医薬品を販売する時に用いられている価格のことを「薬価」といいます。この薬価は、政府によって全国一律に定められているものであり、これによって全国どこで医療を受けたとしても、薬の値段に差が出ないようにされているのです。
その薬価の取り決めについて、2016年度に新たな動きがありました。この記事では新たに検討されている薬価制度についてお話していきます。
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今までの薬価の改定とは?
新たな制度について語る前に、現在用いられている薬価制度について確認します。現在の薬価は政府によって二年に一度定められています。社会情勢や物価などが加味されて決められており、一般的に新薬は高価に設定され、既存の医薬品は改定ごとに価格を下げられています。
病院や調剤薬局での医薬品納入価も決定の判断材料にされていますが、この納入価は通常薬価よりも低いものであるため、改定ごとに薬価はその納入価に近づけられていき、引き下げとなるのです。
新たな医薬品の薬価を決める際、画期的な新薬である場合や適応外薬の使用を解消する適応がある医薬品である場合には、薬価加算が適応になります。この加算が適応になれば、毎年の改定によって引き下げられていく薬価が据え置きされるのです。
薬価が維持できれば収入も維持されることになり、メーカーとしては新たな薬の開発費用の捻出先として計算することができます。この他にも市場性加算や有用性加算など、様々な加算が用意されており、外国での平均薬価や同効薬の薬価もかんがみて決定されます。
薬価毎年改定の概要
薬価制度を抜本的に見直すため、その基本方針が閣僚によって決定されることになりました。経済財政諮問会議では、民間議員から「全品目に関して一年に一回以上の薬価改正を行うべきだ」という意見も出ているため、その議論が過熱しています。
実はこの薬価制度の見直しは、今回が初めて議題に出たわけではありません。過去にも議論され、頓挫したことがあるのです。その時は様々な業界から反対意見が出されたためですが、今回の議論はどのように進んでいくのでしょうか?
注目されているのは、薬価改定の頻度と品目に関してです。現状の二年に一回から一年に一回(毎年)に改定された場合、改定のたびに薬価は引き下げられていきますので、医療費の低減効果は確かにあるでしょう。
では、実際の医療現場にはどのような影響を及ぼしてくるのかみていきます。
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薬価毎年改定は医療業界にどう影響するのか
現状の薬価改定は、診療報酬の改定と共に行われているため、大きな変化は感じにくい部分がありました。薬価の引き下げによる収入の減少よりも、診療報酬の改定による収入の変動の方が影響が大きいからです。
ですが今後、毎年の薬価改定となれば、診療報酬改定とは関連性が薄くなり、薬価の引き下げの影響が強くなってくることでしょう。診療報酬の改定と異なることは、どうあがいてもプラス改定になることはあり得ないということです。
薬価が引き下げられることで、メーカーも医薬品卸に安く卸さなくなりますので、当然値引きは渋くなります。今までの薬価差益はこの先期待できなくなると考えていいでしょう。
取引先となる医薬品卸は今まで以上に利益を削って取引を行わなければいけなくなります。特に販社は厳しくなるでしょうね。卸だけでなくメーカー間のM&A(Merger and Acquisition:合併と買収)も増えると思います。
まあこの業界、今までが良すぎたのかもしれませんね。
薬価毎年改定による薬剤師への影響は?
このように業界で考えていけば大きな影響を持っている薬価制度の見直しですが、現場で働いている薬剤師にも当然関わってきます。
業界の収入が減ることは、その一部である薬剤師などの収入も低迷することになります。改定内容にもよりますが、特に調剤薬局ではかなりの影響が出ることが予想されます。
医療業界で働いている人たちの待遇が悪くなれば、医療サービスの低下につながるかもしれません。モチベーションも下がります。また卸やメーカーの収入が減ることで、私達が受けられるサービスにも制限が出てくることも予想されます。
まとめ
過去に頓挫した経験のある薬価制度の見直しですが、まだ記憶に新しい新薬「オプジーボ」の薬価引き下げという異例の事態が後押しをしています。詳細はまだはっきりしていませんが、薬価の毎年改定はほぼ実施されそうな勢いです。
薬価が毎年改定されることになれば、国民医療費の削減効果は期待できますが、医療業界の衰退の兆しになってしまう可能性もあります。医療従事者への待遇にも直接かかわる可能性のある問題、慎重に議論を進めていただきたいところです。
それでは薬価毎年改定による薬剤師への影響については以上となります。最後まで読んで頂きありがとうございました。