今回は漢方薬の清肺湯(セイハイトウ)について解説していきます。
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清肺湯の名前の由来
名前の由来ですが、肺の熱を清ます(呼吸器と気道の炎症の改善)作用があるということで、下線部を組み合わせて清肺湯と命名されています。
清肺湯の作用機序と特徴
清肺湯は咳に対して使用されている漢方薬で、含まれている生薬は当帰(トウキ)、麦門冬(バクモンドウ)、茯苓(ブクリョウ)、黄芩(オウゴン)、桔梗(キキョウ)、杏仁(キョウニン)、山梔子(サンシシ)、桑白皮(ソウハクヒ)、大棗(タイソウ)、陳皮(チンピ)、天門冬(テンモンドウ)、貝母(バイモ)、甘草(カンゾウ)、五味子(ゴミシ)、生姜(ショウキョウ)、竹筎(チクジョ)です。結構多いですね。
漢方薬の適切な使用は、東洋医学の考え方で人体の状態を現す「証」により判断されます。清肺湯の適応となる証は虚証であり、体力が低下していて痰がからみ、咳が続いている人に効果的な漢方薬です。
添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果
痰の多く出る咳用法及び用量
通常、成人1日9.0gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ツムラ清肺湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
漢方薬の作用機序は解明されていない面が多いものですが、清肺湯の作用機序は近年の研究によりある程度解明されています。添付文書上の作用機序は、去痰作用とケミカルメディエーターの遊離抑制作用、抗炎症作用です。
咳や痰の原因になるのは、気管支に侵入したほこりや細菌などの異物です。通常の状態であれば、それらの異物は気管支の表面を覆っている気道液によってからめとられ、気管支内を覆っている線毛により痰や咳となって体外に排出されます。
この時、気道液の分泌が不十分であると痰の粘りが強くなってしまい、のどにからまるように感じてしまいます。
咳は体外に異物を排出する目的によって起こりもの。ですがこれも過度に続いてしまうと炎症反応を引き起こしてしまい、線毛が抜け落ちるなどのマイナスの効果が生じてしまうのです。
清肺湯は気道液の分泌をスムーズに改善することで、痰の粘りを整え、線毛の抜け落ちを抑制して気管支が保護される状態を作り出します。
また、線毛の動きを活発にすることで、侵入した異物の排泄が滞りなく行われるようにする効果も持っており、抗炎症効果によってすでに抜け落ちてしまった線毛の回復を促す効果も知られています。
タバコなどの煙に含まれている有害物質は、肺や気管支の細胞にダメージを蓄積させていき、線毛の働きを低下させることが知られています。清肺湯では、タバコによって引き起こされた線毛の活動低下も改善する効果がある為、一般的な去痰薬などよりもタバコが原因の痰や咳に効果的だと考えられています。
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清肺湯の副作用
清肺湯では副作用が明確になる調査は行われていません。そのため、その発現頻度に関するデータも存在しておらず、どのくらいの頻度で起こるのかが不明です。重篤な副作用の報告もあるため、服用時にはその前駆症状に注意しなければいけません。
重大な副作用として報告されているものは、まずは甘草に由来しているものです。
低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症や、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチー、検査値異常や黄疸を引き起こしてしまう肝機能障害の発生が報告されています。
それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。
次に、間質性肺炎の報告もあるため、呼吸困難や咳、発熱や肺音の異常などが出た場合には服薬を中止しなければいけません。適切な検査を行い、炎症を抑えるためのステロイド剤の投与などの処置が必要になります。
その他の副作用として報告されているものには、食欲不振や胃部不快感、悪心、下痢等の消化器症状があります。
清肺湯の飲み方と注意事項
清肺湯はもともと液剤だったものを抽出して散剤にしたものです。ですので、服用時にはそれに即してぬるめのお湯で服用したほうが効果的だと言われています。約60度のお湯が最も効果的であり、あまりに熱いお湯では有効成分が揮発してしまうので注意しなければいけません。
甘草を含有している漢方薬ですので、その重複に注意して服用する必要があります。漢方薬の併用などにより過量に甘草を摂取してしまうことで、前項で紹介している重大な副作用が誘発されやすくなってしまう可能性があるため、注意が必要です。
妊婦、産婦、授乳婦等への投与
妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
ツムラ清肺湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
妊娠中の使用に関しては、添付文書上では服薬の安全性が確立されておらず、治療上の有益性が危険性を上回る場合に使用するように書かれています。
ただし、含まれている生薬である五味子が実証向けの生薬であるため、虚証になっている妊婦の方にはあまりおすすめできません。もちろん処方されるケースはゼロではありませんが、他の医薬品を選択することが一般的です。
それでは清肺湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。