80歳以上の高齢者が死亡する原因の上位をご存知でしょうか?

 

1位、2位は悪性新生物(各種ガン)と心疾患ですが、3位には肺炎がランクインしています。

 

高齢者の場合、飲み込む力の低下と免疫機能の低下があるために、誤飲によって気管支に飲食物が混入して肺炎を起こしてしまう危険性が高くなります。

 

肺炎は感染症の一種であり、免疫機能の低下している高齢者が肺炎になってしまうとその改善は大変困難です。そのため、肺炎は罹患してから治療するよりも、罹患しないように予防することが大切になります。

 

そんな中、平成26年10月1日から、高齢者を対象として肺炎球菌ワクチンが定期接種となりました。そこで今回は2種類ある肺炎球菌ワクチンの違いについて見ていきたいと思います。

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ニューモバックスNPとプレベナー13の違い

肺炎球菌ワクチンにはニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン:PPSV23)プレベナー13(13価肺炎球菌結合型ワクチン:PCV13)の2種類の製剤が存在しています。

 

しかし、そもそも効果のある菌種から違いますので、それぞれの特徴について確認しておきましょう。

効果のある菌種の違い

肺炎を引き起こす肺炎球菌には、かなりの数の種類が存在しています。特長により分けられたその種類は90種以上となります。

・ニューモバックスNPに含まれる23種類

1、2、3、4、5、6B、7F、89N、9V、10A、11A、12F、14、15B、17F、18C、19A、19F、20、22F、23F、33F

・プレベナー13に含まれる13種類

1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、19F、23F)

※青字はニューモバックスのみ、赤字はプレベナー13のみ含まれます。

ニューモバックスが効果のある23種類が日本人の肺炎原因の70%を占めているという研究結果がありますが、一方にしか配合されていない菌の種類も存在しているため、どちらが優れているとは一概には言い難いのが現状です。

ワクチンの種類の違い

ワクチンの種類にも違いがあり、ニューモバックスNPは多糖類(ポリサッカライド)ワクチン、プレベナーは蛋白結合ワクチンとなっています。

 

それぞれのワクチンにより形成される免疫の形が異なっており、予防効果にも違いがあります。

投与経路の違い

ニューモバックスNPは筋注または皮下注、プレベナー13は筋注のみとなっています。

 

ただしプレベナー13は小児に投与する場合は皮下注となりますので注意が必要です。

接種年齢と投与間隔の違い、助成の有無

接種できる年齢ですが、ニューモバックスNPは2歳以上であれば接種することが可能です。

 

ただ国の助成対象になるのは65歳以上で、そこから5年ごとに予防接種を受けるわけですが、助成を受けることができるのは初回の1回だけとなっています。

 

ちなみに5年ごとというのは、ワクチンの効果期間を考慮したもので、5年ごとの接種がワクチンの効果を継続することにつながるからです。

 

一方プレベナー13は生後2か月以上6歳未満の人と65歳以上の人が接種可能です。

 

プレベナー13が65歳以上の人に使用できるようになったのは平成26年度と最近のことです。

 

予防接種の助成を受けられるのは小児に限定されていますが、今後の研究や使用状況などによっては高齢者の接種助成の対象となることも考えられます。

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現段階で推奨されている接種方法

米国予防接種諮問委員会(Advisory Committee on Immunization. Practices:ACIP)

が推奨している肺炎球菌ワクチンの接種方法として、65歳以上であればニューモバックスNPとプレベナー13両方の接種が勧められています。

 

最初にプレベナー13を接種し、そこから1年以上の間隔を空けてニューモバックスNPの接種をすることが良いとされており、同時接種はするべきではないとされています。

 

ニューモバックスNPを既に接種している場合にも、1年以上の間隔を空けてプレベナー13の接種をするべきとの見解です。

 

予防効果のある菌種に違いがあり、同じ菌種に対しては予防効果がさらに高くなるため、当然の推奨内容と言えるでしょう。

 

ですが、その結果は欧米での研究結果を反映しているのみで、日本を含むアジアでの効果を保証したものではないという点で注意が必要です。

 

日本呼吸器学会ワクチン検討WG委員会及び日本感染症学会ワクチン委員会からなる合同委員会も、ACIPの推奨内容を全面的に受け入れるべきではないとの見解です。

 

今後日本での研究が進み、その効果が実証されることとなれば日本での状況は変わってくると思われます。

肺炎球菌ワクチンのまとめ

すでに現代は、病気は治療するものではなく予防するものに偏移しています。予防接種によって防げる病気は防ぐ。それは個人にとっても政府にとってもメリットがあることです。

 

ワクチンによって病気に苦しむことが少なくなり、医療費を減らすことができます。

 

正しい知識を持って予防接種を活用していきましょう。もちろん接種にあたってはかかりつけの医師に相談の上行って下さいね。

 

今回の肺炎球菌ワクチンについては、前述のACIPにより2018年に再評価が実施されることになります。その再評価の内容を顧みて、また記事を更新したいと思います。

 

それではニューモバックスNPとプレベナー13の違いについては以上とさせて頂きます。最後までご覧いただきありがとうございました。