今回は漢方薬の十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)についてお話していきます。
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十全大補湯の名前の由来は?
漢方診断の指標である気血、陰陽、表裏等をもとに抗病力(病気に対する抵抗力)が大きく低下している状態に対し、その抗病力を十全(完全)に大きく補うという作用に由来して十全大補湯と命名されています。
十全大補湯の作用機序と特徴
十全大補湯は体力を回復させるために使用されることが多い漢方薬で、含まれている生薬は人参(ニンジン)、茯苓(ブクリョウ)、地黄(ジオウ)、甘草(カンゾウ)、黄耆(オウギ)、当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、蒼朮(ソウジュツ)、芍薬(シャクヤク)、桂皮(ケイヒ)です。
蒼朮の代わりに白朮(ビャクジュツ)が入っているものもあります。ちなみにツムラの製品は蒼朮が入っています。
漢方薬はすべて、適応となる人を「証」を見て判断します。「証」とは、人の状態を現す東洋医学の考え方で、十全大補湯の使用に向いている人は虚弱体質で貧血気味、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積している人です。
添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果
病後の体力低下、疲労倦怠、食欲不振、ねあせ、手足の冷え、貧血
用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
ツムラ十全大補湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
十全大補湯の効果は、完全に解明されておらずいまだ研究中ですが、免疫調節作用について研究されています。
東洋医学的には「気」と「血」を改善するとされており、当帰や芍薬などにより血流を改善することで全身に栄養素が分配されるように体質改善を行い、人参や地黄により滋養強壮作用を補っています。
冒頭でもお話しましたが、十全大補湯は「十全(完全)に大いに補う」効果を発揮するのです。西洋医学的な研究では、十全大補湯の効果は免疫に対する多くの作用によるものと判断されています。
体内における免疫は、様々な経路を持って活動しています。その活動が低下している状態を改善し、または過活動状態により体に不調を起こしている場合には抑制するという効果を十全大補湯は発揮するのです。
体内での免疫を担当しているマクロファージの機能を活性化し、異常細胞を殺すT細胞の働きも活性化させます。免疫機構を調節するサイトカインの働きを調節することも十全大補湯の作用になります。
T細胞への作用はガンに対する自己免疫作用を改善することで知られているため、抗ガン治療の際には副作用軽減や治療補強のためにも用いられます。
貧血に対する作用は、十全大補湯に含まれている脂肪酸により造血細胞が刺激されて発揮されているとされています。この効果は、造血細胞に対する脂肪酸の効果を示唆することになり、今後の研究の進展が待たれるものです。
皮膚疾患でも用いられる場合があり、血流と体力の回復により、軽度のアトピーや皮膚剥離などの治癒率を高める効果も期待されています。
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十全大補湯の副作用
十全大補湯では副作用が明確になる調査は行われていません。そのため、その発現頻度に関するデータも存在しておらず、どのくらいの頻度で起こるのかが不明です。
一般的に漢方薬の副作用は、ほぼ含まれている生薬によって決まります。十全大補湯には甘草が含まれているため、頻度不明ですが偽アルドステロン症やミオパチー、肝機能障害の報告があるので注意が必要です。これらの症状としては血圧の上昇やむくみ、脱力感などがあります。
その他の副作用として、発疹、発熱、掻痒感などの過敏症、食欲不振や胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢等の消化器症状の報告があります。
胃腸がかなり弱っている場合には、消化器症状の副作用が発現しやすくなるため注意しましょう。
十全大補湯の飲み方と注意事項
十全大補湯はもともと液剤だったものを抽出して散剤にしたものです。ですので、服用時にはそれに即してぬるめのお湯で服用したほうが効果的だと言われています。約60度のお湯が最も効果的であり、あまりに熱いお湯では有効成分が揮発してしまうので注意しなければいけません。
含有生薬に甘草が含まれているため、漢方薬の併用によって重複してしまい、過量投与にならないように注意しなければいけません。甘草が過量投与になってしまうと、前項でお話した副作用が発現しやすくなってしまいます。
添付文章上では、妊娠中の服薬の安全性が確立されていないため、治療上の有益性が危険性を上回る場合に使用するように書かれていますが、不妊症の状態を改善するためや、妊娠中の体力補強のために用いられることが多い漢方薬です。
医師の判断で用いる場合には安全性は高いと言えます。ただし、医師は個人の証を判断して処方していますので、自己判断で服用することはしないようにしましょう。
それでは十全大補湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。