今回は漢方薬の四君子湯(しくんしとう)について解説します。
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四君子湯の名前の由来は?
四君子湯の原方は人参、朮、茯苓、甘草の4種類の生薬から構成されており、中国古代に梅・蘭・竹・菊を並べて「四君子」と総称したことに由来します。
四君子湯の成分、作用機序、特徴
四君子湯は慢性胃炎や胃もたれ、嘔吐・下痢に適応を持つ漢方薬で、含まれている生薬は蒼朮(ソウジュツ)もしくは白朮(ビャクジュツ)、人参(ニンジン)、茯苓(ブクリョウ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ)です。
ツムラの製品では下記の組成となっています。
- 日局ソウジュツ 4.0g
- 日局ニンジン 4.0g
- 日局ブクリョウ 4.0g
- 日局カンゾウ 1.0g
- 日局ショウキョウ 1.0g
- 日局タイソウ 1.0g
蒼朮でも白朮でも同様の効果が期待できますが、より虚証が強い場合には白朮が効果的となり、そうでなければ蒼朮が効果的となるため、証に応じて使い分けすることが望ましいでしょう。
東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。
関連記事:漢方薬の処方の基本~証、陰陽、虚実、気血水とは?
四君子湯に適応のある証は虚証、寒証、水分停滞であり、かなりの虚弱体質で冷え性があり、むくみやすいタイプの人に向いている漢方薬です。
漢方薬の科学的な作用機序は解明されていないものが多く、四君子湯も例外ではありません。そのため、含まれている生薬からその効能効果を考察していく必要があります。
冒頭でお話しましたが、四君子湯の名前の由来となっている4つの君子(良薬の意)とは、蒼朮(白朮)、人参、茯苓、甘草を指しており、体力を補って体内の水分をコントロールすることで効果を発揮するというのが主な作用です。
生姜・大棗は、これら主薬の効果をバランスよくコントロールして副作用を抑制する目的で加えられています。
含まれている生薬はすべて体力を補う効力を持ち、強力な効果があるものではないため、体力が落ちている状態でも問題なく使用できます。
四君子湯の効能効果・用法用量
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四君子湯と六君子湯の違いと使い分け
胃もたれや胃腸障害・嘔吐に対して用いられる漢方薬では、六君子湯も同様の使われ方をしています。
どちらも虚証の症状に用いられている漢方薬ですが、六君子湯には半夏・陳皮が配合されており、これらの生薬は下痢・悪心を誘発する可能性もあります。
そのため、より虚証の状態が強く、下痢が続いているような状態にある患者では、四君子湯の方が効果的だと言えるでしょう。
下痢が続いている状態と言えば、下痢型の過敏性腸症候群でも同様の状態を呈する場合があります。
過敏性腸症候群では体力が落ちやすく、体重も落ちて華奢になりやすく、虚証に傾くことが多いため、四君子湯は最適な漢方薬のひとつと言えるのです。
特に女性の場合には、加味逍遥散と合わせて用いることにより、良好な効果を得ることができるという報告があります。
四君子湯の副作用
四君子湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。
低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。
それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。
その他の副作用として、発疹や蕁麻疹などの過敏症状が報告されています。服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。
四君子湯の飲み方と注意事項
四君子湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが、気づいた時点で服用しても構いません。
服用に当たっては、約60℃のぬるま湯で溶かして服用する方が効果的だと言われています。あまりに熱いお湯では薬効成分が揮発する可能性があるため、注意してください。
有効成分の重複には注意を要するものがあり、甘草を含む漢方薬の併用には注意しなければいけません。
前述している甘草による副作用が発現してしまう可能性があるため、甘草を含有している漢方薬はもちろん、甘草の有効成分として含有されているグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があり、併用注意となっています。
妊娠中の使用に関しては、添付文書では有益性が危険性を上回る場合のみという記載となっています。
ただし、古くから妊娠中の貧血(胃腸状態の悪化による鉄分吸収低下が原因のもの)の改善に対して使用された実績がある漢方薬です。医師の指示のもとで使用する分には、安全性が高いものだと言えるでしょう。
それでは四君子湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。
出典:
ツムラ四君子湯:添付文書
ツムラ四君子湯:インタビューフォーム
廣川書店「医療における漢方・生薬学」
日本臨床漢方医会:妊娠合併症の漢方治療