今回は漢方薬の茵ちん蒿湯について解説します。
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茵ちん蒿湯の名前の由来
構成される生薬のうち、主薬である茵蔯蒿の名を取って茵蔯蒿湯と命名されています。
茵ちん蒿湯の作用機序と特徴
茵ちん蒿湯は黄疸などの肝障害や蕁麻疹などの症状に用いられている漢方薬であり、含まれている生薬は茵蔯蒿(インチンコウ)、山梔子(サンシシ)、大黄(ダイオウ)です。
東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。茵ちん蒿湯の適応となる証は、実証・熱証・水毒であり、体格が良くて体力があり、むくみやすくて熱っぽい人に向いています。
添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果
尿量減少、やゝ便秘がちで比較的体力のあるものの次の諸症
黄疸、肝硬変症、ネフローゼ、じんましん、口内炎用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ツムラ茵ちん蒿湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
茵ちん蒿湯は東洋医学的な効用として、体内に発生している熱を発散させて効能を発揮しているとされています。
内臓に起きた炎症を冷ますことで肝機能障害などを癒し、体内の炎症が原因となって起きている口内炎や蕁麻疹にも効果を発揮すると考えられます。そのため、直接患部に何らかの原因がある口内炎や蕁麻疹には、あまり効果的ではありません。
漢方薬の科学的な薬理作用は未だにあまり解明されていませんが、茵ちん蒿湯に関しては科学的にも薬理作用が研究され、大部分が解明されています。
山梔子の有効成分であるゲニポシドとその代謝物であるゲニピンが胆汁酸に依存せずに利胆作用を発揮し、胆汁の産生を促進します。
さらに、胆汁の主成分であるビリルビンの再吸収を促進するビリルビントランスポーターを賦活化する効果を発揮し、それも併せて胆汁の合成を促進させるのです。
また、茵蔯蒿の主成分であるジメチルエスクレチンはオッディの括約筋を弛緩させる作用を持ち、それによって総胆管が開口されて胆汁・膵液の循環をよりスムーズに行うことが可能になります。
その他にも、肝細胞を障害する炎症性サイトカインの分泌を抑制することで炎症反応を低下させ、細胞のアポトーシスを抑制する効果や、肝細胞の炎症を改善することによって、細胞の線維化も予防できるので、理論的には肝硬変の進行も予防できます。
ただし、現在の医療で肝硬変などの重篤な状態の時に漢方薬が選択されることは稀です。
大黄は主に下剤として用いられる生薬ですが、胆汁と膵液の分泌をわずかながら促進し利尿効果も併せ持っているため、胆の働きを改善して熱を放散させる茵ちん蒿湯の効果をより際立たせるために配合されています。
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茵ちん蒿湯の副作用
茵ちん蒿湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。ただ重大な副作用の報告もあるため、使用する際にはその兆候となる症状について知っておきましょう。
まずは肝機能障害。肝機能検査値の異常や黄疸が発生することがあります。異常が見られた場合には服薬の中止と、適切な処置が必要になります。
さらに長期間服用をすることにより、腸管膜静脈硬化症が起きてしまう場合があります。下痢・腹痛を何度も繰り返す、もしくは便潜血があった場合には服薬を中止し、すぐにCT検査などを行った後に適切な処置が必要です。
その他の副作用としては、食欲不振、胃部不快感、腹痛・下痢などの消化管症状の報告があります。
茵ちん蒿湯の飲み方と注意事項
茵ちん蒿湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが気づいた時点で服用しても大丈夫です。
茵ちん蒿湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。
そのため、服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。
含有生薬の大黄が過量になってしまうと、下痢や腹痛などの消化器症状を誘発してしまう可能性が高くなります。また、大黄の成分はセンノシドです。併用薬にセンノシドが含まれないように注意しましょう。
妊娠中の服用はあまりオススメできない漢方薬です。含まれている生薬である大黄が母体に影響を及ぼしてしまい、子宮を収縮させることで早・流産を引き起こしてしまう危険性があります。
授乳中も同様に、大黄の成分が母乳から子供に取り込まれてしまい、過度の下痢を誘発してしまう危険性があります。自己判断で服用するのは避けて下さいね。
それでは茵ちん蒿湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。