今回は保湿と言えばこの薬「ヒルドイド」についてお話していきます。

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ヒルドイドとは?

 

それでは恒例名前の由来からいきましょう。ヒルドイドはHirudoidと表記されますが、前半の”Hirudo”はドイツ語で蛭(ヒル:血を吸うことで有名)属を意味します。これに”~oid”、「~の様なもの」を組み合わせて命名されています。

 

なんでヒルが関係あるのか?それはヒルが血を吸う時に唾液腺からヘパリン類似物質を出すという特性があることに由来しています。

 

ヒルドイドの作用を簡単に説明すると「皮膚の血流を良くしたり、乾燥を防ぐとなります。それではもう少し詳しくみていきましょう。

ヒルドイドの作用機序と特徴

 

ヒルドイドの成分であるヘパリン類似物質の特徴として硫酸基、カルボキシル基、水酸基などの多くの親水基を持つことが挙げられます。

 

親水基とは”水と親和性がある原子の集まり”を意味します。親水基は水と結合しやすいという特徴があるため水分が保持されます。ヒルドイドを塗ると角質の水分を保持する力が強まることで皮膚の湿度が保たれ(保湿)、乾燥を防ぐことができるのです。

 

またヘパリン類似物質は血液をサラサラにする薬である”ヘパリン”に似た物質です。ヘパリン類似物質はヘパリンと同様に血液凝固抑制作用、血流量増加作用を持っています。

 

皮膚の血行が悪くなると新陳代謝が低下し、皮膚の生まれ変わりのサイクルであるターンオーバーが乱れ乾燥しやすくなります。ヒルドイドにより皮膚の血行がよくなることで症状改善が期待できるのです。

 

ただその作用から出血を助長する可能性があるため、出血性血液疾患 (血友病、血小板減少症、紫斑病等)のある患者様、僅少な出血でも重大な結果を来すことが予想される患者様には禁忌となっています。

 

またヒルドイドはケロイド・肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)に適応があります。

 

肥厚性瘢痕とは皮膚が傷ついた後、完全に元通りに治らず傷跡が盛り上がり目立つようになり、痛みや痒みをともなうものです。肥厚性瘢痕は元の傷跡より拡がることは少ないです。しかし症状が強く、元の傷跡より拡がることもあり、これをケロイドと言います。

 

ケロイド・肥厚性瘢痕ともに傷が治っていく過程でコラーゲンが異常に増殖することが原因と考えられています。

 

ヒルドイドはコラーゲンを産生する線維芽細胞の増殖を抑える作用を持つためケロイド、肥厚性瘢痕に適応があるのです。

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ヒルドイドのジェネリック医薬品について

 

ヒルドイドにはビーソフテン(今後一般名であるヘパリン類似物質に名称変更します)などのジェネリック医薬品がありますが、先発品のヒルドイドにはない剤形「外用スプレー」があります。

 

外用スプレーは無臭で非常にサラッとしており使用感が非常によいです。特に夏場には軟膏やクリームを嫌がる方もいらっしゃるのでそういった方には外用スプレーがいいかもしれませんね。ローションもおすすめです。

 

外用スプレーは広範囲な患部や頭皮に使用したい場合にも有用です。逆さにしても噴霧できたり、アルコールが入っておらず刺激が比較的少ないという特徴もあります。

 

ちなみに先発品、ジェネリック医薬品ともにゲルには皮脂欠乏性の適応がありませんので注意が必要です。

ヒルドイドの副作用

 

ヒルドイドの各剤形における副作用について添付文書を以下に引用させて頂きます。

・ヒルドイドクリーム0.3%
総投与症例2471例中、23例(0.93%)に副作用が認められ、主なものは皮膚炎9件(0.36%)、そう痒8件(0.32%)、発赤5件(0.20%)、発疹4件(0.16%)、潮紅3件(0.12%) 等であった。(効能追加時)

・ヒルドイドソフト軟膏 0.3%
総投与症例119例中、本剤による副作用は認められなかった。(承認時)

・ヒルドイドローション0.3%
総投与症例121例中、本剤による副作用は認められなかった。(承認時)

・ヒルドイドゲル0.3%
総投与症例159例中、1例(0.63%)に副作用が認められ、その症状は皮膚の刺激感であった。(承認時)

ヒルドイド添付文書より引用

一見クリームの副作用が多いように見えますが、他剤形と比較して症例数の桁が違うため単純な比較はできません。

 

各々添加物が異なりますのでそれが副作用発現率に影響している可能性もあります。例えばラノリンアルコールやエタノール、プロピレングリコール、安息香酸などは接触性皮膚炎(かぶれ)の原因となる場合がありますね。かぶれは皮膚のバリア機能が低下している時などに起こりやすくなります。

 

ただジェネリック医薬品を含めどの剤形にも上記のいずれかが含まれており、また主成分は全てヘパリン類似物質であり含量も同じです。よって皮膚炎やそう痒、発赤などの副作用はどの剤形でも起こりうると認識しておいた方がいいでしょう。

 

頻度は低く安全性の高い薬ですが、もし上記のような症状がみられた場合は使用を中止して医師の指示を仰いで下さいね。

 

それではヒルドイドについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。