とひびやあせも、ジュクジュクした湿疹などに処方されることが多い亜鉛華軟膏。それに良く似た名前で、亜鉛華単軟膏というのがあるのをご存じでしょうか?
この2つは医師(特に皮膚科医以外)の間でも混同されることの多い薬です。
今回は、亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の効能や副作用、両者の使い分けについて分かるように、それぞれの特徴を解説していきたいと思います。
スポンサーリンク
亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の作用機序
亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の主成分はどちらも同じ、「酸化亜鉛」です。酸化亜鉛は、局所のたんぱく質を変性させ組織や血管を引き締めることにより、止血や鎮痛を行います(収れん作用)。
また、皮膚密着性による皮膚の保護作用や防腐作用を持ち、炎症皮膚面においては炎症を抑え、肉芽形成や表皮の形成を促進させるなど組織の修復を促す効果も持ち合わせています。
亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の副作用
亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の副作用についてですが、どちらも炎症のある皮膚に使用する薬剤ですので過敏症や皮膚の刺激感などの副作用が出る可能性は否定できません。
しかし新生児や乳児の湿疹などにも使用されることも多く、とても安全性の高い薬であると言えます。炎症を抑える作用を持ちながら、ステロイドを含まないので長期の使用にも向いているお薬です。
使用できない場所としては、眼などの粘膜(刺激性)、重度や広範囲の熱傷(組織の修復を長引かせてしまう可能性がある)などが禁忌となっています。また、高濃度の酸化亜鉛を長期的に使用する場合には、皮膚の乾燥や痒みに注意が必要です。
スポンサーリンク
亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏の違いと使い分け
亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏、冒頭でお話した通りいずれも主成分は「酸化亜鉛」です。これら2つはどのように違うのか、またどのように使い分けるのかを見ていきましょう。
酸化亜鉛の含量、基剤、添加物の違い
まず、亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏では含まれる酸化亜鉛の量や基剤、添加物が異なります。
亜鉛華軟膏は酸化亜鉛を20%含有し、その基剤は白色ワセリンです。一方、亜鉛華単軟膏には含有量が10%と20%の2種類の製剤があり、基剤は単軟膏となっています。
亜鉛華単軟膏は含有量が異なる2種類の規格があるので、症状によって使い分けることができます。ちなみに、亜鉛華単軟膏20%は、サトウザルベ20%と言う名前で販売されているものと同じものです。
また亜鉛華軟骨は白色軟膏を基剤とし流動パラフィンを含むので、形状は白色で光沢があります。一方の亜鉛華単軟骨は単軟膏を基剤とした上でダイズ油やミツロウなどを含むので、形状はやや黄色味がかっており特異的な匂いがあります。
このように、基材や添加物の違いから匂いや外観にも違いが出ています。
両者の使い分け
酸化亜鉛の含有量が多い方がより効果が高いようにも思えますが、皮膚の乾燥や発赤、痒みが発現することがあるので、長期で使用する場合には10%の低濃度の方がよいと考えられています。
しかし、亜鉛華軟骨と亜鉛華単軟骨を使い分ける上で最も重要なのは、酸化亜鉛の含有量ではなくその基剤や添加物にあります。
亜鉛華軟骨に含まれる白色ワセリンは乳化剤を含んでおり、水分を吸収する作用があります。そのため、ジュクジュクした患部や浸出液が多い場合には亜鉛華軟骨が適していると言われています。
一方、亜鉛華単軟膏の方は水分を吸収する作用はほとんどありませんが、傷口にステロイド軟膏などを重ねて使用する場合には亜鉛華単軟膏の方が適しています。
例えば、浸出液が多い時期には乾燥させる力の強い亜鉛華軟骨を、肉芽が形成されて浸出液が減ってきてからは亜鉛華単軟骨に変える、というような使い方もされています。
まとめ
それぞれの違いを表にまとめました。
商品名 | 亜鉛華軟膏 | 亜鉛華単軟膏 |
主成分 | 酸化亜鉛 20% | 酸化亜鉛 10%、20% |
基剤 | 白色ワセリン | 単軟膏 |
添加物 | 流動パラフィンなど | ミツロウ、ダイズ油など |
形状 | 白色、光沢がある | 淡黄色、わずかに特異的なにおい |
特徴 | 水分を吸収する 浸出液が多い患部に適する |
水分をほとんど吸収しない ステロイド軟膏との重ね塗りに適する 長期使用には10%軟膏の方がよい |
両者は酸化亜鉛の含有量のみならず、その基剤や添加物、そして使用する患部の状態や用途によって使い分けます。
それでは亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏については以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。