2018年度の調剤報酬改訂によって、調剤薬局のあり方が大きく変わろうとしています。

 

現状で基準調剤加算を算定できている調剤薬局では、その収入の大きな割合を占めている基準調剤加算が廃止となり、より厳しい基準を持つ地域支援体制加算が新設されることとなりました。

 

この改訂によって調剤薬局はどのように変化していくのか、考察してみます。

スポンサーリンク

基準調剤加算とは

基準調剤加算は、一定の要件を満たした調剤薬局が算定できる調剤報酬です。

 

処方箋一件あたり32点の算定が可能ですが、調剤基本料1を算定していなければ基準調剤加算を算定することはできません。

 

算定要件は厳しいものの、高い点数設定であるために算定できれば大きな収入源となります。ただし、この加算は2018年度の改訂によって廃止されることが決定しています。

基準調剤加算の算定要件概要

  • 平日8時間以上の開局をし、土・日いずれかに一定時間以上開局し、週45時間以上の開局をしている
  • 1200品目以上の備蓄
  • 24時間体制(近隣との協力体制での対応も可)
  • 在宅業務を実施する体制の整備、並びに在宅業務の実績が年間1回以上
  • 麻薬小売業者の免許がある
  • 研修の定期的な実施
  • インターネットを利用した情報収集と情報提供できる体制
  • かかりつけ薬剤師の届け出を行っている
  • 管理薬剤師の要件として、保険薬剤師歴5年以上、在籍期間1年以上、週32時間以上の勤務
  • プライバシー保護ができる設備
  • 地域の介護医療機関との連携体制
  • 特定医療機関からの処方箋集中率が90%を超える場合には、後発品の調剤割合が30%以上

地域支援体制加算とは

地域支援体制加算は2018年度から新設される加算であり、その点数は35点となっています。

 

設定されている点数が基準調剤加算よりも高くなっているため、その算定要件は基準調剤加算よりもさらに厳しくなっており、体制を整えるだけではなく実績が必要になりました。

地域支援体制加算の算定要件概要

1.実績要件

・夜間休日等の対応実績400回

・重複投薬・相互作用防止加算等の実績40回

・服用薬剤調整支援料の実績1回

・単一建物診療患者が一人の場合の在宅薬剤管理の実績12回

・服薬情報等提供料の実績60回

・かかりつけ薬剤師指導料等の実績40回

・外来服薬支援料の実績12回

2.24時間体制の整備

3.一定時間以上の開局

4.地域の介護医療機関との連携体制の整備

5.特定医療機関からの処方箋集中率が85%を超える場合には、後発品の調剤割合が50%以上

 

※調剤基本料1を算定している保険薬局においては算定要件が異なり、下記のものが算定要件となります。(実績要件は求められていません)

  • 麻薬小売業者の免許
  • 在宅患者の薬学管理・指導の実績
  • かかりつけ薬剤師指導料の届け出、もしくはかかりつけ薬剤師包括管理料の届け出
  • 24時間体制の整備
  • 一定時間以上の開局
  • 地域の介護医療機関との連携体制の整備
  • 特定医療機関からの処方箋集中率が85%を超える場合には、後発品の調剤割合が50%以上

基準調剤加算と地域支援体制加算の違いとは

算定要件としては同じようなものではありますが、大きな違いは実績要件が8件追加された点です。

 

体制を整えるのみでは算定ができなくなることで、形だけの報酬としないための措置だと思われます。

 

唯一緩和された部分が、地域支援体制加算は調剤基本料に関わらず算定できるようになった点です。

 

基準調剤加算では調剤基本料1を算定できる薬局のみでの加算でしたが、地域支援体制加算は条件を満たせばすべての薬局で算定可能になりました。

 

調剤薬局が地域に提供するべき機能を、広くすべての薬局に求めることが目的でしょう。

スポンサーリンク

調剤薬局業界に与える影響は?

今回の地域支援体制加算の新設は、医療提供施設としての調剤薬局に対して、求められている機能も高いものとなっている表れと考えられます。

 

全体的に調剤報酬が低下していく状況の中、調剤報酬を算定するための条件も厳しくなり、薬局の経営状況は難しいものになっていきます。

 

現状の基準調剤加算は調剤基本料1が前提条件であったため、体制を整える労力の大きさも相まって対応を見送っていた薬局も多く存在していました。

 

今後は減収した分の補てんにあてるため、調剤基本料の前提条件がない地域支援体制加算の算定を目指していく薬局が増えていくことでしょう。

 

ただし、実績要件として多くの基準があるために簡単なものではありません。特に、服用薬剤調整支援料の実績を積むのは容易ではないでしょう。

 

患者の使用している薬剤を薬剤師からの提案によって減らすことができた場合に算定できる報酬ですが、ある意味では医師の処方権に踏み込んだ行動だと判断されかねず、反感を買ってしまう危険性もあります。

 

薬局の独立性と地域の連携があれば可能だという政府の判断なのでしょうが、実際の現場では医師に向かってそこまでの意見を言える薬局はどれだけ存在しているのか、疑問が残ります。

 

政府が医師に向かって言えないことを、薬局に代弁しろとでも言われているようにも感じられてしまいます。

まとめ

基準調剤加算は廃止され、地域支援体制加算が新設されます。

 

調剤基本料の条件は撤廃されますが、そのほかの要件は厳しい条件が提示されており、日本全国でどれだけの薬局が算定できるのかは未知数です。

 

調剤報酬のマイナス改定は今回も続いているため、なんらかの収益アップの方法を模索しなければ、経営的に厳しくなってしまう薬局も多いでしょう。

 

求められている機能としては、調剤薬局も医療提供施設だということを前提に、さまざまな業務が必要になっています。

 

対応できる薬局がどれだけ存在し、どれだけの薬局が生き残れるのかはわかりませんが、改訂によって調剤薬局が減っていくことも政府の想定のうちなのでしょう。

 

薬剤師としての職能を高め、新時代に対応できるようにしていきたいものです。