今回はアミノグリコシド系抗菌薬についてお話していきます。
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アミノグリコシド系抗菌薬の作用機序は?
細菌が増殖するためにはタンパク質の合成が必要であり、タンパク質の合成はリボソームと呼ばれる部分で行われています。
リボソームはいわばタンパク質製造工場なのです。つまり工場であるリボソームの働きを抑えてしまえば細菌の増殖は抑えられることになります。
これがアミノグリコシド系抗菌薬の作用機序です。
リボソームは2つのサブユニット(種類)から構成されており、生物学的分類により組成が異なります。原核生物と真核生物について簡単にお話していきましょう。
原核生物とは?
染色体がほぼ裸の状態で細胞内に存在し、核膜がありません。
原核生物は更に真正細菌と古細菌に分かれますが、一般的に”細菌=真正細菌”と考えて頂いてよいかと思います。
具体的には細菌類や藍藻類などが該当します。
原核生物には小さい30Sサブユニット、大きい50Sサブユニットがあり、2つを合わせて70Sリボソームといいます。
「30と50でなんで70なのか?」という疑問が生まれると思いますが、これは沈降速度により決められているため、理屈抜きに覚えて下さい。もう少し踏み込んで勉強したい方は他のサイトをご覧下さい。
真核生物とは?
核膜で囲まれた明確な核を持ちます。
真核生物のリボソームは原核生物よりも少し大きく、小さい40Sサブユニットと大きい60Sサブユニットからなり、あわせて80Sリボソームといいます。
なぜ100ではなく80なのかは上記と同様の理由です。細菌類、藍藻類以外の全ての生物が該当します。
アミノグリコシド系抗菌薬の特徴
アミノグリコシド系抗菌薬のうちストレプトマイシンは30Sのみに結合し、他は30Sと50S両方に結合します。これによりタンパク合成が阻害(伸長過程を阻害)され、細菌は死滅するのです。
真核生物がもつ40S、60Sサブユニットには作用しないということは、ヒトや真菌には無効、つまり細菌に選択的に作用することができるという事です。ただしヒトや真菌への毒性はゼロではありませんので注意が必要です。
アミノグリコシド系抗菌薬は殺菌性抗菌薬に分類されますが、グラム陽性菌にはあまり効果は期待できません。嫌気性菌に対しては無効です。ただし緑膿菌を含むほとんどのグラム陰性桿菌に対しては有効です。
アミノグリコシド系抗菌薬は消化管から吸収されず、腎排泄がメインのため、尿路感染症には適していると言えるでしょう。肺への移行は悪く、肺炎に対して使用する機会はあまりないかと思われます。
ちなみにグラム陽性菌に対して用いる場合ですが、MSSA(メチシリン感受性黄色ブドウ球菌)、腸球菌、連鎖球菌等が起因菌の感染性心内膜炎や血流感染の際、βラクタム系と併用するなどが挙げられます。
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アミノグリコシド系抗菌薬の副作用
アミノグリコシド系抗菌薬は副作用に注意が必要です。
代表的なのは腎機能障害と第8脳神経障害(眩暈、耳鳴、難聴等)です。腎機能障害は可逆性ですが、第8脳神経障害は不可逆的です。
・可逆的とは?
原因薬剤を中止すれば元に戻る事
・不可逆的とは?
中止しても元に戻らない事
家族歴(家族で既往歴のある場合)、バンコマイシンやNSAIDS等の腎毒性のある薬剤との併用、基礎疾患として腎機能障害がある場合、高齢者等は気を付ける必要があります。
またグリコペプチド系と同様、安全域が狭いため、副作用を予防するためにも治療薬物モニタリング(Therapeutic Drug Monitoring:TDM)を実施する事が望ましいです。
アミノグリコシド系抗菌薬は濃度依存
アミノグリコシド系抗菌薬は濃度依存、つまり最大限に効果を発揮するためには最高血中濃度を十分に上げる事が必要となります。具体的には「1回量を多くして、投与回数を減らす」という処方の仕方になります。
βラクタム系のように1日3回に分割みたいな使い方では効果が低下し、下手をすると副作用だけ出現するという最悪の自体に陥る可能性があります。
最大の効果を生み、副作用を最小限に抑える投与方法を上で書いたTDMで模索するのです。
それではアミノグリコシド系抗菌薬ついては以上とさせて頂きます。最後まで読んでいただきありがとうございました。
・出典
改訂版 抗菌薬TDMガイドライン