今回は解熱鎮痛薬のカロナール、アンヒバ、アセリオについて解説します。
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カロナール・アンヒバ・アセリオとは?
まずは名前の由来からいきましょう。一般名は全てアセトアミノフェンであり、剤形はカロナールが錠剤、細粒、坐剤、シロップ剤、アンヒバが坐剤、アセリオは注射剤になります。
カロナール:「熱や痛みがとれて軽く、楽になる」という意味からを込めて、CALONAL:カロナールと命名されています。
アンヒバ:解熱を意味する「anti-fever」からANHIBA:アンヒバと命名されています。
アセリオ:一般名のアセトアミノフェンacetaminophen、液剤のliquid、痛み・発熱を取り除くという意味でoff、これら3つの下線部を組み合わせアセリオ:acelioと命名されています。
カロナール、アンヒバ、アセリオの作用を簡単に説明すると「脳に作用することで解熱・鎮痛作用を発揮する」となります。
ただこれだけですと、あまりに簡単過ぎますので、次項でもう少し詳しく解説していきたいと思います。
カロナール・アンヒバ・アセリオの作用機序と特徴
カロナールは安全性が高く、様々な年齢・症状で使用されている解熱鎮痛薬です。
同じく解熱鎮痛薬として分類されているNSAIDs(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs:非ステロイド性抗炎症薬)とは作用機序が異なり、COX(シクロオキシゲナーゼ)の阻害作用や抗炎症作用は確認されていません。
実は、現在の科学ではなぜカロナールがこのような作用を発揮するのかは明確に解明されていないのです。ただ、いくつかの仮説が存在しますので、そちらを紹介していきたいと思います。
カロナールの解熱効果は、直接脳の視床下部に作用することで発揮されているとされています。視床下部にある体温調節を司る体温調節中枢に作用して皮膚血管を拡張させ、体温を低下させている可能性が高いのです。
血管拡張による熱放散での体温調節であるため、過度に解熱してしまう危険性が非常に低く、他の解熱鎮痛薬に比べて安全に使用できると言えるでしょう。
痛みに対する作用も、脳に対する効果によるものと考えられます。視床と大脳皮質に作用し、痛みに対する感受性を低下させることで、痛みを緩和しているようです。
NSAIDsと同じ分類として記述されている文献も存在しますが、作用機序から考えても異なる分類と考えた方がいいと思います。
NSAIDsはステロイド骨格を持たない抗炎症作用、解熱作用、鎮痛作用を持つ薬物の総称とされていますが、カロナールには抗炎症作用は認められません。NSAIDsでは、アラキドン酸カスケードにおいて痛み物質を作り出しているCOXの阻害作用が認められますが、カロナールには存在しません。
過去にはカロナールは脳内で作用しているとされる「COX-3を阻害している」と言われた仮説も存在していますが、現在では一般的ではありません。そもそもCOX-3の存在自体が曖昧で、あくまでも仮説の域を出ていない理論と言えるでしょう。
カロナール・アンヒバ・アセリオの副作用
カロナールは安全性が高い薬ではありますが、重大な副作用として、ショック・アナフィラキシーや中毒性表皮壊死症・皮膚粘膜眼症候群・急性汎発性発疹性膿皮症、劇症肝炎や間質性肺炎・間質性腎炎、顆粒球減少症、喘息発作の誘発などが報告されています。
以下に初期症状について記載します。これらの症状が現れた場合は医療機関を受診するようにして下さい。
・中毒性表皮壊死症、皮膚粘膜眼症候群、急性汎発性発疹性膿皮症:発熱、皮膚や粘膜の発疹や水疱、眼の充血など
・劇症肝炎:体がだるい、食欲がない、皮膚や白目が黄色くなるなど
・間質性肺炎:発熱、息苦しい、咳が出るなど
・間質性腎炎:発熱、発疹、関節の痛みなど
・顆粒球減少症:発熱、のどの痛みなど
・喘息発作の誘発:息苦しい、喘鳴など
上記以外の副作用としては、悪心・嘔吐、食用不振等の消化器症状、血小板機能低下・減少などの血液症状、過敏症状なども報告されています。
ここで、肝機能障害発生の機序について簡単にお話しておきましょう。
アセトアミノフェンは主にグルクロン酸抱合、硫酸抱合にて代謝されますが、一部は肝薬物代謝酵素CYP1A2、CYP2E1、CYP3A4により代謝され、特にCYP2E1によりN-アセチル-p-ベンゾキノンイミン(NAPQI)が生成します。このNAPQIが毒性を持ち、肝細胞に障害を与えます。
通常量服用する分にはNAPQIはグルタチオン抱合されきちんと体外に排泄されますが、過量投与された場合、解毒に必要なグルタチオンが不足してしまいます。その結果肝機能障害が発現するのです。
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カロナール・アンヒバ・アセリオの注意事項
カロナールの使用による治療はあくまでも対処療法であり、根本的な治療ではありません。原因の解明と治療を中心に考え、補助的に使用するようにしましょう。過度の体温低下の危険性は低いと言っても、高齢者や小児では発生する可能性はあります。服用後は状態変化に注意していきましょう。
2011年1月21日、用法が変更になり、最大で一日量4000mgの使用が可能(カロナール、アセリオのみ)になりましたが、1日量1500mgを超えて服用する場合には肝機能障害が発生する危険性が高まります。長期間の連用は避け、もし使用期間が長くなるようであれば定期的な肝機能検査を行う必要があります。
アセトアミノフェンは様々なOTCに配合され、薬局医薬品でも総合感冒薬に配合されています。気付かずに併用されていて過量投与となり、肝臓・腎臓・心筋の壊死が起こった例もある為、何らかの医薬品を併用する際には過度の服用にならないように十分注意してください。
参考記事:OTC医薬品の分類と陳列方法などまとめ
併用禁忌の医薬品はありませんが、複数の医薬品で相互作用が認められています。特に肝障害を起こす可能性のある医薬品は、副作用の発現の可能性があるため注意が必要です。ワーファリンでも抗凝血作用の増強が報告されているので、服用されている方は併用時の出血傾向に注意しなければいけません。
カロナール・アンヒバ・アセリオとロキソニンの違い
ロキソニンはNSAIDsに分類される医薬品です。カロナールとは違い、その作用機序はきちんと解明されています。
アラキドン酸の代謝によって発生する痛み物質・発熱物質(プロスタグランジン)の発生を阻害することで、解熱鎮痛抗炎症作用を発揮しています。末梢性で効果を発揮しており、中枢で作用すると考えられているカロナールとは異なります。
カロナールとロキソニンは作用機序が異なるため、両者は併用されるケースもあります。
カロナールは小児での安全性が確立されていますが、ロキソニンが使用できるのは15歳以上です。また、痛みに対する作用はロキソニンが優っているように思われていますが、適切な用量での使用であれば、カロナールの鎮痛効果はロキソニンに匹敵するとされています。
それではアセトアミノフェンの記事については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。
記事の中にも出てきたロキソニンについてもう少し詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。