今回は降圧利尿薬の中でループ利尿薬に分類される「ラシックス」についてお話していきます。

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ラシックスの名前の由来は?どんな薬?

まず名前の由来からいきましょう。インタビューフォームでは特になしと記載されていますが、”last six”に由来してLasix:ラシックスと命名されたようですね。

 

ラシックスは経口投与の場合、効果が約6時間持続します。つまり、last(続く)six(6時間)を組み合わせたというわけです。一般名はフロセミドになります。

 

ラシックスの作用を簡単に説明すると、「腎臓に働きかけて尿量を増やすことで、血液中の過剰な水分が減少し、浮腫(むくみ)がとれ、血圧が下がる」となります。

 

詳しい作用機序に移る前に、高血圧について簡単に説明していきたいと思います。

高血圧とは?

血圧とは血(液)が血管の内側の壁を押す圧力のことを意味します。血管も一時的に強い圧がかかるくらいなら特別問題にはならないのです。

 

しかし過度の圧力がかかる状態が長い間放置されると、血管壁が圧力に抵抗して厚くなっていき、血管内部が狭くなります。

 

すると更に血管に圧がかかりやすくなり血管が痛みます。そこにコレステロールなどが入り込むと更に血管壁が厚くなり、ますます血管内が狭くなってしまいます。

 

その結果、血管が疲弊して弾力性がなくなることで硬くなり、またもろくなっていきます。これが動脈硬化です。

 

高血圧は自覚症状に乏しいため、気付いた時には動脈硬化がかなり進行していることもあります。高血圧がサイレントキラーと言われる所以ですね。

 

動脈硬化が進行すると血液の流れが悪くなることで血の塊、いわゆる血栓ができやすくなります。

 

これが心臓の血管で起こると心筋梗塞、脳の血管で起こると脳梗塞を惹き起こします。

 

この動脈硬化は腎臓にも悪影響を及ぼします。動脈硬化により腎臓の血管が狭くなると、体に不要な老廃物をろ過する機能が低下してしまいます。

 

腎臓の血管の血液の流れが悪くなることで、狭くなった先の部分の血圧が低下します。

 

すると腎臓は「血圧が低い!早く上げなければ!」と勘違いしてしまい、レニンと呼ばれる酵素を多く出すようになります。

 

レニンは血圧を上げる原因となる物質を作り出しますので、更に高血圧が進行し、悪循環を作り出してしまいます。

 

症状がないからと高血圧を侮ってはいけません。

 

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、狭心症、心筋梗塞、心肥大、心不全、腎不全などの合併症を予防するためにも、血圧は適正に管理する必要があるのです。

心不全とは?

心不全は病名ではなく、心臓の機能が低下したことにより、血液を全身に送り出すことが十分にできなくなった状態のことをいいます。

 

心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患、高血圧などによる心筋症や不整脈、弁膜症など様々な病気が心不全の原因となります。

 

心臓が動かなくなったら死んでしまうわけですから、心臓の機能が低下することは非常に危険であるということは皆さんおわかりのことと思います。

 

そのため、心臓は多少機能が低下しても、それを補うだけの余力を残しているのです。これを代償作用といいます。

 

しかしその余力を使い果たしてしまうと動悸や息切れ、呼吸困難、むくみ、体がだるい、すぐに疲れてしまうなどの症状が現れてきます。

 

つまり、心不全の症状が現れた時には心臓は相当疲れている、と認識して頂く必要があります。

 

心不全には急性心不全と慢性心不全があり、前者は急激に心臓の機能が低下するもの、後者は徐々に心臓の機能が低下していくものです。

 

要は余力を急激に使い果たすか、徐々に使い果たすかの違いです。

 

先ほど心不全の症状についてお話しましたが、どのようにしてこれらの症状が現われるのかもう少し詳しくみていきましょう。

 

血液が心臓(左心室)を出て全身を巡り、再び心臓(右心房)に戻ってくる循環を体循環、心臓(右心室)を出て肺を通り心臓(左心房)に戻る循環を肺循環といいます。

 

心不全の多くは左心室の機能が低下することにより起こります。左心室の機能が低下すると、全身の臓器や筋肉に酸素や栄養素を十分に運ぶことができなくなります。

 

このため体がだるくなる、すぐに疲れるなどの症状が現れるのです。

 

また血液の流れが滞ることで、行き場を失った血液が血管の周囲に水分が染み出してしまいます。これがいわゆる浮腫(ふしゅ:むくみのこと)です。

 

浮腫は足に多く見られますが、例えば肺で血液の流れが滞る(肺うっ血といいます)とガス交換が十分にできなくなります。

 

すると息切れや呼吸困難が生じ、更に血液の酸素濃度が低下するため、皮膚や粘膜が青紫色になります。これをチアノーゼといいます。

 

チアノーゼになると、これを解消しようと心臓が頑張りますので心拍数が増加して動悸が生じます。

 

その結果、肺うっ血が更に進行して肺が水浸しになる肺水腫となり、非常に危険な状態になります。この場合、すぐに病院を受診する必要があります。

 

他に腎臓を流れる血液の量も低下しますので、尿量が低下し体重が増加します。心不全の方の夜間頻尿が増えるのは、仰向けになると下肢に溜まっていた水分が腎臓に流れるからです。

 

このように心不全にはさまざまな症状が現れます。

 

それでは続いて、尿の排泄のしくみについて見て行きましょう。

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尿の排泄のしくみ

腎臓には体に不要な物がつまった血液が送られてきます。ただ必要な物も多く入っているため、そのまま体の外に全部捨てるわけにはいきません。

 

そこで腎臓の糸球体という場所で血液を一度濾過します。糸球体は目が非常に細かいため、赤血球や白血球などの大きい物は濾過されないようになっています。

 

糸球体で濾過されたものを原尿といいますが、原尿はそのまま全て排泄されるわけではありません。

 

なぜなら原尿は150Lもあり、さらに体に不要な物だけでなく糖分や電解質など体に必要な物も多く含まれているんですね。

 

名称 再吸収される主な物質
近位尿細管

ブドウ糖、アミノ酸、Na、K、重炭酸イオン(HCO3-)水分

ヘンレ係蹄(ループ) 電解質(Na、Cl、K)、水分
遠位尿細管 電解質(Na)、水分
集合管 電解質(Na)、水分

※Naの再吸収の割合:近位尿細管で70%、ヘンレループで20%、遠位尿細管で7%、集合管で3%

最終チェックを行うのが尿細管という場所です。尿細管は近位尿細管、ヘンレ係蹄上行脚、ヘンレ係蹄下行脚、遠位尿細管、集合管と大きく5つに分けることができます。

 

それぞれの働きを簡単にまとめると上の表のようになります(ヘンレ係蹄は上行脚と下行脚を1つにまとめています)。

 

最終的に尿として排泄されるのは約1%で、1.5Lほどです。

ラシックスの作用機序

ヘンレ係蹄上行脚にはNa+-K+-2Cl共輸送体という部分があります。Na+-K+-2Cl共輸送体はNa(ナトリウム)、K(カリウム)、Cl(クロール)の再吸収に関わっています。

 

ループ利尿薬のラシックスはNa+-K+-2Cl共輸送体の働きを邪魔する作用を持ち、これによりNa、K、Clの再吸収が阻害されます。

 

Naと水は同じ動きをしますので、体の中の余分な水分が排出されることでむくみがとれ、血圧が下がるのです。

ラシックスの特徴

ラシックスはその作用から浮腫や肺うっ血など体液が過剰であると判断された際に使用されます。

 

ラシックスはサイアザイド系やK保持性利尿薬と違い、腎血流量、糸球体濾過量を減少させないため、腎機能が低下(GFR≦20mL/min)している場合でも利尿効果が期待できます。

 

ただ、無尿(1日の尿量が100mL以下のこと)の患者様には効果が期待できないため禁忌となります。

 

ラシックスは基本的に午前中に服用します。理由は夜間頻尿を避けるためです。

 

効果発現と持続時間ですが、経口投与の場合1時間以内に効果が発現し、約6時間持続します。一方注射(静注)の場合は投与後数分以内に発現し、約3時間持続します。

ラシックスの用法・用量

ラシックス錠・細粒

1日1回40~80mgを連日又は隔日経口投与。腎機能不全等の場合にはさらに大量に用いる。

私の経験上ですが、1日量として10~40mgで処方されているケースが多いですね。また朝食後・昼食後の2回に分けて処方される場合もあります。

ラシックス注20mg

1日1回20mgを静脈注射又は筋肉内注射。腎機能不全等の場合にはさらに大量に用いる。

ラシックス注100mg

ラシックス20~40mgを静注しても利尿がない場合、100mgを静注する。

投与後2時間以内に1時間当り約40mL以上の尿量が得られない場合は漸増する。ただし、1回投与量は500mg、1日量は1000mgまで。

投与速度はフロセミドとして毎分4mg以下。

大量投与時は生理食塩液等で希釈して点滴静注します(薬剤の特性上50mLで希釈されることが多いです)。

 

その際、4mg/分以下で投与しないと難聴を惹き起こす可能性がありますので注意が必要です。

 

また、ラシックス注は配合変化を起こしやすい薬として有名です。看護師の方も知っている方が多いと思います。

 

pH6.2以下で溶解度が低下して沈殿するため、原則単独投与です。同じルートで投与する場合は、前後生理食塩液でフラッシングします。

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先発品一覧

  • ラシックス錠10mg
  • ラシックス錠20mg
  • ラシックス錠40mg
  • ラシックス細粒4%
  • ラシックス注20mg
  • ラシックス注100mg
  • オイテンシンカプセル40mg

同成分品でオイテンシンカプセル40mgもあります。こちらはラシックスの持効性カプセルです。

当院採用の先発品とジェネリック医薬品

  • フロセミド錠10mg、20mg「武田テバ」
  • ラシックス注20mg

細粒の採用はなく、粉砕にて対応しています。

 

武田テバには結構痛い目を見ているので変更したいのですが、処方量も多いため結局そのまま採用継続となっています。

ラシックスの副作用について

まずは脱水、低ナトリウム血症と低カリウム血症。水分やナトリウム、カリウムの再吸収が阻害されるため、過剰に排泄されてしまう可能性があります。

 

低ナトリウム血症の症状には体がだるい、のどがかわく、ふらつき、立ちくらみ、動悸など、低カリウム血症の症状には、力が入りづらい、しびれ、脈の乱れなどがあります。

 

続いてめまいやふらつき。高所作業や自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意しましょう。特に高齢者では出現しやすいです。

 

他に注意が必要なのは血糖値と尿酸値の上昇です。

 

ラシックスを長期間服用することで低カリウム血症が出現するとインスリンの分泌が抑えられ、またインスリンの感受性も低下(効きが悪くなる)します。これにより血糖値が上昇します。

 

またナトリウムの再吸収が邪魔されることにより、近位尿細管での尿酸の再吸収が促され尿酸値が上昇することがあります。必要に応じて高尿酸血症治療薬を併用して対応します。

 

これらの副作用が現れた場合は主治医に伝えるようにしましょう。飲み始めてから1~2週間の間に現れることが多いです。

 

ただ服用中は受診の度に血液検査を行う(はず)ですので、下がっても適切な対応をしてもらえます。安心して服用してください。

 

それではラシックスについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。