今回は漢方薬の人参養栄湯(ニンジンヨウエイトウ)について解説します。
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人参養栄湯の名前の由来
チョウセンニンジンが主薬であり、全身的に様々な機能低下と栄養状態を改善します。この作用を「養栄」とし、「人参」と組み合わせて人参養栄湯と命名されています。
人参養栄湯の作用機序と特徴
人参養栄湯は貧血の改善や栄養補給の目的で使用されている漢方薬で、含まれている生薬は地黄(ジオウ)、当帰(トウキ)、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)、人参(ニンジン)、桂皮(ケイヒ)、遠志(オンジ)、芍薬(シャクヤク)、陳皮(チンピ)、黄耆(オウギ)、甘草(カンゾウ)、五味子(ゴミシ)です。
東洋医学では漢方薬の適応を判断するため、個別の患者の状態を判断する「証」という概念を用います。人参養栄湯に適応がある証は虚証・寒証・血虚・気虚であり、体力が低下していて華奢、顔色が悪く気分がふさいで寒がりの人に適しています。
人参養栄湯は血流の改善や利水効果、汗を抑えてイライラを緩和する効果がある為、更年期障害にも用いられている漢方薬であり、特に顔色が悪く冷え性を呈している更年期障害に対して効果を発揮します。
漢方薬の作用機序は科学的に解明されていないことが多く、人参養栄湯も例外ではありません。
一部判明しているものでは、造血幹細胞の増殖を促進し、白血球・血小板・赤血球前駆細胞の回復を促進して造血効果を発揮するという作用と、サイトカインに作用して炎症物質の放出を抑制し、細胞障害を緩和する作用が報告されています。
そのほか、最近の研究では、認知症の原因とされているミエリンの減少を緩和する効果が報告されており、認知症に伴ううつ症状や認知機能の低下を改善したという報告があります。
ただし、通常の認知症治療を併用している場合の報告しかないため、人参養栄湯単独使用でも認知症の改善に効果があるのかは、今後の研究の進展を待たなければいけません。
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人参養栄湯の副作用
人参養栄湯では副作用の発現頻度が明確になる調査を行っていないため、その詳しい発生頻度は不明です。重大な副作用としては甘草に由来するものが報告されており、使用する際にはその兆候となる症状に注意が必要です。
低カリウム血症や血圧の上昇、浮腫を引き起こしてしまう偽アルドステロン症、前述の低カリウム血症の結果として筋肉の動きに悪影響を与えてしまうミオパチーの発生が報告されています。それらの可能性がある場合には、服用の中止やカリウム剤の投与などの適切な処置が必要になります。
その他の副作用として、食欲不振や胃部不快感、悪心・嘔吐などの消化器症状、発疹、発赤、掻痒などの過敏症状が報告されています。服用中にこれらの症状が現れた場合は、かかりつけの医師、薬剤師に伝えるようにして下さい。
副作用としての報告はありませんが、もともと皮疹などの皮膚症状を持っている患者が服用した場合、皮膚症状の悪化を起こしたという報告があります。すべての皮膚症状が悪化するわけではありませんが、何らかの皮膚疾患を持っている場合には慎重に使用する必要があるでしょう。
人参養栄湯の飲み方と注意事項
人参養栄湯は1日2~3回に分けて空腹時に服用するのが効果的です。もし服用を忘れて食事をしてしまった場合には、効果は減弱してしまう可能性はありますが気づいた時点で服用しても大丈夫です。
人参養栄湯は生薬をお湯に煮出して服用するタイプの薬でしたが、使い勝手を考慮した結果として煮出した薬液を加工し、散剤としたものです。そのため、服用する時には元の形に戻した方が効果的だと言われています。
あまりに熱いお湯では、薬効成分が揮発してしまうため、約60℃程度のぬるま湯で溶かして服用するのがよいでしょう。
甘草を有効成分として含んでいるため、重複して摂取することで副作用が発現しやすくなってしまいます。甘草を含んでいる漢方薬との併用はもちろん、その有効成分であるグリチルリチン酸を使用している医薬品も同様に注意しましょう。
妊娠中の服用は「有益性が危険性を上回る場合に使用すること」となっていますが、妊娠中の栄養補給の目的や貧血の改善を目的に使用されることがある漢方薬です。
ただし、妊娠中の使用であっても証に適していることが必要であるため、自己判断での服用はせずに医師の判断を仰ぐようにしましょう。
それでは人参養栄湯については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。