今回はアルドース還元酵素(AR)阻害剤のキネダックについて解説していきます。
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キネダックとは?
糖尿病性神経障害が出現すると、運動機能がうまく働きません。
『運動(上)の、動的な』の意味を持つ『キネティック(kinetic)』から『kinedak:キネダック』と命名されました。一般名はエパルレスタットです。
キネダックの作用を簡単に説明すると『糖尿病性神経障害による手足のしびれや痛みを緩和する』となります。それではもう少し詳しくみていきましょう。
糖尿病性末梢神経障害とは?
ブドウ糖が細胞内に取り込まれるためにはブドウ糖輸送体(glucose transporter(以下GLUT))が必要です。
GLUTはいわゆるブドウ糖の運び屋ですね。
インスリンが細胞膜のインスリン受容体に結合すると、GLUTは細胞膜表面まで移動し、ブドウ糖を取り込んでくれるのです。
つまりGLUTはブドウ糖の取り込みを制御していると言えます。
ただ末梢神経細胞にはGLUTが存在しないため、血糖値が上昇、つまり血液中のブドウ糖の量が増えれば増えるほど細胞内にどんどん取り込まれてしまいます。
取り込まれたブドウ糖はピルビン酸や乳酸などに分解され、細胞のエネルギーの源であるATPを産生する”解糖系”に進みます。
ただ、何事にも限界があるため、解糖系で処理しきれないブドウ糖が増えてしまいます。
しかしなんとか処理する必要があります。そこで細胞の苦肉の策が以下の”ポリオール代謝経路”です。
ブドウ糖をアルドース還元酵素によりソルビトールに、続いてソルビトール脱水素酵素によりフルクトースにします。
ただこれには問題があり、アルドース還元酵素は活性化されるのですが、ソルビトール脱水素酵素は活性化されないことです。
そのため、ソルビトールがどんどん蓄積されていくことになります。
ソルビトールは細胞内に水分を取り込む作用があり、神経細胞が壊れてしまいます。これにより刺激に対して過敏になったり、逆に感覚が麻痺してしまうのです。
これがいわゆる糖尿病性末梢神経障害。
末梢神経障害は腎症、網膜症と並ぶ糖尿病三大合併症の一つであり、上記3つの中では一般的に一番早く現れます。
症状としては手足のしびれ、痛みなどに加え、感覚が麻痺することで足の怪我に気付かず放置され、それが感染症などを引き起こし最悪切断などに至る場合もあります。
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キネダックの作用機序
これらを改善するために開発されたのがキネダックです。
キネダックはアルドース還元酵素の働きを失わせる作用を持っています。
細胞内のソルビトールの量が減ることで、末梢神経障害を緩和する事ができる、というわけですね。
キネダックの効能効果・用法用量
キネダックの注意事項と副作用について
キネダックは食後に服用すると3割程度吸収が低下するため、必ず食前に服用して下さい。
副作用ではキネダックに特徴的なものとして、着色尿があります。
尿が黄褐色または赤色になる場合がありますが、これは薬に色によるもので、血尿ではありません。
ただ病院での尿検査に影響する場合がありますので、服用中の方はその旨を伝えるようにして下さいね。
それではキネダックについては以上とさせていただきます。最後まで読んで頂きありがとうございました。
出典:
キネダック錠50mg 添付文書・インタビューフォーム