今回は漢方薬の桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)について解説します。

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桂枝加朮附湯の名前の由来

 

桂枝湯に蒼子をえた漢方薬ということで、下線部を組み合わせて桂枝加朮附湯と命名されています。

桂枝加朮附湯の作用機序と特徴

 

桂枝加朮附湯は、神経痛や関節痛に用いられる漢方薬で、含まれている生薬は桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、蒼朮(ソウジュツ)、大棗(タイソウ)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)、附子末(ブシマツ)です。

 

東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。桂枝加朮附湯に適応がある証は虚証・寒証・湿証で、体力がなくて疲れやすく、体が冷えてむくみやすいタイプの人に向いている漢方薬です。

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添付文書には以下のように記載されています。

効能又は効果
関節痛、神経痛

用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。

ツムラ桂枝加朮附湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用

 

漢方薬の科学的な作用機序は解明されていないものが多く、桂枝加朮附湯も例外ではありません。そのため、効果は配合されている生薬から推察していくことが求められます。

 

まずは基本となる桂枝湯ですが、体を温めて体力を補完する作用に優れた漢方薬で、効果が緩徐であるために虚証・寒証の患者に対して使用できるものでした。

 

そこに加えて、汗を発散させて体内の湿を除去する効果に優れる蒼朮、体内の冷えを取り除いて新陳代謝を改善させ、強力に鎮痛効果を発揮する附子を加えることによって、より強く寒証を改善できるようになっています。

 

冷えから来る症状を緩和することに優れるため、神経痛に対して効果的であり、特に冷えによって症状が悪化する疾病に効果を発揮します。例えば、腰痛の中でも腰回りの神経が冷えることで発生している状態では、寒を除去して痛みを緩和することができます。

 

同様に、肩こりの中でも寒による神経のこわばりによって起きているものに効果的に作用し、そういった肩こりが原因となって発生する頭痛やめまいにも、併せて効果を発揮します。

 

湿を除去する効果に優れるため、むくみ・腫れを改善する効果が期待でき、痛みを伴って関節の腫れを起こしてしまう関節リウマチなどにも効果を期待できるでしょう。

 

桂枝湯の芍薬を増量させた「桂枝加芍薬湯」には下痢や胃腸障害に対しての効果があるため、桂枝加朮附湯でも同様に下痢などの胃腸に関する効果が期待できます。桂枝加芍薬湯よりも、冷えを原因として起きている胃腸障害に対して効果を発揮できるのが桂枝加朮附湯なのです。

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桂枝加朮附湯の副作用

 

桂枝加朮附湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。

 

低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。

 

その他の副作用として、附子による心悸亢進やのぼせ、悪心などの副作用や、発疹・発赤、掻痒感などの過敏症状の報告があります。服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。

桂枝加朮附湯の飲み方と注意事項

 

桂枝加朮附湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまっても、毎回でなければ気づいた時点で服用しても構いません。ただし、副作用の発現する可能性が多少増加することがありますので注意しましょう。

 

桂枝加朮附湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。そのため、服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。

 

あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。

 

有効成分の重複には注意を要するものがあり、甘草を含む漢方薬の併用には注意しなければいけません。甘草の有効成分として含有されているグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意する必要があり、併用注意となっています。

 

妊娠中の女性では、附子による副作用が発現しやすくなる可能性が高いため、できる限り使用は避けることが望ましいでしょう。くれぐれも自己判断での服用は控えて下さいね。

 

それでは桂枝加朮附湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。