今回は漢方薬の葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)について解説します。
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葛根湯加川芎辛夷の名前の由来
葛根湯に冷えを改善する川芎と鼻炎を改善する辛夷を加えた処方ということで、葛根湯加川芎辛夷と命名されています。
葛根湯加川芎辛夷の作用機序と特徴
葛根湯加川芎辛夷は鼻炎・鼻づまりに対して良く用いられている漢方薬で、含まれている生薬は葛根(カッコン)、麻黄(マオウ)、桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、甘草(カンゾウ)、大棗(タイソウ)、生姜(ショウキョウ)、川芎(センキュウ)、辛夷(シンイ)です。
東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。葛根湯加川芎辛夷に適応のある証は中間証~実証、寒証であり、体力が充実しているが冷えやすい状態の人に向いています。
添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果
鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ツムラ葛根湯加川きゅう辛夷エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
漢方薬の薬理作用は解明されていないことが多く、葛根湯加川芎辛夷の作用機序も深くは研究されていません。
ただ葛根湯加川芎辛夷に関しては葛根湯をもとに、冷え・鼻炎に特異的に作用する川芎・辛夷を加えたものとなりますので、作用機序も葛根湯と同様に考察することができます。
葛根湯加川芎辛夷は、ヒスタミンやブラジキニンの作用を抑制することによって、アレルギー反応や炎症反応を抑制します。
また、インターロイキンなどのサイトカインにも作用し、免疫機能の調整も行うことによって風邪などのウイルス性の症状にも効果を発揮するため、鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎等に用いられます。
ただし、これらのサイトカインに対して、どのように作用を発揮しているのかまでは判明していないのが現状です。
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葛根湯加川芎辛夷の副作用
葛根湯加川芎辛夷では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。
低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。
その他の副作用として、発疹・発赤などの過敏症状、不眠・発汗過多・頻脈・動悸・興奮などの自律神経系症状、食欲不振・胃部不快感・悪心・下痢などの消化器症状、排尿障害などが報告されています。
服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。
葛根湯加川芎辛夷の飲み方と注意事項
葛根湯加川芎辛夷は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果が増強してしまう可能性はありますが気づいた時点で服用しても大丈夫です。
ただし、麻黄を含んでいるため、副作用の発現には注意しましょう。
関連記事:漢方薬の「食前または食間」にエビデンスはある?食後ではダメ?
葛根湯加川芎辛夷は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。
そのため、服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。
心疾患や高血圧などの持病がある人では、麻黄に含まれるエフェドリンが体に負担をかけてしまう可能性があるため、慎重に服用する必要があります。
また、麻黄は以下の薬剤と併用することで交感神経興奮作用が増強する可能性があります。お薬手帳を忘れずに提出するようにして下さい。
・MAO(モノアミン酸化酵素)阻害薬
・アドレナリンなどのカテコールアミン製剤
・テオフィリンなどのキサンチン系製剤
・チロキシンなどの甲状腺製剤
・エフェドリン含有・麻黄含有の製剤
他にも甘草を有効成分として含んでいるため、甘草を含んでいる漢方薬との併用はもちろん、その有効成分であるグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があります。
妊娠中の使用に関しては、有益性がある場合にのみ使用することとなっています。ただ証によっては妊娠中の花粉症に対して処方を検討する場合もあります。
ただし、麻黄が末端の血流を低下させる可能性があるため、自己判断ではなく、必ず医師の指示をもとに服用するようにして下さい。
それでは葛根湯加川芎辛夷については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。