今回は非ベンゾジアゼピン系睡眠薬のマイスリーについてお話していきます。

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マイスリーとは?

まずは名前の由来からいきましょう。

 

MY SLEEP(私の睡眠)のPを取って『Myslee:マイスリー』と命名されました。一般名はゾルピデムです。

 

マイスリーは超短時間型の睡眠薬に属します。それではまず睡眠障害と睡眠薬のタイプについてお話していきます。

睡眠障害と睡眠薬のタイプについて

タイプ 症状
入眠障害

夜なかなか寝付くことができない

寝るのに30分~1時間錠かかる

中途覚醒 夜中に何度も目が覚めてしまう
熟眠障害 どれだけ寝ても寝た気がしない
早朝覚醒 朝早く目が覚めて、その後寝付けない

上の表をご覧下さい。睡眠障害は症状により4つのタイプに分類できます。

 

また睡眠薬は半減期により大きく4つに分類でき、これが作用時間の目安となります。

半減期とは?

薬の血液中の濃度が最高になった後、それが半分の濃度になるまでにかかる時間

タイプ 主な睡眠薬 一般名 半減期(時間)
超短時間型 ハルシオン トリアゾラム 2~4
マイスリー ゾルピデム 2
アモバン ゾピクロン 4
ルネスタ エスゾピクロン 5~6
短時間型 レンドルミン ブロチゾラム 7
リスミー リルマザホン 10
エバミール、ロラメット ロルメタゼパム 10
中間型 エリミン ニメタゼパム 21
ロヒプノール、サイレース フルニトラゼパム 24
ユーロジン エスタゾラム 24
ベンザリン、ネルボン ニトラゼパム 28
長時間型 ドラール クアゼパム 36
ソメリン ハロキサゾラム 85
ダルメート、ベノジール フルラゼパム 65
非ベンゾジアゼピン系 ロゼレム ラメルテオン 1
ベルソムラ スボレキサント 10

代表的な睡眠薬を分類しました。処方する際は睡眠障害のタイプによって睡眠薬を使い分けます。2種類以上併用する場合もあります。

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マイスリーの作用機序と特徴

マイスリーはベンゾジアゼピン系ではなくイミダゾピリジン系に分類され、非ベンゾジアゼピン系と呼ばれます。

※以下ベンゾジアゼピンをBZDと表記します。

 

ただ非ベンゾジアゼピン系とはいえ、作用機序の基本的な考え方はBZD系とほとんど同じです。

 

睡眠障害は神経系の興奮により引き起こされます。ということはその興奮を鎮めてあげればいい事がわかりますよね。

 

そこで注目するのがγアミノ酪酸(以下GABA:ギャバ)と呼ばれる物質です。

 

GABAは脳内に存在し、その作用から抑制性神経伝達物質と呼ばれています。

 

GABAはGABA受容体に結合することで、通常は細胞の外にある塩化物イオン(Clイオン)が細胞内に進入します。

 

Clイオンはマイナスに帯電しており、細胞内がマイナスに傾いていくと興奮が伝わるのが抑えられ、私達は眠たくなるというわけです。

 

睡眠障害の患者様はGABAがGABA受容体に結合する能力が低下しているとされており、その能力を高めてあげればいいことがわかりますね。

 

そこで登場するのがマイスリーです。

 

マイスリーはBZD受容体と結合する事でGABAをGABA受容体に結合しやすくします。これを感受性を高めるといいます。

 

その結果、細胞内にClイオンが入るのがどんどん促進され、興奮が伝わりづらくなり眠たくなるわけですね。

 

ちなみに、BZD受容体にはω(オメガ)1とω2受容体の2つがあります。

ω1受容体:主に催眠鎮静作用に関与

ω2受容体:主に抗不安作用や筋弛緩作用に関与

通常のベンゾジアゼピン系はω1とω2両方に作用しますが、マイスリーはω1受容体に選択的に作用するという特徴があります。

 

つまりマイスリーは催眠鎮静作用に特化しており、抗不安作用や筋弛緩作用が弱いという事になります。

 

高齢者によく処方されるのは筋弛緩作用が弱いからです。

 

ただω2受容体に全く作用しないというわけではありませんので、もちろん転倒等には注意が必要となります。

 

超短時間型であるマイスリーは15~30分で効果が現れます。また、半減期が2時間であるため、主に「寝付きが悪い」という入眠障害に対して処方されます。

 

またマイスリーは肝臓で大部分が代謝されます。効果が強く現れてしまう可能性があるため、重度の肝機能障害の方には使用することができません(禁忌)。

マイスリーの効能効果・用法用量

マイスリーの効能効果・用法用量をみる

効能又は効果
不眠症(統合失調症及び躁うつ病に伴う不眠症は除く)

用法及び用量
通常、成人にはゾルピデム酒石酸塩として1回5~10mgを就寝直前に経口投与する。なお、高齢者には1回5mgから投与を開始する。年齢、症状、疾患により適宜増減するが、1日10mgを超えないこととする。

上記には「高齢者には1回5mgから」とされていますが、効果に個人差があるため、高齢者であるかどうかにかかわらず、1回5mgで基本開始することが多いです。

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マイスリーの副作用と注意事項

主な副作用にはふらつき、眠気、頭痛、倦怠感、残眠感、悪心(吐き気)などがあります。これらは睡眠薬全般にみられるものです。

 

超短時間型の薬は作用時間が短いため、翌朝への持ち越しも少ないのですが、その分反跳性不眠が出やすいです。

反跳性不眠とは?

突然服用を中止することで、服用前より強い不眠が現れること。

ただマイスリーについては超短時間型の中でも、反跳性不眠の頻度が比較的少ないとされています。

 

また、高齢者は運動失調等が出やすいため、少量から開始するのがよいかもしれません。

運動失調とは?

ろれつが回らない、動きがぎこちない、ふらふらする等の症状が現れ、中枢神経系の抑制と筋弛緩作用が原因と考えられています。

そして、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系共通の注意事項として、重症筋無力症と急性狭隅角緑内障の方には禁忌となり、使用することができません。

 

重症筋無力症に対して使用できないのは神経伝達がブロックされ筋弛緩作用が増強するため。

 

急性狭隅角緑内障に対して使用できないのは抗コリン作用による眼圧上昇作用のためです。

 

またアルコールには脳の活動を抑える作用があります。睡眠薬と一緒に飲むことで作用が増強されるため控えるようにしましょう。睡眠の質が悪くなるとも言われています。

マイスリーのジェネリック医薬品について

マイスリーのジェネリック医薬品には普通錠、OD(口腔内崩壊)錠、ODフィルム、内用液があります。

 

ここでは持田製薬から販売されている

・ゾルピデム酒石酸塩ODフィルム5mg「モチダ」

・ゾルピデム酒石酸塩ODフィルム10mg「モチダ」

についてお話していきます。

 

持田製薬はジェネリック医薬品では独自路線を貫いていますね。今回のODフィルムやバルトレックス、クラビットでは粒状錠など。

 

ちなみに当院でも全て採用になっています。

 

さて嚥下困難の方や高齢の方、水分制限がある方にも有用なこのODフィルムですが、1点注意があります。

 

それは薬剤が均一に分布していないということです(メーカー学術に確認済)。

 

例えばODフィルム10mgの製剤を半分に切断して服用しても、必ずしも5mg服用したことにはならないのです。

 

もしゾルピデムODフィルムの規格は5mgと10mgの2種類なので、ゾルピデムとして2.5mgを服用したいのならば普通錠またはOD錠で半錠に分割して対応する形になります。

 

それではマイスリーについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。

 

出典:
マイスリー錠5mg/ マイスリー錠10mg 添付文書・インタビューフォーム