今回は漢方薬の二朮湯について解説します。

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二朮湯の名前の由来

 

配合された12種類の生薬(次項参照)のうち、主薬である蒼朮と白朮、2種の朮が配合されていることから二朮湯と命名されています。

二朮湯の作用機序と特徴

 

二朮湯は五十肩などの痛みに対して用いられている漢方薬であり、含まれている生薬は半夏(ハンゲ)、蒼朮(ソウジュツ)、威霊仙(イレイセン)、黄芩(オウゴン)、香附子(コウブシ)、陳皮(チンピ)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、天南星(テンナンショウ)、和羌活(ワキョウカツ)です。

 

東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。二朮湯の適応となる証はやや虚証で、水滞の患者です。体力が低下気味でむくみやすい人に適しています。

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添付文書には以下のように記載されています。

効能又は効果
五十肩

用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

ツムラ二朮湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用

 

二朮湯の適応症が五十肩ということで、肩こりに適応がないことには理由があります。

 

肩こりの症状は筋肉の疲労、硬質化によって血流循環が悪くなり、諸症状を引き起こしている状態ですが、五十肩では関節部分に炎症を起こしてしまっているために痛みが生じ、可動域の低下が起きています。

 

つまり、肩こりに関しては筋肉を軟化させ、血流循環を促すものが効果的であるのに対し、五十肩ではより鎮痛・抗炎症効果があるものが必要になるわけです。

 

四十肩も同じように、関節周囲の炎症が原因となっているものですので、適応には載っていませんが同様に効果は期待できます。四十肩は五十肩と同じく、肩関節周囲炎と呼ばれる疾病に分類されています。

 

二朮湯が五十肩に使用されるのは、体内の水分の循環を改善して乾燥させ、同時に鎮痛・抗炎症作用をもった生薬が多数配合されているからです。

 

それぞれの生薬の効果はある程度解明されていますが、それらが配合されたことによる科学的に薬理作用は解明されておらず、詳しい研究もされていません。

 

基本的には鎮痛・抗炎症作用を目的とした処方がされていますが、むくみや水太りの状態を改善する効果も期待できるため、そういった状況でも使用されている例は存在します。

 

また、胃腸の状態を整える目的での使用もされますが、体内の水分を排泄させてしまうために通常の胃腸薬と混同して使用することは一般的ではありません。

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二朮湯の副作用

 

二朮湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。

 

ただ重大な副作用として甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要となります。

 

低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。

 

それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。

 

他に肝機能検査値異常や黄疸、強い倦怠感、かゆみなどを引き起こしてしまう肝機能障害や呼吸困難や咳、発熱や肺音の異常などが起きる間質性肺炎の報告もあります。

 

服用中にこれらの症状が現れた場合は、医師、薬剤師に伝えるようにして下さいね。

 

ちなみに二朮湯は、上記以外の副作用の報告はありません。

二朮湯の飲み方と注意事項

 

二朮湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが気づいた時点で服用しても大丈夫です。

 

二朮湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。

 

そのため、服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。

 

有効成分の重複には注意を要するものがあり、特に甘草を含む漢方薬の併用には注意しなければいけません。

 

甘草の有効成分として含有されているグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様であり、その他にもラシックスなどのループ系利尿薬・フルイトランなどのチアジド系利尿薬といった血清カリウム値の変動や血圧の変動を起こす危険性があるものに関しては併用注意となっています。

 

妊婦、産婦、授乳婦等への投与

妊娠中の投与に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。

ツムラ二朮湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用

妊娠中の服用についてですが、添付文書上では上記の通り、有益性がある場合にのみ投与することとなっています。

 

これは二朮湯に含まれる半夏が慎重投与と考えられているものであるため、服用を見送る例が多いようです。

 

ただ生姜と共に配合されていることから、胎児や母体に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられ、医師の判断によって使用する分には問題はないでしょう。

 

自己判断で中止や服用を決めるのではなく、必ず医師の指示を受けるようにして下さいね。

 

それでは二朮湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。