今回は睡眠薬のルネスタについてお話していきます。またアモバンとの違いや換算量についても説明します。

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ルネスタとは?

まずは名前の由来からいきましょう。

 

米国での販売名は”Lunesta”になります。Luna(=月)+ Star(=星)が由来となっています。月と星ですから、夜、睡眠などをイメージします。

 

それをそのまま日本の販売名「ルネスタ」で使用しています。一般名はエスゾピクロンです。

 

ルネスタは超短時間型の睡眠薬に属します。それではまずルネスタとアモバンの違いについてお話していきましょう。

ルネスタとアモバンの違いとは?

さて両者の違いですが、その前に光学異性体についてお話する必要があります。

 

構造が左右対称に鏡写しになっている事を鏡像関係といいます。光学異性体とはこの対称となる立体構造を持つ化合物のことです。

 

通常ある物質が合成される時には、鏡像関係にある2つの物質が同じ量だけ混ざったものができます。これをラセミ体といいます。

 

アモバンの場合でお話すると…

片方(R体)は苦味成分がメインで催眠作用が弱い

もう一方(S体)は催眠作用がメインで苦味が少ない

のです。

 

だったら「S体だけ飲めばいいのでは?」って思いますよね。実はその抜き出したS体がルネスタなのです。

 

ただ残念ながら、ルネスタにも苦味はあります。あくまでも(アモバンよりは)苦味が少ないと考えてください。

 

またこの苦味ですが、感じるのは飲む時だけではありません。苦味は唾液腺から分泌されるため、翌朝にも吸収された成分が唾液腺から分泌される可能性があります。

 

また高齢者は唾液の分泌が減少しているため苦味を感じにくい傾向にありますが、絶対ではありません。苦味がどうしても気になる方は同系統の薬に変更して頂く必要があります。

睡眠障害と睡眠薬のタイプについて

タイプ 症状
入眠障害

夜なかなか寝付くことができない

寝るのに30分~1時間錠かかる

中途覚醒 夜中に何度も目が覚めてしまう
熟眠障害 どれだけ寝ても寝た気がしない
早朝覚醒 朝早く目が覚めて、その後寝付けない

上の表をご覧下さい。睡眠障害は症状により4つのタイプに分類できます。

 

また睡眠薬は半減期により大きく4つに分類でき、これが作用時間の目安となります。

半減期とは?

薬の血液中の濃度が最高になった後、それが半分の濃度になるまでにかかる時間

タイプ 主な睡眠薬 一般名 半減期(時間)
超短時間型 ハルシオン トリアゾラム 2~4
マイスリー ゾルピデム 2
アモバン ゾピクロン 4
ルネスタ エスゾピクロン 5~6
短時間型 レンドルミン ブロチゾラム 7
リスミー リルマザホン 10
エバミール、ロラメット ロルメタゼパム 10
中間型 エリミン ニメタゼパム 21
ロヒプノール、サイレース フルニトラゼパム 24
ユーロジン エスタゾラム 24
ベンザリン、ネルボン ニトラゼパム 28
長時間型 ドラール クアゼパム 36
ソメリン ハロキサゾラム 85
ダルメート、ベノジール フルラゼパム 65
非ベンゾジアゼピン系 ロゼレム ラメルテオン 1
ベルソムラ スボレキサント 10

代表的な睡眠薬を分類しました。処方する際は睡眠障害のタイプによって睡眠薬を使い分けます。2種類以上併用する場合もあります。

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ルネスタの作用機序と特徴

ルネスタはシクロピロロン系に分類され、非ベンゾジアゼピン系に分類されます。

※以下ベンゾジアゼピンをBZDと表記します。

 

ただ非ベンゾジアゼピン系とはいえ、作用機序の基本的な考え方はBZD系とほぼ同じです。

 

睡眠障害は神経系の興奮により引き起こされます。ということはその興奮を鎮めてあげればいい事がわかりますよね。

 

そこで注目するのがγアミノ酪酸(以下GABA:ギャバ)と呼ばれる物質です。

 

GABAは脳内に存在し、その作用から抑制性神経伝達物質と呼ばれています。

 

GABAはGABA受容体に結合することで、通常は細胞の外にある塩化物イオン(Clイオン)が細胞内に進入します。

 

Clイオンはマイナスに帯電しており、細胞内がマイナスに傾いていくと興奮が伝わるのが抑えられ、私達は眠たくなるというわけです。

 

睡眠障害の患者様はGABAがGABA受容体に結合する能力が低下しているとされており、その能力を高めてあげればいいことがわかりますね。

 

そこでルネスタの登場です。

 

ルネスタはBZD受容体と結合する事でGABAをGABA受容体に結合しやすくします。これを感受性を高めるといいます。

 

その結果、細胞内にClイオンが入るのがどんどん促進され、興奮が伝わりづらくなり眠たくなるわけですね。

 

ちなみに、BZD受容体にはω(オメガ)1とω2受容体の2つがあります。

ω1受容体:主に催眠鎮静作用に関与

ω2受容体:主に抗不安作用や筋弛緩作用に関与

通常のベンゾジアゼピン系はω1とω2両方に作用しますが、ルネスタはω1受容体に選択的に作用します。

 

つまり催眠鎮静作用に特化しており、抗不安作用や筋弛緩作用が弱いという特徴があります。

 

そのため高齢者に比較的よく処方されるんですね。ただω2受容体に全く作用しないというわけではありませんのでもちろん転倒などには注意が必要です。

 

超短時間型であるルネスタは服用後10~15分で効果が現れます。また半減期が5~6時間であるため、主に入眠障害、中途覚醒に対して処方されます。

ルネスタの効能効果・用法用量

ルネスタの効能効果・用法用量をみる

効能又は効果/用法及び用量
不眠症

用法及び用量
通常、成人にはエスゾピクロンとして1回2mgを、高齢者には1回1mgを就寝前に経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、成人では1回3mg、高齢者では1回2mgを超えないこととする。

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ルネスタの副作用と注意事項

主なものは味覚異常、頭痛、傾眠、浮動性めまいです。

 

冒頭でもお話しましたが、アモバンよりも少ないとはいえ、やはり味覚異常(苦味)が1番多いです。それ以外は概ね他の睡眠薬と同じような副作用になります。

 

超短時間型の薬は作用時間が短いため、翌朝への持ち越しも少ないのですが、その分反跳性不眠が出やすいです。自己判断で中止するのはやめましょう。

反跳性不眠とは?

突然服用を中止することで、服用前より強い不眠が現れること。

また、高齢者は運動失調等が出やすいため、少量から開始するのがよいかもしれません。

運動失調とは?

ろれつが回らない、動きがぎこちない、ふらふらする等の症状が現れ、中枢神経系の抑制と筋弛緩作用が原因と考えられています。

そして、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系共通の注意事項として、重症筋無力症と急性狭隅角緑内障の方には禁忌となり、使用することができません。

 

重症筋無力症に対して使用できないのは神経伝達がブロックされ筋弛緩作用が増強するため。

 

急性狭隅角緑内障に対して使用できないのは抗コリン作用による眼圧上昇作用のためです。

 

またアルコールには脳の活動を抑える作用があります。睡眠薬と一緒に飲むことで作用が増強されるため控えるようにしましょう。睡眠の質が悪くなるとも言われています。

ルネスタとアモバンの換算

最後にルネスタとアモバンの換算ですが、「アモバン10mg ≒ ルネスタ2mg」となります。

 

ただこれについては諸説ありますので、あくまで目安として頂ければと思います。

 

それではルネスタについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

出典:
ルネスタ錠1mg / ルネスタ錠2mg/ ルネスタ錠3mg 添付文書・インタビューフォーム