今回は機能性ディスペプシア治療薬『アコファイド』について作用機序や副作用など解説していきます。

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アコファイドとは?

 

まずは名前の由来からいきましょう。食物受容能不全(食物の受け入れ能力が不十分であること)はImpaired meal accommodation。この中のaccommodationから先頭のACOを抜き出します。

 

機能性ディスペプシアはfunctional dyspepsia、略してFD。FD→FIDEとしACOと繋ぎ合わせて『Acofide:アコファイド』一般名はアコチアミドです。

 

アコファイドの作用を短く説明すると『消化管の運動を改善し、食後のもたれ感や期飽満感を改善する』となります。それではまず最初に機能性ディスペプシアについてお話していきましょう。

機能性ディスペプシアについて

 

機能性ディスペプシアは英語でfunctional- dyspepsia:以下FDと書きます。FDは胃のもたれや痛みが慢性的に続いているにも関わらず、病院を受診して内視鏡検査などで精査しても特別問題がない。つまり消化性潰瘍や胃がんなどの病気が見つからない病気のことを言います。

 

逆に言うと消化性潰瘍や胃がんを否定しなければ処方できない薬という事になります。そのため内視鏡検査などが必須となります。

 

FDの原因は未だ完全に解明されてはいませんが、症状との関係は以下のように考えられています。

 

胃は食道から届いた食物を一時的に貯めこむために、胃の上部を膨らませるという事を行います。これを適応性弛緩といい、これにより食物が一気に十二指腸に流れ込まないようにしているのです。

 

ただ何らかの原因で胃が膨らまず、食物を通常よりも貯めることができなくなり、すぐにお腹いっぱいになってしまう早期満腹感

 

同じく胃の運動機能が低下し、胃から腸へ食物が移動する時間が通常よりもかかることで長時間食物が胃に残ってしまうことによる胃もたれ(食後の膨満感)

 

また胃酸に対する刺激に反応しやすい状態になることを知覚過敏といいます。知覚過敏によりみぞおちの痛み(心窩部痛)や焼けるような感じ(灼熱感)などが現れます。

 

他にもストレスやヘリコバクター・ピロリ菌の感染、遺伝的要因など様々なものが原因となります。以前神経性胃炎や慢性胃炎と診断されていた患者様が実はFDだったということがしばしばあります。

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アコファイドの作用機序と特徴

 

FDの原因と症状についてお話しましたが、その一つに胃の運動機能が低下がありましたね。そもそもなぜ胃の運動機能が低下するのか。それはアセチルコリン(以下Ach)と呼ばれる物質が少なくなるからです。

 

Achは副交感神経の終末から放出される神経伝達物質の一つであり、胃の平滑筋にあるムスカリン受容体に結合すると平滑筋が収縮して胃の運動が起こるのです。

 

そこでアコファイドです。

 

アコファイドはAchを分解する酵素であるアセチルコリンエステラーゼに結合しその働きを失わせます。これによりAchの量が増えますので、胃の運動機能の改善が期待できるのです。

 

つまり胃が食物を貯めることができるようになり、また食物を腸へスムーズに運べるようになるということです。これにより早期満腹感と食後膨満感の改善が見込めるということですね。

 

ただ心窩部の疼痛や灼熱感に対しては今のところ有効性は確認されておりません。しかしメーカーの方に聞きますと、臨床では効くケースも多いとのこと。

 

胃腸の運動を活発にする薬としてはガスモチンもありますが、アコファイドとは作用機序が異なります。もしお時間があればお読みになって下さい。

アコファイドの副作用

 

副作用には下痢、便秘、嘔気、嘔吐などがあります。他に肝機能ASTやALTなどの肝機能検査値の上昇なども見られます。

 

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はアコファイド以外にも結構あります。例えば当サイトでも解説しているアリセプトやレミニールなどもアセチルコリンエステラーゼ阻害薬です。

 

作用機序が同じであるため、併用により作用が強く現れる可能性がありますので注意が必要です。

アコファイドと食事の影響 食後の服用は問題?

 

なぜ食前なのか。それは食後だと最高血中濃度(服用後の薬の最大濃度)が低下する、つまり効果が落ちるからです。食後の最高血中濃度は食前よりも4割程度低下するとも言われています。これは覚えておきましょう。

 

それではアコファイドについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。