今回は便秘に対して処方される漢方薬「大黄甘草湯」について解説します。
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大黄甘草湯の名前の由来
配合されているのは大黄、甘草の2種類の生薬のみ。これをそのまま組み合わせて大黄甘草湯と命名されています。
大黄甘草湯の作用機序と特徴
大黄甘草湯は便秘に使用される漢方薬であり、冒頭でお話したとおり、含まれている生薬は大黄(ダイオウ)と甘草(カンゾウ)の二種類だけです。
生薬の配合数が少ないほどに効果の発現に即効性がある傾向にあり、大黄甘草湯も効果発現が早いタイプの漢方薬になります。
大黄甘草湯が適応される証は実証向けのもので、便が固めで体力がある人に適していますが、実際にはそれに縛られず、基本的にほぼすべての人に問題なく使用できるという特徴を持っています。
添付文書には以下のように記載されています。
効能又は効果
便秘症用法及び用量
通常、成人1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。ツムラ大黄甘草湯エキス顆粒(医療用)の添付文書より引用
大黄甘草湯は水分調節作用と大腸刺激作用が合わせて働くことで、下剤としての効果を発揮しています。含まれている成分はセンノシドA・グリチルリチンであり、センノシドAはプルゼニド錠などと同じ成分です。
甘草に含まれるグリチルリチンは抗炎症作用によって大黄による胃腸障害を抑えるとともに、水分調節作用によって便の硬さを改善し、排便がスムーズに行われるようにサポートをする役割を持っています。
センノシドAは腸内で細菌によって代謝され、有効成分であるレインアスロンに変換されます。このレインアスロンが大腸壁を刺激することで蠕動運動を活発にし、下剤の効果を発揮するのです。
この作用は大腸におけるシクロオキシゲナーゼを活性化し、プロスタグランジンの合成を促進することで起きているとされています。
レインアスロンは下剤効果のほかに、悪心・嘔吐を引き起こす可能性がある成分ですが、腸内細菌によって適正に合成されている限りは、そのような副作用が発現する濃度になることはほぼないと考えられています。
大黄にはタンニンが多く含まれていることも知られており、タンニンによって便の排泄が逆に抑制されてしまうという事例が報告されています。
特に大量投与した場合にそのようなジレンマが起きてしまうことがあるため、便秘症の中でも日常的で軽度のものに対して使用することが望ましい漢方薬といえるでしょう。
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大黄甘草湯の副作用
大黄甘草湯では副作用が明確になる調査は行われていません。そのため、その発現頻度に関するデータも存在しておらず、どのくらいの頻度で起こるのかが不明です。
ただ、重大な副作用の報告もあるため、使用する際にはその兆候となる症状に注意しなければいけません。
重大な副作用として報告されているものは、配合されている甘草に由来しているものとなります。
低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症や、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与など適切な処置が必要になります。
上記以外の副作用として、食欲不振、下痢・腹痛などの消化器症状が主なものとして報告されています。
大黄甘草湯の飲み方と注意事項
大黄甘草湯はもともと液剤だったものを抽出して散剤にしたものです。そのため、服用時にはそれに即してぬるめのお湯で服用したほうが効果的だと言われています。
約60度のお湯が最も効果的であり、あまりに熱いお湯では有効成分が揮発してしまうので注意しなければいけません。
大黄・甘草の重複に気をつけましょう。併用薬などにより過量に甘草を摂取することで、前項で紹介している重大な副作用が誘発されやすくなってしまう可能性があります。
また大黄が過量になってしまうと、下痢や腹痛などの消化器症状が発現する可能性が高くなります。併用薬に同成分が含まれないように特に注意しましょう。
大黄甘草湯は妊娠している方にとっては服用を避けた方がよい漢方薬です。含有されている大黄が子宮収縮を促してしまい、流早産を誘発する危険性があるため、一般的には妊娠が判明した場合には服薬を中止するべきでしょう。
授乳中の服用に関しても、大黄の有効成分が母乳中に移行してしまうため、乳児の下痢を引き起こす可能性が否定できないのであまりおすすめできません。自己判断で服用することなく、かかりつけ医に確認するようにして下さいね。
それでは大黄甘草湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。