オステン(イプリフラボン)の作用機序と副作用、販売中止と経過措置

オステン(イプリフラボン)は、骨粗鬆症で減った骨量を改善する目的で使われていた飲み薬です。1988年12月に販売が始まり、長く処方されてきました。ただし現在は先発品も後発品も販売が終了していて、処方することはできません。

薬歴やお薬手帳でこの薬名を見かけたときに困らないよう、効能・効果の線引き、作用機序、用法・用量、禁忌と相互作用、副作用と観察のポイントを、添付文書とインタビューフォームの記載から確認していきます。

この記事でわかること
  • オステンとイプリフラボンが現在は処方できない理由と、その時期
  • 効能・効果が「骨量減少の改善」で止まっていた意味
  • 禁忌が設定されていない一方で、注意が要る併用薬が3つあったこと
  • 薬歴にこの薬名が出てきたときに、何を確認して何を伝えるか

オステン(イプリフラボン)とはどんな薬か

オステンは骨粗鬆症治療剤に分類される内服薬で、一般名をイプリフラボンといいます。1錠に200mgを含む素錠でした。過去形で書いているのは、先発品も後発品もすでに販売が終わっているためです。

基本情報を一枚で

項目内容
販売名オステン錠200mg
一般名イプリフラボン
薬効分類骨粗鬆症治療剤(日本標準商品分類番号 873999)
剤形・規格素錠、1錠中イプリフラボン200mg
規制区分処方箋医薬品(劇薬・毒薬の指定は添付文書に記載なし)
製造販売元武田テバ薬品株式会社
販売開始1988年12月
再審査結果1998年3月
先発・後発の別先発品(後発品も全て販売中止)
貯法室温保存。開封後も光を遮って保存
薬価薬価基準から削除済み(削除直前の2022年3月時点で200mg1錠 20.80円)

販売名の由来については触れません。由来の正本になるオステンのインタビューフォームが入手できず、根拠のある形で書けないためです。名前の似ている語からそれらしく組み立てることはできますが、それは推測であって事実ではありません。

いまは処方できない(先発・後発とも販売中止)

この記事でいちばん先に押さえてほしいのはここです。2026年8月時点で、イプリフラボンを成分とする医療用医薬品は薬価基準に残っていません。つまり保険診療では処方できません。

先に姿を消したのは先発品のほうです。オステン錠200mgは令和4年(2022年)3月31日限りで経過措置が終了し、薬価基準から削除されました。厚生労働省の薬価基準収載品目リストと、社会保険診療報酬支払基金の経過措置医薬品一覧の両方に、この期日が記載されています。

後発品はその2年後、令和6年(2024年)3月31日限りで廃止となりました。以降、イプリフラボンを成分とする医療用医薬品は薬価基準に収載されていません。

ここで1つ、調べるときにつまずくポイントがあります。後発品を「イプリフラボン錠200mg『◯◯』」という銘柄名で経過措置の一覧から探しても、見つかりません。イプリフラボンの後発品は統一名収載といって、「イプリフラボン200mg錠」という1つの品名にまとめて薬価収載されていたためです。会社名のついた銘柄は公式の一覧に出てきません。この統一名での薬価は、廃止直前で200mg1錠 9.70円でした。

販売中止になった薬は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の添付文書データベースからも削除されます。オステンの添付文書やインタビューフォームがPMDAで見つからないのはそのためで、廃止されたのではなく掲載が終わっただけです。

オステンは何に使う薬だったか(効能・効果)

添付文書の効能・効果は「骨粗鬆症における骨量減少の改善」の1つだけです。骨折を抑えるという効能は書かれていません。ここが、この薬の性格をいちばんよく表しています。

「骨粗鬆症」ではなく「骨量減少の改善」で止まっている

骨粗鬆症の薬は、効能・効果の書き方が薬によって少しずつ違います。「骨粗鬆症」と書かれているもの、「骨粗鬆症における疼痛」まで含むもの、そしてオステンのように「骨量減少の改善」で止まっているものがあります。

この差は言葉のあやではありません。承認の根拠になった試験で何を示せたかが、そのまま効能・効果の文言になります。オステンの添付文書に載っている臨床試験で評価されているのは、全般改善度と骨量改善度です。骨折が起きた割合ではありません。

つまり、骨量が減るのを抑えられることは示されたけれど、骨折を減らせるかどうかは添付文書の記載からはわからない、ということです。処方監査で効能を確認するときも、この線をまたがないようにします。

使う相手も限定されていた

添付文書の重要な基本的注意には、骨粗鬆症との診断が確立した患者を対象とすること、と明記されています。骨量が少し減っている人に予防目的で出す薬ではない、という意味です。腰背痛があるなら、それに対する治療を別に併用することも求められていました。

イプリフラボンはどう効くのか(作用機序)

先に結論を書くと、イプリフラボンは骨を壊す側にブレーキをかけ、同時に骨を作る側を後押しする薬です。ただしその効き方は、いまの骨粗鬆症治療薬とは説明の切り口がだいぶ違います。

なぜこの薬の機序を知っておくと役に立つのか

機序を押さえると、3つのことが一本でつながります。なぜ効能が「骨量減少の改善」で止まっているのか。なぜエストロゲン製剤との併用に注意がついていたのか。そしてなぜ1日3回という、いまの骨粗鬆症治療薬では見かけない用法だったのか。

骨は毎日、壊されて作り直されている

まず土台から確認します。骨は一度できたら終わりではありません。古くなった部分を壊し、そこに新しい骨を作る、という入れ替えが毎日続いています。

壊す係が破骨細胞、作る係が骨芽細胞です。工事現場でいえば、古い建物を解体する班と、新しく建てる班が同じ現場に常駐しているようなものです。解体と建設の量が釣り合っているうちは、建物の大きさは変わりません。

閉経後は、この釣り合いが崩れます。解体班だけが働きすぎて、建てる班が追いつかなくなる。結果として骨量が減っていきます。

イプリフラボンは3つの方向から働く

添付文書の薬効薬理には、作用機序として3つが挙げられています。直接的な骨吸収抑制、エストロゲンのカルシトニン分泌促進作用を増強することによる間接的な骨吸収抑制、そして骨形成促進です。この3つがどの細胞に効いているのかは、後発品のインタビューフォームがもう少し細かく書いています。あわせて順に見ていきます。

  1. 解体班に直接ブレーキをかける。破骨細胞の骨吸収活性を抑えるだけでなく、前破骨細胞が破骨細胞へ育つ段階も抑えます。働いている職人を止めると同時に、新人の採用も止めるイメージです
  2. カルシトニンを増やす方向に働く。カルシトニンは骨吸収を抑えるホルモンです。イプリフラボンは、エストロゲンがカルシトニンの分泌を促す働きを増強します
  3. 建てる班を増やす。骨芽細胞の増殖と分化を促し、骨形成を後押しします

ここで押さえておきたいのが2番目です。イプリフラボン自体は女性ホルモンではありません。合成されたフラボノイド系の化合物です。

ただし添付文書は「エストロゲンのカルシトニン分泌促進作用を増強する」と書いています。増強するという表現である以上、エストロゲンの働きが前提にある経路と読めます。エストロゲン製剤との併用注意がついていたのも、同じところに理由があります。

効いていたのは未変化体だけではない

この薬には、少し変わった特徴があります。健康成人に200mgを食後に飲んでもらうと、血中に出てくるイプリフラボンそのもの(未変化体)は少量です。ピークは1.3時間後で、そのときの濃度は170ng/mL、半減期は9.8時間と記載されています。

おもしろいのはここからです。血中には未変化体と一緒に5種類の代謝物が存在し、その5つすべてに骨吸収を抑える活性があります。うち2つは未変化体と同等の強さです。添付文書は、この薬の骨吸収抑制効果を未変化体と代謝物の作用の総和と考えられる、と説明しています。

つまり、血中濃度の数字ひとつを見て効き目を語れる薬ではない、ということです。1日3回食後という用法も、この構造と無関係ではありません。

この機序が説明できるのは「骨量」まで

3つの経路をまとめると、骨が減るのを抑える方向にはたしかに働きます。実験的に骨粗鬆症を起こさせた動物で、骨量の減少を抑えることも確認されています。

ただし、そこから骨折が減るところまでは届いていません。効能・効果が「骨量減少の改善」で止まっているのと、機序の説明が骨量の話で閉じているのは、きれいに対応しています。だから患者に説明するときも、骨が折れにくくなる薬という言い方はしません。

オステンの用法・用量と使い方

通常、成人には1回1錠(イプリフラボンとして200mg)を1日3回、食後に経口投与する。年齢、症状により適宜増減する。これが添付文書の記載のすべてです。1日量は600mgになります。

腎機能・肝機能・年齢による調節は「規定がない」

ここは正直に書きます。腎機能や肝機能に応じた用量調節の規定は、添付文書にありません。体重による調節もありません。数字が示されていないものを、それらしく補うことはできません。

対象添付文書の記載
腎機能低下用量調節の規定なし
肝機能低下用量調節の規定なし
高齢者慎重に投与すること(用量の指定はなし)
小児等低出生体重児・新生児・乳児・幼児・小児に対する安全性は確立していない(使用経験がない)
投与期間制限は定められていない

高齢者について添付文書が求めているのは、用量を下げることではなく観察を続けることです。重要な基本的注意に、この薬は高齢者に長期にわたって投与されることが多いので、投与中は状態を十分観察し、消化器症状などの副作用があらわれた場合には適切な処置を行うこと、と書かれています。

飲み方と、交付時に伝えること

食後投与が基本です。添付文書に載っている血中濃度や尿中排泄のデータも、食後に飲んだときのものです。

交付時の注意としては、PTP包装(錠剤を1錠ずつ包んだ、押し出して取り出すシート)から取り出して服用するよう指導することが挙げられています。シートごと飲み込むと、硬い角が食道の粘膜に刺さり、さらに穴があいて縦隔洞炎などの重い合併症につながった報告があるためです。

粉砕や簡易懸濁ができるかどうかは、添付文書にもインタビューフォームにも記載がありません。嚥下が難しい患者にどうするかを調べても、この薬については資料がないというのが答えになります。

使ってはいけない人と、注意する組み合わせ

意外に思われるかもしれませんが、この薬に禁忌の設定はありません。添付文書に【禁忌】の項目そのものが置かれておらず、インタビューフォームにも「該当しない」と書かれています。警告もありません。

禁忌がないことは、注意が要らないことではない

ここを取り違えると危ないので、はっきり書いておきます。禁忌が設定されていないというのは、投与してはいけない相手が明示されていないという意味であって、副作用が起きないという意味ではありません。

実際、重大な副作用として消化性潰瘍・胃腸出血と黄疸が挙げられています。そして慎重投与には、消化性潰瘍またはその既往歴のある患者が指定されています。理由は、消化性潰瘍や胃腸出血が起きたり悪化したりする可能性があるからです。

禁忌がない代わりに、潰瘍の既往を聞き取ることが実質的な入口のチェックになっていた薬、という理解になります。

併用注意は3つ(併用禁忌はなし)

組み合わせ何が起きるか添付文書が求めていること
エストロゲン製剤エストロゲン作用が増加するとの報告(卵巣を摘出した動物にエストロンと併用投与した試験)具体的な措置の指示はなし
テオフィリンテオフィリンの血中濃度が上昇する。イプリフラボンがテオフィリンの代謝を阻害すると考えられているテオフィリンを減量するなど慎重に投与する
クマリン系抗凝血剤(ワルファリンなど)抗凝血作用が増強する。イプリフラボンによって血漿蛋白から遊離すると考えられているクマリン系抗凝血剤を減量するなど慎重に投与する

3つとも、相手の薬が効きすぎる方向に振れる組み合わせです。テオフィリンなら悪心・嘔吐・頻脈・振戦といった中毒症状、クマリン系なら出血の徴候が、確認する先ということになります。

ただし添付文書が示しているのは「減量するなど慎重に投与すること」までです。どの検査を、どの間隔で見るかまでは書かれていません。ここに具体的な数字を当てはめて説明しないよう気をつけてください。

クマリン系との相互作用は「血漿蛋白から遊離する」ことが機序として挙げられていますが、イプリフラボン自体の血漿蛋白結合率はインタビューフォームで「該当資料なし」となっています。機序の説明は推定にとどまる、と受け取るのが正確です。

オステンの副作用と、何をいつ見張るか

重大な副作用は2つです。消化性潰瘍・胃腸出血と、黄疸。どちらも頻度は0.1%未満とされています。全体の副作用発現頻度は、承認時までの調査で12.6%、製造販売後の使用成績調査で4.0%と記載されています。

重大な副作用は、どんな訴えとして出てくるか

添付文書に初期症状としての記載があるわけではありません。以下は、消化性潰瘍・胃腸出血と黄疸という病態そのものが、患者の言葉としてどう出てくるかを並べたものです。

重大な副作用患者の訴えとして出てくる言葉添付文書の指示
消化性潰瘍、胃腸出血みぞおちが痛い、胃がもたれる、黒い便が出た、コーヒーかすのような物を吐いた、立ちくらみがするこのような症状がみられた場合には投与を中止し、適切な処置を行う
黄疸白目が黄色い、皮膚が黄色い、尿の色が濃い、体がだるい、食欲がない、かゆい観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行う

黒い便は、上部消化管から出た血液が腸を通るあいだに変化して黒くなったものです。患者にとっては「便の色が変わっただけ」に見えるので、自分から言い出さないことがあります。聞かないと出てこない訴え、という位置づけになります。

その他の副作用

分類0.1〜5%未満0.1%未満
過敏症発疹、瘙痒記載なし
消化器悪心・嘔吐、食欲不振、胃部不快感、胸やけ、胃痛、腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘、口内炎口渇、舌炎、味覚異常
精神神経系めまい、ふらつき頭痛
血液貧血顆粒球減少
肝臓AST(GOT)、ALT(GPT)、AL-P、LDHの上昇γ-GTPの上昇
腎臓記載なしBUN(尿素窒素)、クレアチニンの上昇
その他倦怠感、浮腫女性化乳房、舌・口唇のしびれ

過敏症と女性化乳房については、あらわれた場合には投与を中止すること、と添付文書に注記されています。AST・ALT・AL-P・LDH・γ-GTPは肝機能の指標になる検査値で、上から順に肝細胞の障害や胆汁のうっ滞を反映します。

同じイプリフラボンでも、後発品の添付文書では副作用の頻度がすべて「頻度不明」になっています。発現頻度が明確になる調査を実施していないためです。先発と後発で頻度の記載が違うのは、副作用の起こりやすさが違うからではありません。

何を見張るか

添付文書の記載から導ける観察のポイントは4つです。

  • 消化器症状。重要な基本的注意で投与中の観察が明示されています。とくに高齢者、長期に飲んでいる人、潰瘍の既往がある人
  • 肝機能の検査値と、黄疸の徴候
  • 血算。貧血と顆粒球減少の記載があります
  • 腎機能。BUNとクレアチニンの上昇の記載があります

一方で、これらの検査を何週ごとに行うか、どの値を目安にするかは添付文書に書かれていません。定めがないところに数字を作らないのが、この薬に関しては正解です。

使ううえで知っておきたいこと

用量と副作用の間からこぼれやすい項目を、添付文書とインタビューフォームに記載があるものだけ拾います。

妊婦・授乳婦・高齢者

対象添付文書の記載
妊婦治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与する(妊娠中の投与に関する安全性は確立していない)
授乳婦慎重に投与する(ラットで母乳中へ移行することが報告されている)
高齢者慎重に投与する

保存は「開封後も遮光」

貯法は室温保存ですが、開封後も光を遮って保存することが求められていました。理由は、原薬が光によって徐々に黄色くなるためです。

使用期限は外箱の表示に従い、期限内であっても開封後はなるべく速やかに使用すること、とも書かれています。錠剤の見た目が変わっていないかは、残薬を確認するときの手がかりになります。

飲み忘れ・休薬・費用は「定めがない」

飲み忘れたときにどうするか、手術や検査の前に休薬が要るかどうかについて、添付文書に定めはありません。投与期間の上限も定められていないことが、インタビューフォームに明記されています。

費用については、薬価基準から削除されているため保険診療で使えません。削除される直前の薬価は、先発のオステン錠200mgが200mg1錠 20.80円(2022年3月時点)、統一名収載の後発品が9.70円(2024年3月時点)でした。いずれも当時の値であって、現在の薬価ではありません。

同じ骨粗鬆症治療薬と、イプリフラボンはどこが違うか

いちばん大きな違いは、成分でも用法でもありません。何を示せた薬なのか、という評価の軸です。

効能・効果の書き方に差が出ている

2001年のアレンドロン酸の承認申請資料に、当時の骨粗鬆症治療薬の効能・効果を並べた表が載っています(現在はPMDAのサイトで公開されています)。同じ骨粗鬆症の薬でも、書かれ方がここまで違います。

成分(当時)効能・効果の表現
イプリフラボン骨粗鬆症における骨量減少の改善
メナテトレノン骨粗鬆症における骨量・疼痛の改善
エルカトニン骨粗鬆症、骨粗鬆症における疼痛
エチドロン酸ナトリウム骨粗鬆症
アルファカルシドール、カルシトリオール骨粗鬆症
エストリオール老人性骨粗鬆症

この表は2001年時点の一覧です。各成分の現在の効能・効果とは異なる場合があります。処方監査で使う情報は、必ずその製品の最新の添付文書で確認してください。

この一覧のなかで、イプリフラボンは「骨代謝改善薬」という枠に分類されていました。効能表現が近いメナテトレノンについては、グラケーカプセル(メナテトレノン)の作用機序と副作用で別にまとめています。

ガイドラインでの評価はどうだったか

効能・効果の書き方だけでなく、診療ガイドラインでの評価も、この薬の立ち位置をよく表しています。

骨粗鬆症の予防と治療ガイドラインの2011年版には、治療薬の推奨グレード一覧が載っています。イプリフラボンは、骨密度・椎体骨折・非椎体骨折・大腿骨近位部骨折の4項目すべてがグレードCでした。

この版のCの定義は、表の凡例にこう書かれています。結果が得られていないか検討されておらず、行うよう勧めるだけの根拠が明確でない。効かないと判定されたのではなく、勧める根拠が示されていない、という位置づけです。

続く2015年版では、表の枠組みが「推奨グレード」から「有効性の評価」に変わりました。そのうえで、イプリフラボンの評価は4項目ともCと記載されています。枠組みが違うので、2011年版のCとまったく同じ意味とは限りません。

最新版は2025年に10年ぶりに改訂された2025年版です。ただし現時点で本文が公開されておらず、イプリフラボンについての記載があるかどうかは確認できていません。ここは資料がない、というのが正直な答えになります。

使い分けの軸は「骨量を見るか、骨折を見るか」

イプリフラボンで評価されたのは骨量でした。一方、ビスホスホネート製剤のように効能・効果が「骨粗鬆症」そのものになっている薬は、より広い範囲を対象にしています。代表格であるアレンドロン酸については、ボナロン・フォサマック(アレンドロン酸)の作用機序と副作用で扱っています。

骨粗鬆症治療薬にどんな系統があるかを一度俯瞰しておくと、この差が見えやすくなります。系統ごとの整理は骨粗鬆症治療薬一覧にまとめてあります。

どの薬を使うかを決めるのは主治医です。ここで並べたのは効能・効果の書かれ方の違いであって、優劣の順位ではありません。

薬歴にイプリフラボンが出てきたときに、どう説明するか

この薬はもう処方できないので、これから飲む患者への服薬指導という場面はありません。実際に起きるのは、過去の薬歴やお薬手帳、持参薬の確認でこの薬名に出くわす場面です。

前提を1つだけ書いておきます。何をどう伝えるかは、疾患・併用薬・腎機能・理解度で変わります。以下は、添付文書に書いてあることを患者に伝えるときの言い方であって、これだけ言えば済むという意味ではありません。

場面先に確認すること伝えること・つなぐこと
お薬手帳や薬歴に記載があったいつまで飲んでいたか、手元に残っていないか、現在の骨粗鬆症の治療は何か「この薬は販売が終了していて、同じものを続けることはできません」と事実を伝える。今後どうするかは処方医に確認して折り返す
残った錠剤をまだ飲んでいると言われたいつ調剤されたものか、外箱の使用期限、開封後の保管のしかた、錠剤の色「使用期限内でも、開封したあとはなるべく早く使うようにと書かれている薬です」と伝える。飲み続けてよいかの判断は処方医に返し、残薬は持参してもらう
テオフィリンやワルファリンの併用歴がある併用していた時期、当時の投与量、いま同じ薬が続いているか併用注意の組み合わせだったこと、相手の薬が効きすぎる方向に振れる報告があることを伝える。現在も続いているなら、その経過を医師と共有する
当時「胃が痛かった」「黒い便が出た」と言われたいつからか、今も続いているか、他に胃を荒らす薬を併用していなかったか「消化性潰瘍や胃腸出血でもみられる症状です」と伝える。この薬が原因だったかどうかは薬剤師の側では判断できないので、今も症状が続いているなら医師につなぐ

4つに共通しているのは、こちらが判断を下していないことです。中止するか、続けるか、受診するかを決めるのは処方医であって、薬剤師が言えるのは添付文書に書いてあることを伝えるところまでになります。

もう1つ。この薬は「効かなかったから中止になった」わけではありません。販売が終了したことと、その患者に効かなかったことは別の話です。混同されやすいので、聞かれたら分けて説明すると行き違いが減ります。

よくある質問

イプリフラボンは、いつから処方できなくなったのですか

先発のオステン錠200mgは令和4年(2022年)3月31日限り、後発品は令和6年(2024年)3月31日限りで経過措置が終了しています。2024年4月以降、イプリフラボンを成分とする医療用医薬品は薬価基準に収載されていません。

手元に残っている錠剤を飲んでもよいか、と聞かれたら

飲み続けてよいかの判断は処方医に返してください。添付文書には、使用期限内であっても開封後はなるべく速やかに使用することと記載されています。残薬は持参してもらい、現在の治療内容とあわせて確認するのが安全です。

サプリメントの大豆イソフラボンと同じものですか

インタビューフォームで確認できるのは、イプリフラボンが合成された化合物であることまでです。食品成分との比較についての記載はありません。医薬品として効能・効果が認められていたのは、あくまで医療用医薬品のイプリフラボンです。

禁忌がないなら、誰にでも使えた薬だったのですか

そうではありません。禁忌の設定がないことと、注意が要らないことは別です。消化性潰瘍やその既往がある患者は慎重投与とされ、重大な副作用にも消化性潰瘍・胃腸出血と黄疸が挙げられています。

後発品の添付文書に副作用の頻度が書かれていないのはなぜですか

発現頻度が明確になる調査を実施していないため、すべて「頻度不明」と記載されています。先発品より副作用が少ない、あるいは多いという意味ではありません。頻度を調べたいときは先発品の添付文書を見ることになります。

まとめ|オステン(イプリフラボン)の作用機序と副作用

この記事の要点
  • 先発は2022年3月末、後発品は2024年3月末で経過措置が終了。現在は薬価基準に収載がない
  • 効能・効果は「骨粗鬆症における骨量減少の改善」だけで、骨折を抑える効能はない
  • 作用機序は骨吸収の抑制と骨形成の促進。ただし説明が届くのは骨量まで
  • 禁忌の設定はなし。慎重投与は消化性潰瘍とその既往
  • 併用注意は3つ。エストロゲン製剤、テオフィリン、クマリン系抗凝血剤
  • 重大な副作用は消化性潰瘍・胃腸出血と黄疸。どちらも0.1%未満

この薬でいちばん覚えておきたいのは、効能・効果が「骨量減少の改善」で止まっていたことです。骨量を守る方向には働くけれど、骨折を減らせるかどうかは添付文書からはわかりません。効能の文言と、承認の根拠になった試験の評価項目は、対応しています。

実務でこの薬名に出会うのは、過去の薬歴や持参薬の確認の場面になります。まず確認するのは、いつまで飲んでいたか、手元に残っていないか、そして現在の骨粗鬆症の治療は何か、の3つです。テオフィリンやワルファリンの併用歴があれば、そこも合わせて見ておくと話が早くなります。

そのうえで、続けるか切り替えるかを決めるのは主治医です。薬剤師の側は、販売終了という事実と、添付文書に書かれている注意点を正確に渡すところまでを担当します。

参考文献

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この記事を書いた人

あおい|病院薬剤師
感染制御認定薬剤師/日病薬病院薬学認定薬剤師

病院で働く薬剤師です。似た名前の薬や制度の違いを、添付文書・インタビューフォーム・厚生労働省の通知にあたって整理しています。記事には情報の時点を記載し、参考文献には版と日付を残しています。