今回は漢方薬の半夏厚朴湯の作用機序や副作用、特徴について解説します。
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半夏厚朴湯の名前の由来
半夏厚朴湯は小半夏加茯苓湯に厚朴と蘇葉が加わり、5種類の生薬(次項参照)が配合されてます。含まれる生薬のうち、主薬の半夏と厚朴を組み合わせて半夏厚朴湯と命名されています。
半夏厚朴湯の作用機序と特徴
半夏厚朴湯はのどや胸の違和感をもつ神経症状に対して使用されることが多い漢方薬であり、含まれている生薬は半夏(ハンゲ)、茯苓(ブクリョウ)、厚朴(コウボク)、蘇葉(ソヨウ)、生姜(ショウキョウ)です。
漢方薬の使用ではすべて、患者の状態を判断する証を用いて適応を判断します。半夏厚朴湯の証は虚証~中間証、寒証~中間証、気滞を呈している患者ですので、どちらかといえば体力がなくて華奢な体格であり、冷え性で代謝が低下しているタイプの患者さんに向いています。
添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果/用法及び用量
気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症
不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、神経性食道狭窄症、不眠症用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
ツムラ半夏厚朴湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
半夏厚朴湯の作用機序に関しては、添付文書への記載はありません。インタビューフォームにも該当資料なしと記載されています。
ただ東洋医学的には、理気作用と言われる気の流れを改善する作用によって効果を発揮しているとされます。気が停滞することで、胸部やのどのあたりに何かがつかえているような体感を得ることがあり、気の循環を改善することにより症状の改善を目指します。
制吐作用や健胃作用を持つ生薬が配合されていることから、吐き気を伴った胃症状にも効果を発揮するようです。生姜が制吐作用や鎮咳作用を持っており、吐き気や咳、しわがれ声に対して効果を発揮しています。
科学的な作用機序は正確に解明されているものではありませんが、研究の成果によりいくつかの可能性が示唆されています。まずは脳内のセロトニン・ノルアドレナリン量及びドパミン量の増加を介して作用を発揮しているというものです。
これらのモノアミンと言われる脳内ホルモンは、うつ病の治療薬において標的とされている部分であり、モノアミンの低下によってうつ症状が生じていると考えられています。半夏厚朴湯では他の抗うつ薬のように受容体を介することなくモノアミン量を改善することにより神経症状を改善しているようです。
含有している生薬の半夏がセロトニンの代謝を低下させることで、結果としてセロトニン量を増加させ、半夏・蘇葉がドパミンの代謝も低下させてドパミン量の増加に寄与しています。
半夏厚朴湯はセロトニンよりもドパミンの代謝に対して顕著に反応することが判明していますが、本来であればドパミンアゴニスト(ドパミン受容体を刺激する薬)で催吐作用が起きてしまうことからもわかるように、ドパミン量が増えるということは制吐作用にはつながりません。
制吐作用や食道狭窄に対する効果は、サブスタンスPという嚥下に作用する神経物質が寄与しています。半夏厚朴湯を服用することにより、サブスタンスPが作用するサブスタンスPニューロンが活性化し、嚥下困難や食道狭窄などの症状を改善すると考えられています。
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半夏厚朴湯の副作用
半夏瀉心湯では副作用が明確になる調査は行われていません。そのため、その発現頻度に関するデータも存在しておらず、どのくらいの頻度で起こるのかが不明です。
しかしながら、副作用と思われるものはほぼ報告されておらず、過敏症状である発疹や発赤などが唯一報告されているのみで、安全性が高い医薬品であると言えるでしょう。過敏症状と思われる症状が発生した場合、速やかに投薬を中止する対応が求められます。
半夏厚朴湯の飲み方と注意事項
半夏厚朴湯はもともと液剤だったものを抽出して散剤にしたものです。ですので、服用時にはそれに即してぬるめのお湯で服用したほうが効果的だと言われています。約60度のお湯が最も効果的であり、あまりに熱いお湯では有効成分が揮発してしまうので注意しなければいけません。
妊娠中の使用に関しては、添付文書では安全性が確立していないために有益性がある場合のみの投与とされていますが、日本臨床漢方医会の妊娠中の治療や漢方医学の原典である「金匱要略」を調べてみると、妊娠中の症状に対して多く使用されており、安全性が高いことがわかります。
つわりなどの吐き気の症状や、妊娠に伴ってうつ症状が発生してしまった場合になどに半夏厚朴湯は使用されていますが、使用に関しては念のため、医師の指示を仰ぐようにして下さいね。
それでは半夏厚朴湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。