今回はニューキノロン系抗菌薬について説明していきます。

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ニューキノロン系抗菌薬の作用機序

 

ニューキノロン系抗菌薬の作用機序はDNA合成阻害です。これだけですとよくわからないと思いますので、もう少し詳しく見ていきましょう。

 

ニューキノロン系抗菌薬はDNAの合成(複製)に必要な酵素、Ⅱ型トポイソメラーゼ(DNAジャイレース及びトポイソメラーゼⅣ)を阻害する作用を持ちます。その結果細胞分裂が阻害され、細菌が死滅するのです。

 

ニューキノロン系はその作用から殺菌性抗菌薬に分類されます。

 

ちなみにDNAジャイレースはDNAをらせん状(コイル状)に畳んで細胞内へ収納する酵素です。DNAジャイレースがないと細菌はDNAを収納できなくなり死滅します。DNAジャイレースはヒトにはありませんので細菌に選択的に作用することができます。

 

一方のトポイソメラーゼⅣ。こちらは複製が完了したDNAを細胞分裂後の娘細胞に分け与えるために、親細胞からDNAを切断する作用を持ちます。トポイソメラーゼⅣはヒトにもありますが、細菌のものとは種類が異なるためヒトへの毒性は低いのです。

ニューキノロン系抗菌薬の特徴

 

ニューキノロン系で大切なのは濃度依存性であるということです。つまり分割して投与するのではなく、1回量を十分量に設定する事で最大の効果を発揮します。

 

例えばクラビット。現在は腎機能が正常であれば「1回500mg 1日1回」が常用量となっています。

 

以前は「クラビット錠100mg 1回1錠 1日3回」なんて処方が当たり前にありましたよね。これでは本来の効果が期待できないばかりか、副作用だけが出現するという最悪の事態に陥る可能性があるのです。

 

他にニューキノロン系の特徴として経口のバイオアベイラビリティが90~95%というものがあります。バイオアベイラビリティとは薬が体に入って、そのうちどれだけの量が体に実際に作用するかを%で表したもの。

 

これはつまり経口薬と注射薬はほぼ同等の効果が期待できることを意味します。

 

ニューキノロン系は世代の古いものは緑膿菌などのグラム陰性菌に有効でしたが、肺炎球菌などのグラム陽性菌にはいまいち効果が期待できませんでした。しかし世代が新しいものに連れて、グラム陽性菌にも効果を発揮するようになっています。

 

ちなみに肺炎球菌は呼吸器感染症の起因菌となる頻度が高く、これに対して有効性が高く、また肺への移行が良いものを特にレスピラトリーキノロンと呼びます。

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ニューキノロン系抗菌薬の相互作用について

 

内用薬の場合、アルミニウムやマグネシウム、鉄、カルシウム含有する食品等との併用は注意が必要です。同時服用によりキレートと呼ばれる化合物が作られることで消化管からの吸収が低下してしまいます。

 

そのため同時服用は避け、ニューキノロン系抗菌薬服用後少なくとも2時間以上服用間隔を空ける必要があります。逆の場合は3時間以上空けてください。

 

また非ステロイド性抗炎症薬(以下NSAIDs)との併用で痙攣を起こす事があります。ニューキノロン系は抑制性神経伝達物質であるガンマアミノ酪酸(以下GABA)がGABA受容体に結合するのを邪魔する作用を持ちます。

 

そしてNSAIDSはこの作用を高めると言われており、神経の興奮を抑えられなくなり、痙攣が誘発されるのです。一部の薬剤では禁忌となっています。

 

あとは抗凝固薬のワルファリンカリウムにも注意が必要です。ワルファリンカリウムの作用が増強し、出血しやすくなる可能性があります。

ニューキノロン系抗菌薬の副作用

 

主なものは吐き気、嘔吐、食欲不振などの消化器系症状とめまい、頭痛、不眠、痙攣などの中枢神経系の副作用です。

 

他には光線過敏症。日光が当たった皮膚が赤くなったり水ぶくれができたりする事があります。服用中はなるべく皮膚を露出しないようにした方がいいですね。

ニューキノロン系抗菌薬の注意事項

 

ニューキノロン系抗菌薬のどれか1つに耐性があった場合、他のニューキノロン系抗菌薬にも耐性があると言われています。

 

例えばクラビットを処方して効果がない場合、アベロックスへ変更しても、起因菌がクラビットに耐性がある場合には効果が期待できないという事です。ちなみにこれを交差耐性があるといいます。

 

またニューキノロン系は基本腎排泄型ですが、アベロックス(モキシフロキサシン)だけは肝代謝型になります。そのためアベロックスは尿路感染症には使用できません。これは覚えておいて下さい。

 

最後に小児、妊婦(又は妊娠の可能性がある場合)は禁忌です。これは軟骨の発達が阻害されて関節障害出る可能性があるため。また母乳に移行する事が報告されており、授乳中の服用は控えます。

 

ちなみに添付文書上の小児とは何歳でしょうか?

 

日本製薬工業協会様のサイトに掲載されておりましたので、以下引用させて頂きます。

*参考:小児等に用いている年齢区分(おおよその目安)
小児: 15歳未満
幼児: 7歳未満
乳児: 1歳未満
新生児: 出生後4週間未満
低出生体重児:体重2500g未満
(WHOのレコメンデーションによる)

これによると7歳以上15歳未満が小児になります。15歳以上であれば処方しても問題ないかと思われますし、実際現場では処方されています。ただ18歳以下は控えるよう記載されている書籍などもありますので、ここは医師の判断によりますね。

 

以上がニューキノロン系のまとめになります。最後まで読んでいただきありがとうございました。