今回は漢方薬の桂枝茯苓丸について解説します。

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桂枝茯苓丸の名前の由来

 

桂枝茯苓丸は構成成分のうち、初出する桂皮(ケイヒ)、茯苓(ブクリョウ)を組み合わせて命名されています。ただこの2つが主薬ということではなく、いずれも主薬級の働きをしています。

桂枝茯苓丸の作用機序と特徴

 

桂枝茯苓丸は女性の更年期障害などに対して多く使用される漢方薬で、含有されている生薬は桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、桃仁(トウニン)、茯苓(ブクリョウ)、牡丹皮(ボタンピ)です。

 

漢方薬ではすべて、患者の状態を判断する証をもとに使用の判断を下します。桂枝茯苓丸の証は陽証・実証で、気逆・瘀血となります。

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添付文書には以下のように記載されています。

効能又は効果

体格はしっかりしていて赤ら顔が多く、腹部は大体充実、下腹部に抵抗のあるものの次の諸症
子宮並びにその付属器の炎症、子宮内膜炎、月経不順、月経困難、帯下、更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こり等)、冷え症、腹膜炎、打撲症、痔疾患、睾丸炎

用法及び用量

通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

ツムラ桂枝茯苓丸エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用

 

適応の「子宮並びにその付属器の炎症、子宮内膜炎、月経不順、月経困難、 帯下、更年期障害(頭痛、めまい、のぼせ、肩こり等)、冷え症、腹 膜炎、打撲症、痔疾患、睾丸炎」。これらの症状は気が体内で滞っており、血の巡りも併せて悪いことにより発生していると考えられています。

 

桂皮は芳香性健胃効果が主な作用となりますが、その他にも体内の熱を放出させ、新陳代謝を高める効果があります。芍薬は痛みを抑え、血管を拡張することができ、茯苓は体内の水分バランスを整えることができます。牡丹皮・桃仁では血のめぐりを改善するため、これらが複合的に作用を発揮していきます。

 

薬理作用としては、更年期障害における末梢性のホットフラッシュに特異的に効果を発揮することが研究されています。更年期障害のホットフラッシュについては様々な原因が考えられており、その原因の一つがCGRPの感受性です。

ホットフラッシュ:更年期障害のうちのぼせ、ほてり、発汗などの症状を指す・CGRP(カルシトニン関連遺伝子ペプチド):血管拡張作用、心拍数減少作用などがあるとされる末梢性の生体物質。血管拡張により炎症反応や片頭痛にも作用していると言われている

 

エストロゲンの低下に伴って血管拡張効果を持つCGRPの分泌が低下し、その結果末梢血管のCGRP感受性が増大してしまうことが知られています。その後、何らかの原因によってCGRPの分泌が一時的に亢進してしまうことで末梢血管が過剰に拡張し、更年期障害に特有のホットフラッシュが発生するとされているのです。

 

一般的にホットフラッシュに対する治療では、エストロゲンを補充することでCGRPの分泌を正常化し、結果として血管のCGRPへの反応も正常なものに整えるというものです。桂枝茯苓丸でも同じようにCGRPの分泌を正常に整えることで、結果として末梢血管のCGRP活性を整えていると考えられます。

 

桂枝茯苓丸がエストロゲンよりも優れている点は、エストロゲンではホルモンの補充によって二次的にCGRPの分泌を改善するのに対し、桂枝茯苓丸ではエストロゲンを介さずにCGRPの分泌を改善している点です。

 

エストロゲンを補充していくことで、静脈血栓症や女性特有の癌の発生などの危険性が高まりますが、桂枝茯苓丸ではそれらの危険性がないというのは、素晴らしい利点となります。ただし、証が合っていない場合には、ほぼ効果を実感することはなく、使用する医師の見立てが重要な因子となってきます。

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桂枝茯苓丸の副作用

 

桂枝茯苓丸では副作用が明確になる調査は行われていません。そのため、その発現頻度に関するデータも存在しておらず、どのくらいの頻度で起こるのかが不明です。重大な副作用の報告もあるため、使用する際にはその兆候となる症状に注意しなければいけません。

 

重大な副作用として、肝機能障害・黄疸の報告が存在しています。肝機能検査値の異常なども伴って発生しますので、異常が現れた場合には服薬を中止する必要があります。

 

その他の副作用として、発疹・発赤などの過敏症状、食欲不振、胃部不快感、悪心、下痢等の消化器症状の報告があります。過敏症状が発生した場合には、速やかに服用の中止が求められます。

桂枝茯苓丸の飲み方と注意事項

 

桂枝茯苓丸はそれぞれの生薬を粉砕・混合して丸薬として作られた薬です。販売されている形状は粉薬がほとんどですが、その効果に変わりはありません。最初の形が丸薬ですので、漢方薬でよく言われているお湯に溶かして服用するということをする必要はありません。

 

妊娠中の桂枝茯苓丸の使用はあまりオススメできないものであり、含有されている生薬である桃仁、牡丹皮により、早流産を引き起こしてしまう危険性があります。ネットでも購入することができますが、自己判断で服用することは避けましょう。

 

また他の漢方薬を使用している際には、生薬成分の重複に注意しなければいけません。過剰に重複することで、副作用の発現頻度が高まってしまう可能性があります。医師、薬剤師にお薬手帳を提示するのを忘れずに。

 

それでは桂枝茯苓丸については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。