今回は漢方薬の麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)について解説します。

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麻黄附子細辛湯の名前の由来

 

配合されている3種の生薬、麻黄、附子、細辛をそのまま組み合わせて麻黄附子細辛湯と命名されています。

麻黄附子細辛湯の作用機序と特徴

 

麻黄附子細辛湯は風邪や鼻炎などに対して用いられている漢方薬であり、含まれている生薬は麻黄(マオウ)、細辛(サイシン)、附子末(ブシマツ)の三種です。

 

東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。

 

麻黄附子細辛湯に適応がある証は虚証・寒証で、体力が低下していて虚弱になり、寒がりで顔色が悪い人に対して効果的な漢方薬です。

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添付文書には以下のように記載されています。

効能又は効果
悪寒、微熱、全身倦怠、低血圧で頭痛、めまいあり、四肢に疼痛冷感あるものの次の諸症
感冒、気管支炎

用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

ツムラ麻黄附子細辛湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用

 

麻黄を含んでいることから風邪に使用されていますが、麻黄剤の中でも効果は穏やかなものであり、老人のための風邪薬とも言われています。

 

また、インフルエンザの治療に関しては明確なエビデンスはありませんが、感染予防に期待できる効果を持っています。

 

麻黄、細辛、附子末ともに体を温めることによってその効果を発揮しています。麻黄は病気の原因となるものを発散させ、附子・細辛は痛みを抑えます。

 

漢方薬は科学的な作用機序が解明されていないものが多い中、麻黄附子細辛湯は複数の研究が進められており、科学的な薬理作用の一部が判明しています。

 

鎮痛作用は迷走神経を活性化させることで、抗アレルギー・抗炎症作用については好塩基球からのヒスタミン遊離の抑制、ブラジキニンの作用の抑制によりその効果を発揮します。

 

また、好酸球の遊走や気管支の収縮を起こし、炎症反応を誘起する血小板活性化因子(PAF)や、細胞障害を引き起こすインターロイキン1の産生を抑制する作用もあり、肝細胞の障害や、気管支炎の症状が著名に改善することも判明しています。

 

ただし、これらのケミカルメディエーターがなぜ産生抑制されるのか、いまだに判明していません。

 

一説には、細胞内のカルシウムイオン濃度を低下させることによりケミカルメディエーターの反応を抑制しているとされていますが、研究の域を出ていないため、今後の解明が待たれます。

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麻黄附子細辛湯の副作用

 

麻黄附子細辛湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。

 

重大な副作用として肝機能障害の報告もあるため、肝機能検査値異常や黄疸、強い倦怠感などが現れた場合には服薬を中止する必要があります。

 

その他の副作用として、発疹・発赤などの過敏症状、不眠・発汗過多・動悸・興奮などの自律神経症状、口渇・食欲不振・悪心などの消化器症状、排尿障害やのぼせ、舌のしびれなどが報告されています。

 

服用中にこれらの症状が現れた場合は、医師、薬剤師に伝えるようにして下さいね。

麻黄附子細辛湯の飲み方と注意事項

 

麻黄附子細辛湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合、効果が増強する可能性はありますが、基本的に気付いた時点で服用しても大丈夫です。

 

効果の増強は麻黄や附子が含まれていることによります。理由について知りたい方は以下の記事もぜひご覧になって下さい。

関連記事漢方薬の「食前または食間」にエビデンスはある?食後ではダメ?

 

麻黄附子細辛湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果、煮出した薬液を加工し散剤としたものです。

 

そのため服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。

 

附子末が含まれている漢方薬であるため、過剰に摂取した場合には心悸亢進などの副作用が発現しやすくなってしまいます。漢方薬を併用する際には、その重複に十分注意しましょう。

 

また、麻黄(主成分エフェドリン)が含まれているため、以下の薬剤と併用することで交感神経興奮作用が増強する可能性があります。お薬手帳を忘れずに提出するようにして下さい。

・MAO(モノアミン酸化酵素)阻害薬
・アドレナリンなどのカテコールアミン製剤
・テオフィリンなどのキサンチン系製剤
・チロキシンなどの甲状腺製剤
・エフェドリン含有・麻黄含有の製剤

 

麻黄附子細辛湯は妊婦への投与はあまり望ましくない漢方薬です。妊婦が服用した場合、麻黄によって末端の血流が低下してしまい、胎児に十分な血流が供給されなくなる可能性があります。

 

附子末の副作用が発現しやすくなるという例もあるため、できる限り服用は控えるものとされています。自己判断で服用することなく、かかりつけ医に確認するようにして下さいね。

 

それでは麻黄附子細辛湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。