今回は漢方薬の麻杏甘石湯(マキョウカンセキトウ)について解説します。
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麻杏甘石湯の名前の由来
含まれる4種の生薬(次項参照)から頭文字をとり組み合わせて麻杏甘石湯と命名されています。
麻杏甘石湯の作用機序と特徴
麻杏甘石湯は気管支喘息などに用いられている漢方薬で、含まれている生薬は麻黄(マオウ)、杏仁(キョウニン)、甘草(カンゾウ)、石膏(セッコウ)の4種類のみです。
東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。
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麻杏甘石湯に適応のある証は実証・熱証・水滞であり、体力が充実していてむくみやすく、ほてりやすいタイプの人に向いています。
添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果
小児ぜんそく、気管支ぜんそく用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ツムラ麻杏甘石湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
漢方薬の薬理的な作用機序は解明されていないものが多く、麻杏甘石湯も例外ではありません。ただし、その一部の作用機序は研究によって解明されています。
まず、麻杏甘石湯の中心となる麻黄にはエフェドリン作用があり、このエフェドリンは自律神経を刺激することで気管支を拡張する作用を発揮します。
気管支喘息ではアレルギーによっても気管支が収縮してしまうため、抗ヒスタミン作用によってアレルギーを抑制し、咳・ゼイゼイとした呼吸を改善する効果も併せて発揮されます。
また、杏仁には去痰作用があるため、気管支に絡みつく痰を除去し、熱を強力に除去する石膏が炎症・腫れを防いで気管支のつまりを取り除きます。
その他、鼻炎・鼻水が長く続いた時に、鼻粘膜が赤く腫れて鼻閉となってしまった際には、麻杏甘石湯により抗炎症作用・抗アレルギー作用によって改善が期待できます。
また、麻杏甘石湯に桑白皮(ソウハクヒ)を加えた漢方薬に、五虎湯というものが存在します。五虎湯は麻杏甘石湯よりも強力に咳を改善するとされており、より特化した作用が期待できます。
麻杏甘石湯も甘草によって飲みやすい味となっていますが、五虎湯に加えられている桑白皮には甘み・渋みがあるため、さらに飲みやすく調整されている状態です。
ただし味は病態によって感じ方が変わりますし、個人差もあります。そのため、飲みやすさについてはあくまでも目安程度に考えておきましょう。
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麻杏甘石湯の副作用
麻杏甘石湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。
低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。
その他の副作用として、麻黄の影響による不眠や心悸亢進、悪心、食欲不振の報告があります。服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。
麻杏甘石湯の飲み方と注意事項
麻杏甘石湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、毎回でなければ気づいた時点で服用しても構いません。ただし、効果が増強して副作用が発現しやすくなる可能性があるため、十分に注意しましょう。
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心疾患や高血圧などの持病がある人や、甲状腺疾患、胃腸虚弱、排尿障害のある人では、麻黄に含まれるエフェドリンが体に負担をかけてしまう可能性があるため、慎重に服用する必要があります。
また、麻黄は以下の薬剤と併用することで交感神経興奮作用が増強する可能性があります。お薬手帳を忘れずに提出するようにして下さいね。
・MAO(モノアミン酸化酵素)阻害薬
・アドレナリンなどのカテコールアミン製剤
・テオフィリンなどのキサンチン系製剤
・チロキシンなどの甲状腺製剤
・エフェドリン含有・麻黄含有の製剤
他にも甘草を有効成分として含んでいるため、甘草を含んでいる漢方薬との併用はもちろん、その有効成分であるグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があります。
妊娠中の服薬に関しては、添付文書では「有益性が危険性を上回る場合にのみ使用すること」となっています。風邪などに対しても処方される場合がありますが、妊娠中は虚証に傾きやすいため、本当に麻杏甘石湯の適応であるのかは慎重に考慮しなければいけません。
自己判断で服用は避け、必ず医師の判断を仰ぐようにしましょう。
それでは麻杏甘石湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。