今回は漢方薬の女神散(ニョシンサン)について解説します。
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女神散の名前の由来
女神散は元は安栄湯と呼ばれていましたが、婦人の血証(血の道症)によく効くことから江戸時代の漢方医、浅田宗伯により女神散と命名されました。
女神散の作用機序と特徴
女神散は月経不順や更年期障害、不安症、のぼせに良く用いられている漢方薬です。
含まれている生薬は香附子(コウブシ)、川芎(センキュウ)、白朮(ビャクジュツ)、当帰(トウキ)、黄芩(オウゴン)、桂皮(ケイヒ)、人参(ニンジン)、檳榔子(ビンロウジ)、黄連(オウレン)、甘草(カンゾウ)、丁子(チョウジ)、木香(モッコウ)です。
メーカーによっては白朮に代わって蒼朮を配合している例がありますが、本来の白朮を用いた漢方薬の方が効果的であると言えるでしょう。
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東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。
女神散に適している証は中間証・血虚・気滞であり、体力は中くらいで顔色が悪く貧血気味、気分がふさいでイライラする人に向いている漢方薬です。
マタニティブルー(産後うつ)にも効果的で、気分が沈んで悲しくなったり、イライラしたりする場合には効果的に作用します。基本的には女性に対して用いられる漢方薬ですが、証が合っていれば男性にも効果を発揮できる漢方薬です。
漢方薬では科学的な解明がされていないものが多く、女神散も例外ではありません。
女神散として配合された生薬が体内でどのように作用して効果を発揮しているのか、明快な回答の出る研究がされていないのが現状です。そのため、配合されている生薬の効果・効能から、その作用を紐解いていくしかありません。
女神散では、のぼせやめまいに対する効果を前提として、自律神経障害や血の道症(月経不順や不正出血など)を改善するための生薬が配合されており、すべての生薬が相互に補助し合うことによってその効果を発揮しています。
女神散の中心となる生薬は桂皮で、のぼせを解消するために効果を発揮しています。それに加えて香附子・丁子・木香が気の循環を改善し、当帰・川芎が血の循環を改善します。
檳榔子は自律神経に働きかけて調律効果を発揮し、人参・白朮・甘草で体力の補強と精神面の安定を助け、加えて黄連が不安症やイライラなどの解消に作用します。
黄芩は殺菌効果を発揮しながら腹部のはりや下痢・嘔吐を改善することが可能で、抗酸化作用によってその他の生薬の働きを補助しています。
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女神散の副作用
女神散では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。
低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。
その他の副作用として、食欲不振や悪心・下痢などの消化器症状、発疹や掻痒・蕁麻疹などの過敏症状の報告があります。服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。
女神散の飲み方と注意事項
女神散は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、副作用の可能性がわずかに上昇してしまいますが、毎回でなければ気づいた時点で服用しても大丈夫です。
女神散は散剤として調整された漢方薬ですので、お湯に溶かして服用する必要はありません。
有効成分の重複には注意を要するものがあり、甘草を含む漢方薬の併用には注意しなければいけません。甘草の有効成分として含有されているグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があります。
妊娠中の使用に関しては、添付文書で「有益性が危険性を上回る場合に使用すること」となっていますが、産前産後の神経症への使用や、一部では切迫早産・流産の治療薬(リトドリン塩酸塩)の副作用軽減の目的でも用いられる場合がある漢方薬であり、安全性は高いと言えるでしょう。
ただし、医師の指示に基づいて使用することが原則であり、自己判断での使用は避けて下さいね。
それでは女神散については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。