今回は抗てんかん薬のイーケプラについてお話していきたいと思います。

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イーケプラとは?

 

それでは名前の由来からいきましょう。イーケプラはE Keppraと表記されますが、”E”はEpilepsy(てんかん)の頭文字、”Keppra”はエジプトの太陽神”Khepra”に由来しています。一般名はレベチラセタムです。

 

イーケプラの作用を簡単に説明すると「てんかん発作を予防する」になります。

 

それではまずてんかんについてみていきましょう。

てんかんとは?

 

普段、私達人間の大脳の中ではニューロンと呼ばれる神経細胞の間を電気刺激が伝わっていて、それによって人は物を考えたり行動したり、様々な生命維持機能が働いたりするようにできています。

 

ところが、何らかの原因でこの電気刺激が異常興奮してしまい、神経伝達がショートしたように乱れてしまうことがあります。

 

それによって起こる様々な症状を「てんかん」と言います。てんかん発作は繰り返し起こることも特徴の一つで、1回だけの発作では普通てんかんと診断はされません。

てんかんの原因と起こるメカニズム

てんかんが起こる原因は様々ですが、原因により「特発性てんかん」「症候性てんかん」に分けられます。

 

様々な検査をしてもてんかんの原因となるような器質的な異常が見つからず、原因不明とされるてんかんのことを「突発性てんかん」と言います。こちらは遺伝的にてんかんになりやすい素質があるのではないかと考えられています。

 

一方、症候性てんかんは、脳梗塞や脳外傷、脳炎や低酸素状態など、何らかの原因で脳に障害が起きたり脳の一部が傷ついたりしたことが原因で起こるてんかんです。

 

どちらの場合でもてんかん発作が起こるメカニズムは同じであり、大脳の神経細胞を伝達する電気刺激の異常興奮が原因とされています。

てんかんの分類とそれぞれの特徴

それでは次に、てんかんの分類とその特徴についてもう少し詳しく見てみましょう。

 

先ほど、てんかんの原因により「特発性てんかん」「症候性てんかん」に分けられることはお話ししましたね。これとは別に、脳の中で発作が起こる部位によって、大脳全体で一斉に興奮が始まる「全般発作」と、脳のある一部分から発作が始まる「部分発作」に分けることもできます。

 

てんかんの分類は、これら2つの分類方法を組み合わせて、「特発性部分発作」「特発性全般発作」「症候性部分発作」「症候性全般発作」の大きく4つに分類されています。

 

ちなみに、「全般発作」と「部分発作」は、実際に起こる症状によって更に細かく分類されています。

全般発作

強直間代発作:意識が喪失し、全身の硬直(強直発作)、直後に全身のガクガクとした痙攣(間代発作)が見られる

欠伸発作:急に数秒〜数十秒意識喪失し、すぐに回復する

脱力発作:全身の力が抜け、崩れ落ちるように倒れる。時間は数秒と短い

ミオクロニー発作:全身または体の一部がピクッとなる

部分発作

単純部分発作:意識障害を伴わない

複雑部分発作:意識障害を伴う

二次性全般化発作:2~3秒間前兆(アウラ)として単純又は複雑部分発作から始まり、多くが強直間代発作に移行

 

このようにてんかんと一括りに言ってもその発作のタイプは様々で、発作の型により治療薬も変わってきます。

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イーケプラの作用機序と特徴

 

てんかんは大脳の神経細胞が過剰に興奮している状態。そこで着目したいのは興奮性神経伝達物質のグルタミン酸です。

 

神経細胞の末端はシナプスと呼ばれる構造を持ちますが、神経細胞同士はくっついておらず、数万分の1mm程度離れており、この隙間をシナプス間隙といいます。そして情報を伝達する側のシナプスを前シナプス、情報を受け取る側のシナプスを後シナプスといいます。

 

前シナプスからグルタミン酸がシナプス間隙に放出され、それが後シナプスに到達しグルタミン酸受容体(カイニン酸受容体、NMDA受容体、AMPA受容体)と結合することで情報(興奮)が伝達されます。

 

つまり、興奮性神経伝達物質のグルタミン酸の放出を抑えたり、受容体に結合するのを邪魔することができれば興奮が伝わるのを抑えることができるというわけですね。

 

そこでイーケプラです。

 

イーケプラは前シナプスにあるシナプス小胞たん白質2A(SV2A)に結合します。SV2Aはグルタミン酸の放出を調節する作用を持っており、イーケプラが結合することでグルタミン酸の放出を抑えることができるのです。

 

更にイーケプラは神経細胞のカルシウムチャネル(N型)を遮断する作用も持っています。イオンの通り道であるチャネルが遮断されると、神経細胞内にCa2+が入り込むのを抑える事ができます。これにより興奮を抑えることができるのです。

 

イーケプラの代謝経路はアセトアミド基の酵素的加水分解(約7割が未変化体として尿中に排泄されます)。つまり肝薬物代謝酵素(肝チトクローム P450 系代謝酵素)の影響を受けません。そのため他の抗てんかん薬との相互作用がないのも特徴の1つ。

 

他の抗てんかん薬と比較して安全域が広く、また血中濃度と有効性・安全性に個人差が大きいということもあり、TDM(治療薬物モニタリング:Therapeutic Drug Monitoring)も不要となっています(有効血中濃度は12~46μg/mLです)。

 

そのため、基本的に抗てんかん薬は少量から開始して、徐々に増量(漸増)していくのですが、イーケプラはいきなり常用量でOKです(もちろん少量から開始する場合もあります)。その後発作や副作用の状況を観て増減していきます。

 

イーケプラの適応は…

・てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)
・他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法

となっています。部分発作は単剤治療可能ですが、全般発作では併用する必要がありますので注意が必要です。

 

剤形については普通錠、ドライシロップ、点滴静注があります。

イーケプラの副作用

 

副作用としては眠気、頭痛、めまい、下痢、便秘、鼻咽頭炎などが報告されています。

 

眠気、注意力・集中力の低下がみられる場合がありますので、服用中は自動車の運転や機械の操作、高所作業等危険を伴う作業は避ける必要があります。

抗てんかん薬全般の注意事項

 

てんかんの治療には外科治療や食事療法もありますが、現在は薬物療法が主流となっています。そしてその薬の選択は、主にてんかんの発作型や年齢などを考慮して決められています。

 

現在では様々なてんかん治療薬が開発され、従来の薬ではコントロールできなかった発作にも効果が期待できるようになってきました。

 

しかし、発作が落ち着いているからと言って、抗てんかん薬を自己判断で服用する量を変えたり中止したりしてしまうと、発作の再発はもちろん、重い副作用が出ることにもつながりかねません。

 

また抗てんかん薬は飲み合わせや症状によっては中止しなければならないこともあるハイリスク薬(特に安全管理が必要な医薬品)に分類されています。必ずお薬手帳を医師、薬剤師に提示するようにして下さいね。

 

抗てんかん薬を服用する場合は、決して自己判断をせず、医師や薬剤師の指導のもと、服用方法や服用量を守って正しく使用することが大切です。

 

それではイーケプラについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。