kou今回は慢性C型肝炎の経口治療薬であるダクルインザ、スンベプラについてです。

 

この2剤は必ず併用され、また副作用等により中止する際も同時に中止する事になっています。そのためこの記事では上記2剤について、またC型慢性肝炎についても簡単にお話していきます。

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ダクルインザ・スンベプラとは?

 

まず名前の由来からいきましょう。ダクルインザの一般名はDaclatasvir:ダクラタスビル。英語でcleanseは「除去する」という意味です。ウイルスを除去するという意味を込めて、両者を組み合わせDaklinza:ダクルインザと命名されました。

 

スンベプラの一般名はAsunaprevir:アスナプレビルです。ウイルス学的著効はSustained Virologic Response。各頭文字を取った略称SVR。AsunaprevirとSVRを組み合わせてSunvepra:スンベプラと命名されました。

 

ダクルインザとスンベプラの作用機序をまとめると「HCVが増殖する時に必要なタンパク質の働きを邪魔することでウイルスを除去する」 となります。

 

それではまず、C型慢性肝炎についてお話していきましょう。

C型慢性肝炎とは?

 

何らかの感染経路(血液感染)によりC型肝炎ウイルス(HCV)に感染すると肝臓に炎症が起こります。この炎症が続くことで肝臓の細胞が壊れて働きが低下してしまう、これがC型慢性肝炎です。

 

C型慢性肝炎のやっかいな所は自覚症状に乏しい事。HCVに感染すると7割は自然治癒せず、持続的に感染します。特に感染初期は症状が出現しにくいため、症状を自覚した時には病気が結構進行しているケースもあります。

 

C型慢性肝炎が治療されずにいると肝硬変や肝臓がんを引き起こす可能性があります。実際肝臓がんの方の7~8割がC型慢性肝炎であったと言われており、早期発見・治療が望まれます。

 

■HCVの種類

遺伝子型 日本人における割合 インターフェロンの有効性
1a ほぼゼロ 効きにくい
1b 約7割
2a 約2割 効きやすい
2b 約1割

C型肝炎は遺伝子の型(ジェノタイプ)により1a、1b、2a、2bの4つに大きく分類され、1bが日本人に多いとされ、ジェノタイプ1(1aと1b)はインターフェロンが効きにくいと言われています。

 

ダクルインザ、スンべプラの適応はセログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善となっており、インターフェロンの治療歴を問わず使用可能となりました。

 

ちなみに代償性肝硬変とは、肝硬変の中でもある程度肝臓の機能が残っている状態を意味します。肝細胞が壊れていってもまだ生きている肝細胞が代わりとなるまさに代償、日本語そのままですね。

 

これが進行すると非代償性肝硬変となります。代償性肝硬変の「非」、つまり否定ですから、肝細胞が多く壊れてしまい残った細胞が少ないため代わりが効かない、つまり肝臓が正常に機能しなくなった状態を言います。

 

ダクルインザ・スンベプラ併用療法はインターフェロンを使用できない方、副作用で脱落された方、効果不十分であった患者様にも8割以上が有効であったとされており、非常に期待される薬剤となっています。

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ダクルインザ・スンベプラの作用機序と特徴

 

ダクルインザとスンベプラは直接作用型抗ウイルス剤(Direct-acting Antiviral Agents:DAA)と呼ばれます。文字通り直接HCVに作用することで排除する薬です。

 

HCVはRNAウイルスです。細菌は自分自身で増殖できますが、ウイルスはそれができません。例えれば細菌が「設備の整った工場」であり、ウイルスは「設計図(RNA)を持つがそれを作る設備がない」などと言われることがあります。

 

つまり細菌は栄養(材料)さえあれば工場内で増殖できます。しかしウイルスは設計図しかないので、材料がいくらあっても設備がないため作ることができないのです。

 

そこでウイルスは生きた細胞に侵入し、設計図をすり替えます。すると工場ではその設計図を元に増殖に必要なタンパク質や酵素などが作られ、結果としてウイルスが増殖する事になります。

 

ダクルインザは増殖に必要なタンパク質のうちNS5Aの機能を抑え、スンベプラはNS3/4Aプロテアーゼという酵素の働きを抑える作用を持ちます。これによりHCVの増殖が抑えられるのです。

 

ダクルインザとスンベプラは併用することで効果が高まります。自己判断で服用を中止してはいけません。

 

服用期間は24週間(半年)となっており、治療終了後に効果判定を行います。

ダクルインザ・スンベプラの副作用

 

ALTやAST、ビリルビン等の肝機能データの増加や頭痛、発熱、鼻咽頭炎等があります。ちなみにALTが基準値上限の10倍以上になった場合は即中止となります。

 

基本的に投与12週までは少なくとも2週毎、以降は4週毎に肝機能検査を行うことが義務付けられていますから、異常があっても迅速に対応できるでしょう。

ダクルインザ・スンベプラの注意事項

 

動物実験ですが、胎児の死亡や催奇形性が報告されており妊婦は服用することができません。禁忌です。妊娠する可能性のある方についても服用中、投与終了後5週間は避妊する必要があります。

 

また服用中は授乳は中止します。動物実験で母乳中への移行が報告されているためです。

 

中等度以上の肝機能障害、非代償性肝硬変の方にも使用することはできません。血中濃度が大幅に上昇する事が報告されています。

 

併用禁忌の薬についてはかなりの数があります。以下にダクルインザとスンベプラまとめて記載します。

・抗結核薬
リファジン(リファンピシン)
ミコブティン(リファブチン)

・抗てんかん薬
アレビアチン(フェニトイン)
テグレトール(カルバマゼピン)
フェノバール(フェノバルビタール)

・副腎皮質ホルモン
デカドロン(デキサメタゾン)

・健康食品
セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品

・精神神経用剤
モディオダール(モダフィニル)

・肺動脈性肺高血圧症治療薬
トラクリア(ボセンタン)

・免疫抑制剤
サンディミュン(シクロスポリン)

・抗不整脈薬
タンボコール(フレカイニド)
プロノン(プロパフェノン)

・抗HIV薬
ノービア(リトナビル)
レイアタッツ(アタザナビル)
クリキシバン(インジナビル)
インビラーゼ(サキナビル)
プリジスタ(ダルナビル)
ビラセプト(ネルフィナビル)
レクシヴァ(ホスアンプレナビル)
カレトラ(ロピナビル/リトナビル)
ストックリン(エファビレンツ)
インテレンス(エトラビリン)
ビラミューン(ネビラピン)
スタリビルド(コビシスタット)

・アゾール系抗真菌薬
イトリゾール(イトラコナゾール)
ジフルカン(フルコナゾール)
プロジフ(ホスフルコナゾール)
ブイフェンド(ボリコナゾール)
フロリード(ミコナゾール)

・マクロライド系抗生物質
クラリス(クラリスロマイシン)
エリスロシン(エリスロマイシン)

・カルシウム拮抗薬
ヘルベッサー(ジルチアゼム)
ワソラン(ベラパミル)

ものすごい数ですね。併用注意の薬もかなりあります。必ず服用中の薬、健康食品について主治医に伝えるようにしましょう

 

またグレープフルーツ(ジュース)の摂取は禁止です。成分のフラノクマリンにより肝臓の薬物代謝酵素CYP3Aの働きが邪魔される事でダクルインザとスンベプラの血中濃度が上昇する可能性があります。

 

服用中どうしても柑橘系が摂りたい方はフラノクマリンを含まないレモンや温州みかん、バレンシアオレンジ、かぼす等で我慢しましょう。

 

それではダクルインザ・スンベプラについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。