骨粗鬆症になりやすくなる、というわけですね。

副甲状腺ホルモン(PTH)について

 

血液中のカルシウム濃度が低くなると分泌されるのが副甲状腺ホルモン(PTH)です。副甲状腺ホルモンはカルシウムの貯蔵庫である骨からカルシウムを抜き出す、つまり骨吸収を促すことで血液中のカルシウム濃度を高めます。

 

また副甲状腺ホルモンはビタミンDを活性化する作用を持ち、これにより腸管からのカルシウムの吸収や腎尿細管におけるカルシウムの再吸収を促すことにつながります。

テリボン・フォルテオの作用機序と特徴

 

テリボン・フォルテオはヒト副甲状腺ホルモンのN端側の1-34ペプチド断片です。といっても難しいのでヒト副甲状腺ホルモンの一部を化学合成して作った薬がテリボン・フォルテオだと思って頂ければと思います。

 

「副甲状腺ホルモンは骨吸収を促進する。だったらテリボン・フォルテオを投与するとかえって骨がもろくなるのでは?」と思われる方もいらっしゃるかと思います。

 

仰るとおりです。そこで編み出されたのが、一定の時間をあけて投与するという”間歇(欠)的投与”です。

 

冒頭で私達の体は毎日古くなった骨を壊し(骨吸収)、壊した部分を新しく作った骨で修復(骨形成)しており、これを骨代謝というとお話しましたね。

 

骨吸収と骨形成はセットです。低用量のテリボン・フォルテオを一定間隔で投与することで骨吸収を”若干”促すと、私達の体は「このままでは骨がもろくなる!骨形成を行わなければ!」となり、薬により意図的に生じた骨吸収に対応して骨形成を行います。

 

重要なのは”低用量を一定間隔に投与すること”です。これにより骨形成が骨吸収を上回ることができ、骨が丈夫になるのです。

 

これまでの骨粗鬆症治療薬は骨吸収を抑制するものでした。テリボン・フォルテオは骨吸収を”少しだけ”促進することで結果的に骨形成を促進するという薬になります。

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テリボンとフォルテオの違い

 

それでは両者の違いについて見て行きましょう。

 

■フォルテオとテリボンの比較表

商品名 フォルテオ皮下注キット600μg テリボン皮下注用56.5μg
一般名 テリパラチド
効能効果 骨折の危険性の高い骨粗鬆症
用法用量 20μgを1日1回皮下注射 ※自己注射 56.5μgを1週間に1回皮下注射 ※医療機関にて注射
投与期限 24ヶ月まで 72週まで24ヶ月まで
保存方法 冷蔵庫にて凍結を避け、2~8℃で遮光保存 遮光・室温保存
薬価 43334円/筒 ※1筒28日分 10837円/瓶 43348円/4週

成分と効能効果は同じです。異なるのはまず投与方法。フォルテオはインスリン注射のように1日1回患者様自身が自宅で注射するのに対し、テリボンは1週間に1回医療機関で注射します。

 

毎日少ない量を投与するか、ある程度まとまった量を1週間に1回投与するかの違いです。

 

続いて投与期間。テリパラチド製剤は動物実験(ラット)において骨肉腫の発現がみられており、ヒトでもその可能性が否定出来ないため、フォルテオで2年、テリボンで72週(1年半)と制限されています。

 

平成29年5月に添付文書の改定があり、テリボンもフォルテオと同じ24ヵ月までの使用が可能となりました。これは24ヶ月投与時の有効性と安全性が72週間投与時と同等であったことこに基づいています。

 

いずれの製剤も以下のような方は骨肉腫発生のリスクが高いため禁忌です。

・骨ページェット病
・原因不明のアルカリフォスファターゼ高値を示す患者
・小児等及び若年者で骨端線が閉じていない患者
・過去に骨への影響が考えられる放射線治療を受けた患者

保存方法はいずれも遮光が必要ですが、フォルテオは使用前、使用中ともに冷蔵庫で保存、テリボンは室温保存となります。フォルテオは使用開始後28日まで安定性が保証されています。

 

そして薬価。フォルテオは1筒43334円。これは28日分です。テリボンは1瓶10837円。4週で43348円です。これについてはほぼ同じと考えていいでしょう。※薬価は平成28年度のもの

テリボン・フォルテオの副作用

 

国内の臨床試験における副作用発現率をみていきます。

フォルテオ

血中尿酸上昇(3.6%)、頭痛(2.8%)、悪心(2.8%)、ALP上昇(2.0%)、筋痙縮(1.2%)、高尿酸血症(1.2%)、食欲不振(1.2%)、血中尿素上昇(1.2%)

テリボン

悪心(18.6%)、嘔吐(8.6%)、頭痛(7.6%)、けん怠感(6.2%)、腹部不快感(4.1%)、めまい(4.1%)

 

テリボンの方が頻度が高くなっています。特に投与後に血圧低下、めまい、立ちくらみ、動悸などの症状が出現する可能性があるため注意が必要です。これは1回に投与する量が多いことに起因すると思われます。

 

また高カルシウム血症にも注意が必要です。投与後にカルシウムの上昇が一過性にみられますが、それ以降も持続的に続く場合があります。そのため高カルシウム血症の患者様は禁忌となります。

 

高カルシウム血症の初期症状として吐き気や口の渇き、イライラ感、体がだるくなる、などがあります。このような症状が現れた場合は医療機関を受診するようにして下さい。

テリボン・フォルテオの妊婦、授乳婦に対する影響

 

動物実験において胎児の死亡がみられています。ヒト乳汁中への移行については不明となっており妊婦、授乳婦の方への投与は控えます。

 

それではテリボン・フォルテオについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。