今回は漢方薬の治頭瘡一方(ヂヅソウイッポウ)について解説します。

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治頭瘡一方の名前の由来

 

頭瘡は頭部の湿疹、皮膚炎などを意味します。これを治すという効能から治頭瘡一方と命名されています。一方は治療に用いる1つの処方という意味です。

治頭瘡一方の作用機序と特徴

 

治頭瘡一方は湿疹や挫創、皮膚炎などの治療に用いられている漢方薬で、含まれている生薬は川芎(センキュウ)、蒼朮(ソウジュツ)、連翹(レンギョウ)、忍冬(ニンドウ)、防風(ボウフウ)、甘草(カンゾウ)、荊芥(ケイガイ)、紅花(コウカ)、大黄(ダイオウ)です。

 

名前からもわかる通り、頭部にできた瘡(皮膚炎)、特にジュクジュクした症状に効果的な漢方薬で、乳幼児の湿疹やアトピーにも用いることができる代表的な漢方薬です。

 

東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。

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治頭瘡一方に適応のある証は、実証・熱証・水滞であり、体力は中程度以上でむくみやすく、ほてり・発赤があるタイプの人に向いている漢方薬です。

 

添付文書には以下のように記載されています。

効能又は効果
湿疹、くさ、乳幼児の湿疹

用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

ツムラ治頭瘡一方エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用

 

漢方薬の薬理的な作用機序は解明されていないものが多く、治頭瘡一方も例外ではありません。そこで、配合されている生薬からその効果を考察していく必要があります。

 

防風・荊芥・連翹は発散作用を持つ生薬であり、皮膚に蓄積した病因を発散させて皮膚症状を緩和させていきます。

 

連翹には排膿を促す効果もあり、蒼朮が皮膚のジュクジュクした症状を緩和します。また、川芎・紅花が血行を改善させて皮膚の新陳代謝を活発にし、忍冬・大黄が解毒効果を発揮します。

 

頭部の痒みが強く、かさぶたができているような状態の脂漏性湿疹は、治頭瘡一方の適応となります。ただし、すべての脂漏性湿疹に効果があるわけではなく、証が合っていることが前提条件となることに注意しましょう。

 

赤ちゃんでも、かきむしるほど痒みがある強い湿疹であり、便秘気味である場合には治頭瘡一方の適応となります。

 

ただ大黄は下剤としても用いられている成分ですので、便とともに毒素を排出するという意味合いもあり、治頭瘡一方を服用した子供が下痢症を呈した例があります。時に効果が強く出過ぎる場合もあるため、慎重に使用する必要があります。

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治頭瘡一方の副作用

 

治頭瘡一方では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。

 

低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。

ミオパチー:ここでは難病である先天性ミオパチーではなく、薬剤性ミオパチーを指しています。薬剤性ミオパチーは何らかの医薬品の影響で筋肉が痩せていき、力が入りにくいという自覚症状を伴います。服用を中止することで改善することが可能です。

 

その他の副作用として、食欲不振や胃部不快感、悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状、発疹や掻痒感などの過敏症状が報告されています。服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。

治頭瘡一方の飲み方と注意事項

 

治頭瘡一方は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが、気づいた時点で服用しても構いません。

 

服用に当たっては、約60℃のぬるま湯で溶かして服用する方が効果的だと言われています。あまりに熱いお湯では薬効成分が揮発する可能性があるため、注意してください。

 

有効成分の重複には注意を要するものがあり、甘草を含む漢方薬の併用には注意しなければいけません。

 

前述している甘草による副作用が発現してしまう可能性があるため、甘草を含有している漢方薬はもちろん、甘草の有効成分として含有されているグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があり、併用注意となっています。

 

下痢や軟便、悪心を呈している患者や、体力が低下している患者では、副作用が発現してしまう可能性があるため、慎重に使用する必要があります。

 

妊娠中の服用は基本的には行われない漢方薬です。大黄は子宮収縮作用を持っており、紅花も早産を誘発させてしまう可能性があります。

 

また、授乳中の服用で大黄の主成分であるアントラキノンが母乳中に移行することが判明しており、乳児が下痢症状を起こしてしまう危険性があるため、使用は控えた方が良いでしょう。

 

くれぐれも自己判断での服用は避けるようにして下さいね。

 

それでは治頭瘡一方については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。