今回は漢方薬の真武湯について解説します。
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真武湯の名前の由来
真武湯は元々玄武湯と言われていました。これは玄武が北方を守護する中国の伝説上の黒い亀であり、主薬である附子の色が黒いことに由来しています。
玄武湯から真武湯に変わった理由としては、亡くなった中国宋代の皇帝の諱(いみな)を避けるためとされています。
真武湯の作用機序と特徴
真武湯はさまざまな効果を持つ漢方薬であり、風邪に対する効果もあれば、消化不良・下痢やむくみ、神経痛やめまいなどにも効果を発揮します。
含まれている生薬は茯苓(ブクリョウ)、芍薬(シャクヤク)、白朮(ビャクジュツ)、生姜(ショウキョウ)、附子末(ブシ末)です。
メーカーによっては白朮に代わって蒼朮(ソウジュツ)を配合している例がありますが、本来の白朮を用いた漢方薬の方が効果的であると言えるでしょう。ちなみにツムラは蒼朮、コタローは白朮が配合されています。
関連記事:白朮と蒼朮の違い
東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。真武湯に適している証は虚証・寒証であり、華奢で体力が低下しており、冷え性で顔色が悪い人に向いている漢方薬です。
添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果
新陳代謝の沈衰しているものの次の諸症:
胃腸疾患、胃腸虚弱症、慢性腸炎、消化不良、胃アトニー症、胃下垂症、ネフローゼ、腹膜炎、脳溢血、脊髄疾患による運動ならびに知覚麻痺、神経衰弱、高血圧症、心臓弁膜症、心不全で心悸亢進、半身不随、リウマチ、老人性そう痒症用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ツムラ真武湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
真武湯では作用機序が明確になる調査は行われていませんので、具体的にどのような作用機序によってこのような多種多様な効果を発揮しているのかは不明です。
「真武湯が効果を発揮するのは、附子末による効果である」と謳っている例が多くありますが、実際は附子末の含有量はそれほど多くなく、体内の水分をコントロールすることこそが真武湯の効果をもたらしていると考えられます。
含まれている生薬である茯苓が利水効果を発揮し、胃内に停滞してしまった水分を除去することによって効果が発揮されます。
生姜、芍薬、白朮(蒼朮)の配合理由は以下になります。
生姜:胃からの水分排泄によって障害を発生させないため
芍薬:小腸の働きを改善させて痛みや震えを改善するため
白朮(蒼朮):茯苓では十分に除去できない肺などの水分除去のため
また、少量の附子を配合することによって、交感神経の活性化によって鎮痛作用を発揮させ、さらに末梢血管が拡張されることで冷えの改善効果や心機能の改善効果が期待できるのです。
ここで、適応となっている症例への効果を考えてみましょう。真武湯はさまざまな使われ方をしていますが、主な効果は体内の水分を調節して胃内の状態を改善させるというものです。
胃腸の問題や下痢などには効果を発揮しやすい漢方薬であり、附子の含有量から考えれば心臓や腎臓への効果は穏やかなものと考えられます。
また、水分を調節する効果を持つことから、内耳の水分貯留が原因のめまいやむくみへの使用、附子・芍薬によって神経伝達の改善と鎮痛が得られるために、神経痛への使用もあり得るものです。
そして、体内を温める効果がある生薬が配合されていることから、虚証の患者で風邪を引いてしまった場合に効果的だったという例も存在します。葛根湯や麻黄湯が使用できない証である、体力の低下した老人の風邪向けの漢方薬という位置づけです。
下痢などを呈している状態であれば、特に真武湯の治療効果が期待できるでしょう。ただし、添付文書での適応となっているものではありませんので、使用する患者は慎重に判断する必要があります。
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真武湯の副作用
真武湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。ただし、重大な副作用の報告はない医薬品であるため、比較的安全に使用できるものと言えるでしょう。
報告されている副作用は発疹、発赤、掻痒などの過敏症状、悪心などの消化器症状、心悸亢進やのぼせの報告があります。この中でも、過敏症状が現れた場合には服用の中止が必要となりますので、注意しておきましょう。
真武湯の飲み方と注意事項
真武湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。
そのため、服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。
また、附子末が含まれている漢方薬であるため、過剰に摂取した場合には心悸亢進などの副作用が発現しやすくなってしまいます。漢方薬を併用する際には、その重複に十分注意しましょう。
真武湯は妊婦への投与はあまり望ましくない漢方薬です。妊婦が服用した場合、含まれている附子末による副作用が発現しやすくなるという例があるため、できる限り服用は控えるものとされています。
ただし、冷えが強い症例の場合には附子末を服用させて改善し、不具合もなかったとされているため、医師の判断に従って治療を行うことは問題のないものでしょう。
それでは真武湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。