今回は末梢性神経障害治療剤のメチコバールについて解説します。
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メチコバールとは?
まずは名前の由来からいきましょう。今回はわかりやすいですね。一般名のMecobalamin:メコバラミンから、Methycobal:メチコバールと命名されています。
メチコバールの効能効果、用法用量は以下になります。まずは経口製剤。
効能又は効果/用法及び用量
末梢性神経障害用法及び用量
錠250μg
通常、成人は1日6錠(メコバラミンとして1日1,500μg)を3回に分けて経口投与する。
ただし、年齢及び症状により適宜増減する。錠500μg
通常、成人は1日3錠(メコバラミンとして1日1,500μg)を3回に分けて経口投与する。
ただし、年齢及び症状により適宜増減する。細粒0.1%
通常、成人は1日3包(メコバラミンとして1日1,500μg)を3回に分けて経口投与する。
ただし、年齢及び症状により適宜増減する。メチコバール錠250μg/メチコバール錠500μg/メチコバール細粒0.1%の添付文書より引用
続いて注射薬。
効能又は効果/用法及び用量
末梢性神経障害
ビタミンB12欠乏による巨赤芽球性貧血用法及び用量
●末梢性神経障害の場合
通常、成人は1日1回1アンプル(メコバラミンとして500μg)を週3回、筋肉内または静脈内に注射する。ただし、年齢及び症状により適宜増減する。●巨赤芽球性貧血の場合
通常、成人は1日1回1アンプル(メコバラミンとして500μg)を週3回、筋肉内または静脈内に注射する。
約2ヵ月投与した後、維持療法として1~3ヵ月に1回1アンプルを投与する。メチコバール注射液500μgの添付文書より引用
メチコバールの作用を簡単に説明すると「神経に働きかけ、しびれや痛みなどの症状を改善する。またビタミンB12が不足することにより起こる貧血を改善する」となります。
(ビタミンB12欠乏による)末梢神経障害、巨赤芽球性貧血とは?
ビタミンB12は、私達人間にとってなくてはならない栄養素です。ビタミンB12が不足すると、様々な不具合が生じてしまいます。
ビタミンB12は神経組織を正常な状態に保つ働きを持ち、また、赤血球の合成に必要不可欠です。
そのため、ビタミンB12が不足することでしびれや痛みを生じることがあります。特に末梢における神経の障害は四肢のしびれや腰の痛みなどの症状を呈し、これを末梢神経障害と呼んでいます。
またビタミンB12が不足している状態で赤血球が産生されると、赤血球の元になる細胞(赤芽球)が異常に大きくなり、赤血球になる前に壊れてしまいます。
これが巨血芽球と呼ばれる赤血球で、これが原因によって生じる貧血を巨血芽球性貧血と呼びます。
胃粘膜の異常によってビタミンB12が吸収できずに貧血を起こしている場合にのみ、悪性貧血と言う名称で呼ばれていますが、結局はビタミンB12の欠乏による貧血の一種で、巨赤芽球性貧血のパターンの一つです。
メチコバールの作用機序と特徴、適応外処方について
メチコバール(メコバラミン)は補酵素型ビタミンB12製剤で、経口薬は末梢性神経障害に対して適応を持っています。
ビタミンB12は水溶性ビタミンであり、もともと肝臓に十分な量がストックされています。過剰に摂取したものは尿に溶けて排泄されますので安全性が高いのが特徴です。
メチコバールには緩徐ではありますが、細胞内でメチル基転移反応を介して核酸・脂質・たんぱくの代謝を促進し、障害された末梢神経を修復する効果が知られています。
また、他のビタミンB12製剤と比較して組織への移行性が高いことが知られています。そのため、単純なビタミンB12の欠乏症改善にとどまらない効果を持っているのです。
糖尿病や帯状疱疹などによる痛み、しびれに効果を発揮することに加え、ビタミンB12の欠乏によって発生する巨血芽球性貧血の治療、更に自律神経失調症によって起きるめまい・耳鳴りにも使用されています。
他にも、タンパク合成促進を期待した乏精子症による男性不妊の改善や嗅覚障害の改善、メラトニンの産生促進効果から慨日リズム障害による睡眠障害にも用いられています。
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メチコバールの副作用
メチコバールには安全性の高い医薬品です。副作用の発現率も1%未満。
主なものは発疹などの過敏症状、下痢、食欲不振、悪心・嘔吐といった消化器症状になります。注射薬については左記に加え、筋肉内注射部位の疼痛・硬結が報告されています。
メチコバールの注意事項
メチコバールは遮光し、湿気を避けて保管する必要があります。光によってメコバラミンが分解されて薬効が低下し、湿気によって錠剤が赤みを帯びてしまうことがあるためです。粉砕も不可です。
また添付文書には以下の記載があります。
その他の注意
水銀及びその化合物を取り扱う職業従事者に長期にわたって大量に投与することは避けることが望ましい。メチコバール錠250μg/メチコバール錠500μg/メチコバール細粒0.1%の添付文書より引用
これは開発中の社会情勢で水俣病が問題となっていたことが背景にあり、試験管内での塩化第二水銀とメコバラミンが反応して、水俣病の原因であるメチル水銀を生成する反応が起きることに由来しています。
ただこの反応は生体内では確認されておらず、全国的な検査でも服用者の水銀蓄積は起きていないことが判明しています。
それではメチコバールについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。