今回は漢方薬の柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)について解説します。
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柴胡桂枝湯の名前の由来
配合されている9種類の生薬(次項参照)ですが、これは小柴胡湯(7)と桂枝湯(5)をそのまま組み合わせたものになっています。ここから柴胡桂枝湯と命名されています。
柴胡桂枝湯の作用機序と特徴
柴胡桂枝湯は風邪や胃腸炎、膵炎に対して良く用いられている漢方薬であり、含まれている生薬は柴胡(サイコ)、 半夏(ハンゲ)、 黄芩(オウゴン)、甘草(カンゾウ)、 桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、 大棗(タイソウ)、 人参(ニンジン)、生姜(ショウキョウ)になります。
東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。
柴胡桂枝湯に適応のある証は、中間証~虚証、熱証、気滞であり、体力が低下気味で熱っぽく、気持ちがふさいで胸部・腹部が苦しい状態の人に向いています。
添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果
発熱汗出て、悪寒し、身体痛み、頭痛、はきけのあるものの次の諸症
感冒・流感・肺炎・肺結核などの熱性疾患、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胆のう炎・胆石・肝機能障害・膵臓炎などの心下部緊張疼痛用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ツムラ柴胡桂枝湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
柴胡桂枝湯には複数の効果が確認されています。まずは風邪に対する効果からいきましょう。
柴胡・黄芩・桂皮・生姜には熱を発散させて炎症を鎮める効果があり、長引く熱や悪寒、頭痛などに効果を発揮します。また、人参・大棗には体力を補充して抵抗力を高める効果があるため、これらが複合的に風邪に対して効果を発揮していきます。
次に胃腸炎や膵炎など、内臓に起きている炎症を鎮める効果です。
半夏・生姜は吐き気を抑えて過度の蠕動運動を抑制し、腹痛や悪心を予防し、黄芩は抗菌効果、利胆作用を持つため内臓の機能を賦活する効果が期待できます。また、芍薬や甘草などには抗炎症・鎮痛効果が確認されています。
他にも自律神経を調節し、イライラや塞いだ気を循環させることもできるため、不安感やイライラ感などのストレス症状も緩和するとされています。
免疫機能を調節し、賦活化することも併せて効果を発揮し、風邪などへの効果を発揮しているとされていますが、これ以上の詳しい科学的な検証はされていないのが現状です。
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柴胡桂枝湯の副作用
柴胡桂枝湯では使用している患者の約0.8%に副作用の報告がありますが、発生頻度が不明な副作用も存在します。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。
低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。
また、肝機能検査値異常や黄疸、強い倦怠感、かゆみなどを引き起こしてしまう肝機能障害や呼吸困難や咳、発熱や肺音の異常などが起きる間質性肺炎の報告もあります。
その他の副作用として、消化不良や下痢などの消化器症状、頻尿、残尿感などの膀胱炎のような症状、発疹や蕁麻疹などの過敏症状の報告があります。服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。
柴胡桂枝湯の飲み方と注意事項
柴胡桂枝湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが気づいた時点で服用しても大丈夫です。
柴胡桂枝湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。そのため、服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。
あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。
甘草を有効成分として含んでいるため、甘草を含んでいる漢方薬との併用はもちろん、その有効成分であるグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があります。
妊娠中の使用に関しては有益性がある場合にのみ使用することとなっています。これは含有している生薬の半夏が、妊婦には慎重な投与が必要とされているからです。
ただ証によっては使用を検討することもあり、医師の判断において服薬する際には問題はないと思われます。自己判断で使用するのは控えましょう。
それでは柴胡桂枝湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。