今回は脂質異常症治療薬のロトリガについて解説します。

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ロトリガとは?

 

それでは名前の由来からいきましょう。ロトリガLOTRIGAと表記されますが、これは「low triglyceride」の下線部を組み合わせて命名されています。一般名はオメガ‐3脂肪酸エチルになります。

 

ロトリガの作用を簡単に説明すると「コレステロールや中性脂肪を低下させたり、血栓ができるのを抑えることで血液の流れをよくする」になります。

ロトリガの作用機序と特徴

 

ロトリガは魚油の主成分であるω-3脂肪酸を医薬品として精製した製剤で、脂質異常症の治療に用いられている医薬品です。

 

ロトリガに含まれているω-3脂肪酸はイコサペント酸エチル(EPA)のみではなく、同様にω-3脂肪酸系に分類されるドコサヘキサエン酸エチル(DHA)も含有されています。

 

EPAやDHAは非常に酸化されやすいことから、ロトリガには医薬品としての品質管理のため、酸化防止用の添加剤としてビタミンEが配合されています。

 

ロトリガは1994年から諸外国において使用されている医薬品で、日本でも2012年から使用が許可されました。

 

主な効果は血中トリグリセリド(以下TG:中性脂肪)の低下で、肝臓からのTG産生を低下させ、同時に代謝(脂肪酸のβ酸化)を亢進して血中TGを低下させる作用を持ちます。

 

脂質改善効果では、コレステロールのサイズを変換するコレステリルエステル転送蛋白(CEPT)の抑制によって、悪性度の強い極小のLDLコレステロール(sd-LDL:超悪玉コレステロール)の発生を抑制します。その結果、マクロファージの泡沫化を抑制して動脈硬化の進行を予防できるのです。

 

EPAは体内に取り込まれるとアラキドン酸と置き換わります。それによってプロスタグランジンの産生を調節する機能を発揮し、抗血小板作用を持つPGI3(プロスタグランジンI3)や血小板凝集作用を持たないTXA3(トロンボキサンA3)を産生して、抗血小板作用を発揮します。

 

DHAは基本的にEPAの効果と大きな差異はありませんが、EPAよりも心臓や脳への移行に優れているとされています。ただし、それがどれだけ人間に有益なのかは、いまだに判明していません。

 

ロトリガは食事による吸収の影響を受けてしまうため、必ず食直後(食後10分以内)に服用する必要があります。空腹時の服用ではAUC・Cmaxの低下が予想されますが、添付文書などには記載がありません。

 

同系統薬のエパデールでは、吸収量が5分の1程度まで低下したというデータがあるため、ロトリガも同様に考える必要があるでしょう。

 

ロトリガの主成分は魚油と同成分であり、私達人は油分の吸収のためには胆汁などに含まれている脂質分解酵素を必要とします。食直後でなければ胆汁の分泌が低下してしまい、これらの酵素も十分に効果を発揮できないために、用法は食直後に限定されているのです。

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ロトリガとエパデールの違い

DHAの配合

ロトリガはEPAとDHAの合剤ですが、エパデールはEPA単独の製剤です。エパデールは日本で開発された経緯から日本人のデータを豊富に持っていますが、ロトリガは海外で開発されたため、日本人におけるエビデンスは不足している印象を受けます。

用法

ロトリガは病状によって1日1回の服用(TG値により1日2回まで増量可)であり、エパデールは1日3回の服用が必要です。服用の利便性ではロトリガが勝っており、症状における増量もしやすいでしょう。

適応症

ロトリガの適応症は高脂血症のみ

ですが、エパデールには高脂血症に加えて閉塞性動脈硬化に伴う潰瘍・疼痛・冷感の改善が適応症があります。

ロトリガの副作用

 

ロトリガの主な副作用は下痢で、服用した患者の2.5%に認められています。その他の副作用を合わせて全体で9.6%の患者に副作用の発現があり、重大な副作用としては肝機能検査値の異常や黄疸などを伴う肝機能障害の報告があります。

 

その他の副作用としては悪心・嘔吐、腹痛などの消化器症状の報告が多く、出血傾向(皮下出血、鼻出血)やめまい、痛風、血糖値の上昇などの報告もあります。かゆみや発疹など過敏症状の報告もあり、過敏症状を発現した場合には服薬を中止する必要があるので注意しましょう。

ロトリガの注意事項

 

ロトリガの服薬により、血流が改善して出血しやすくなるという報告があります。そのため、血友病や消化管潰瘍などによって出血している患者には禁忌とされています。同様に、既にワーファリンやバイアスピリンなどの抗凝固薬や血小板凝集抑制薬を服用している患者での服薬は、慎重に行わなければいけません。

 

軟カプセル剤のため噛むと成分が出てきてしまい、その匂いが結構きついです。そのため噛まずに服用するようにして下さい。

 

ロトリガの原材料は、種々の青魚です。製剤課程で不純物をほぼ完全に除去しており、アレルゲンの心配をしなくても良いレベルで精製されています。ただしそれでも100%大丈夫とは言い切れませんので、青魚アレルギーの患者ではよっぽどの理由がなければ避けた方がよいでしょう。

 

妊娠中の使用は、添付文書では有益性が危険性を上回る場合に服用となっています。ただ魚油が主原料ですので、胎盤を通過して胎児に移行することが予想されます(母乳にも移行します)。今のところ催奇形性などの危険性の報告はありませんが、特別な理由がない限り避けるのが望ましいでしょう。

 

それではロトリガについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。