今回は漢方薬の大柴胡湯(ダイサイコトウ)について解説していきます。

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大柴胡湯の名前の由来

 

配合されている8種類の生薬(次項参照)のうち、柴胡を主薬とする柴胡剤の一つであり、小柴胡湯と比較してより実証に近い病態に適応する処方ということで大柴胡湯と命名されています。

大柴胡湯の作用機序と特徴

 

大柴胡湯は肥満症や高血圧、肝機能障害に対して使用されている漢方薬で、含まれている生薬は柴胡(サイコ)、黄芩(オウゴン)、半夏(ハンゲ)、枳実(キジツ)、大黄(ダイオウ)、芍薬(シャクヤク)、生姜(ショウキョウ)、大棗(タイソウ)です。

 

漢方薬はすべて、その適応を見るために患者の個別の体質を表している証によって判断します。

 

大柴胡湯が適応する証は、実証・熱証・気滞で、体力が充実していて熱がこもっており、気持ちがふさいでイライラするタイプの人に向いています。

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添付文書には以下のように記載されています。

効能又は効果
比較的体力のある人で、便秘がちで、上腹部が張って苦しく、耳鳴り、肩こりなど伴うものの次の諸症:
胆石症、胆のう炎、黄疸、肝機能障害、高血圧症、脳溢血、じんましん、胃酸過多症、急性胃腸カタル、悪心、嘔吐、食欲不振、痔疾、糖尿病、ノイローゼ、不眠症

用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

ツムラ大柴胡湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用

 

大柴胡湯は柴胡を効果の中心に置き、その他んp生薬は柴胡を補助するために配合されています。

 

大柴胡湯は内臓の熱を取り除き、気の循環を促すことで症状を緩和する作用を持ちますが、小柴胡湯と比較して体力を補う効果は少なくなり、消炎効果や下剤効果を増強しています。

 

漢方薬は科学的な作用機序が解明されていないことが多いものですが、大柴胡湯に関しては研究が進められており、その作用機序の多くが判明しています。

 

まず肥満に対する効果として、肥満細胞の分化・増殖を調整するPPARγ(ピーパーガンマ:ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)に結合してその作用を促進し、皮下脂肪の増殖を抑制することがわかっています。

 

便秘に対する効果は大黄や枳実が中心となり、それらに含まれている成分が腸管を刺激することによって、蠕動運動を促進させることで発揮しています。

 

大柴胡湯を服用すると痩せると言われていますが、これはこの2つの効果に起因するものと思われます。

 

また、障害性をもつ活性酸素の合成を抑制することで抗炎症作用を発揮し、ヒスタミンの分泌を抑制することで抗アレルギー作用も発揮します。

 

そして肝臓におけるコレステロールや中性脂肪の生合成を抑制し、さらには悪玉コレステロールを運搬する役割を持っているApoB(アポリポ蛋白質B100)の分泌量を低下させることも知られています。

 

これによりコレステロールが減少し、それが原因となる胆石の合成も抑制することができるのです。

 

また、心筋梗塞のリスクについて、以前はコレステロールの”量”に注目して治療が行われていました。

 

しかし現在では悪玉コレステロールと善玉コレステロールそれぞれを運搬するApo(アポリポ蛋白)の分泌量比率(アポリポ蛋白質B100(ApoB)/アポリポ蛋白質A1(ApoA1))がより高精度に評価できることがわかっています。

 

ApoBを低下させる医薬品は西洋薬では発売されていないため、大柴胡湯はその点でも今後重要な漢方薬となるかもしれません。

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大柴胡湯の副作用

 

大柴胡湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。

 

重大な副作用として、肝機能障害や間質性肺炎について報告されています。肝機能障害では、肝機能検査値異常や黄疸、強い倦怠感などの症状が兆候となり、間質性肺炎では発熱、咳嗽、呼吸困難などが兆候となりますので覚えておきましょう。

 

その他の副作用として、食欲不振や下痢、腹痛などの消化器症状が報告されています。服用中にこれらの症状が現れた場合は、医師、薬剤師に伝えるようにして下さいね。

大柴胡湯の飲み方と注意事項

 

大柴胡湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが気づいた時点で服用しても大丈夫です。

 

大柴胡湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。

 

そのため、服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。

 

含有生薬の大黄が過量になってしまうと、下痢や腹痛などの消化器症状を誘発してしまう可能性が高くなります。大黄の成分はセンノシドです。併用薬にセンノシドが含まれないように注意しましょう。

 

妊娠中、または授乳中である場合には、服薬は控えるべき漢方薬です。妊婦が服用すると、含有している大黄と枳実が子宮の収縮を促してしまい、早流産を起こす危険性があります。

 

授乳中の服用に関しても、大黄の有効成分が母乳中に移行してしまうため、乳児の下痢を引き起こす可能性が否定できません。

 

もし使用する際には、自己判断での服用は避け、必ず医師の判断のもと服用するようにしてください。

 

それでは大柴胡湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。