補中益気湯と十全大補湯。どちらも体力の回復に使われる漢方薬ですが、その違いと使い分けとはどのようなものでしょうか。今回は、それについて簡単にまとめたいと思います。

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補中益気湯と十全大補湯の特徴と違い

 

補中益気湯に含まれている生薬は黄耆、白朮(又は蒼朮)、人参、当帰、柴胡、大棗、陳皮、甘草、升麻、生姜、十全大補湯に含まれている生薬は黄耆、白朮(又は蒼朮)、人参、当帰、茯苓、地黄、甘草、川芎、芍薬、桂皮です。

 

どちらにも含まれている生薬は、人の気を回復させ、栄養剤として働く能力を持った生薬であり、違いが生まれてくるのはそのほかの生薬との組み合わせです。

 

科学的にはどちらも免疫能力を調節する能力を持っていることが判明しており、体内で細菌などから肉体を保護しているマクロファージやT細胞を活性化することができます。

 

補中益気湯では精巣でのタンパク質合成補助作用、十全大補湯では造血細胞の活性化作用がそれぞれ特徴的な効果です。

 

それぞれの適応となる証は異なっており、補中益気湯では陰証、虚証、寒熱では中間証を示し、気虚の状態の方に使用されるもので、具体的には体力がなくて弱々しく、意欲低下している状態です。

 

十全大補湯では陰証、虚証、寒証、気虚、血虚の状態に使用されるものであり、具体的には体力がなくて弱々しく、代謝が落ちていて意欲低下があり、貧血気味の状態です。

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補中益気湯と十全大補湯の使い分け

 

どちらも体力を補助するための漢方薬ですが、それぞれの特徴と違いから使い分けをすることが推奨されます。

 

十全大補湯は寒証向けであるため、体温が低めで寒がりの人向けですが、補中益気湯では中間証ですので、過度に暑がっていたり寒がっていたりする人には効果が期待できません。

 

補中益気湯は胃腸の働きを改善させながら気を補充する効果を持った漢方薬であり、胃腸の弱っている人でやる気が出ず、倦怠感やだるさなどを感じる人向けになります。

 

一方、十全大補湯も胃腸の働きを改善させる効果はありますが、含まれている生薬に胃もたれを起こしやすいものがある為、胃腸がひどく弱っている場合には適しません。

 

ですが、貧血気味などの肉体的な症状を改善させる効果は補中益気湯よりも十全大補湯の方が優れていると考えられます。

 

またいずれも体力増強の効果はありますが、感冒などの炎症性疾患の急性期や増悪期の使用には向いておらず、逆に悪化させてしまうこともあるため、服薬には注意が必要です。

まとめ

 

補中益気湯は胃腸が弱っていて体力低下している人で、精神的にも肉体的にも疲れている人向け。

 

十全大補湯は体力低下が著しく、精神的にも肉体的にも疲れがたまっている人向けで、胃腸がひどく弱っている人には向かないものです。

 

どちらも感冒などの急性期・増悪期には悪化の恐れがあるため使用に注意が必要です。

 

現代の医療では、どちらも体力補強のための漢方薬としか考えられておらず、使い分けについてもあまり考えられていないことが多い印象を受けます。証を確認し、最も効果的に使用できるものを選択していくことが求められます。

 

それでは補中益気湯と十全大補湯の違いと使い分けについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。