今回はインクレチン関連薬(DPP-4阻害薬)のザファテックについてお話していきます。平成27年5月28日に発売されました。
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ザファテックとは?
ザファテックはDPP-4阻害薬であり、世界に先駆けて日本で発売されました。
名前の由来は経口糖尿病治療薬初の週1回製剤ということで、”The first technology” からZafatek:ザファテックと命名されました。一般名はトレラグリプチンになります。
作用を簡単に説明すると、『週1回の服用で血糖値が高い時にインスリンの分泌を促し、血糖値を下げる』となります。それではもう少し詳しくみていきましょう。
インスリンの働きについて
私達が摂った食事(糖質)はそのまま身体に吸収されるわけではありません。アミラーゼなどの消化酵素によりブドウ糖まで分解され、小腸から吸収されます。その後にブドウ糖は血液中に移動するわけです。
いわゆる血糖値は血液中のブドウ糖の量を指します。ブドウ糖は筋肉や肝臓などの全身の臓器に運ばれてエネルギーとして使用されます。また残ったブドウ糖はグリコーゲンや脂肪として蓄えられます。
「ブドウ糖を筋肉や肝臓などの全身の臓器に運ぶ」これを行っているのがインスリンです。
ブドウ糖が各臓器に運ばれても、臓器を構成する細胞の入り口が閉じているとブドウ糖は中に入る事ができません。
インスリンは細胞の入り口を開ける事ができます。
こうして初めてブドウ糖は細胞内に入り、エネルギーとして利用できるようになります。また血液中のブドウ糖が減ることで血糖値が下がります。
健康な人はこれらが自然に行われているため、血糖値がきちんと管理されているわけですね。
ではインスリンの働きが悪く、入り口のドアを少ししか開けることができない場合どうでしょうか?
入り口が狭いため、ブドウ糖が細胞内に入る量が減ってしまいますよね。
また入り口を開ける能力を持つインスリンの量が少なかったらどうでしょうか?
こちらも同じようにドアが十分に開かないため、細胞内に入るブドウ糖がいつもより少なくなってしまいます。
これらが原因で、いつもは細胞内に入っていたブドウ糖が血液中に残ってしまい、血糖値が高くなってしまいます。
この状態が続くと糖尿病になってしまうのです。
インスリンの働きが悪い状態をインスリン抵抗性といいます。インスリンの量が少ない状態をインスリン分泌不全といいます。改善する方法は2つです。
・インスリンの量を増やす。
ザファテックは下のインスリンの量を増やす薬になります。これだけ見るとアマリールなどのSU剤と同じですが、作用が異なります。
それではの作用機序の前に、今回のメインであるインクレチンについてお話ししていきましょう。
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インクレチンとは?
インクレチンとは血糖値上昇に伴って、主に小腸から分泌されるホルモンです。
血糖値が高い時だけ分泌が促進されるこれがポイントです。
インクレチンにはGLP-1とGIPがあります。GLP-1はglucagon-like peptide-1の略です。日本語ではグルカゴン様ペプチド1。
GIPはglucose-dependent insulinotropic polypeptideの略で日本語ではグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチドといいます。
とても長ったらしいので、皆さんはGLP-1、GIPだけ覚えておけばOKです。
GLP-1は膵臓のβ細胞にあるGLP-1受容体に結合、GIPも同じく膵臓のβ細胞にあるGIP受容体に結合します。
すると細胞内のATP(アデノシン三リン酸:生命活動に必要なエネルギー源)がアデニル酸シクラーゼという酵素によりcyclic AMPに変換されます。
次にcyclic AMPはプロテインキナーゼAという酵素を活性化します。
プロテインキナーゼAは細胞膜上のカルシウムチャネルを開き、細胞内にカルシウムイオンが入ると、インスリン分泌顆粒と呼ばれる部分からインスリンが分泌されます。
ちなみにインスリン分泌作用はGLP-1の方がGIPよりも強いです。
更にインクレチンは、インスリン分泌を促す以外の作用も持ち合わせています。これを膵外作用といいます。
GLP-1は膵臓のA(α)細胞から分泌されるホルモンであるグルカゴンの分泌を抑制します。
グルカゴンは主に肝臓のグリコーゲンを分解してグルコースを作り出します。これを抑制できれば血糖値の上昇を抑える事ができます。
他にも胃の運動を抑制し、食べ物が腸へ送られるのを遅らせたり、脳に働きかけ、食欲を抑制する作用も持っています。
これにより食後の血糖値上昇、体重増加を抑制できます。
ただ、とても素晴らしい働きをするインクレチンですが、DPP-4(dipeptidyl-peptidase-4:ジペプチジルペプチダーゼ4)という酵素により数分で分解されてしまうのです。
だったら分解されないためにはどうすればいいか?
そこで登場するのがザファテックです。
ザファテックの作用機序と特徴
ザファテックはインクレチンを分解する酵素DPP-4に結合します。するとDPP-4はその働きが失われます。
結果、インクレチンは分解されず、膵臓に辿り着き、インクレチン本来の作用を発揮できるようになります。
アマリールなどのSU剤もインスリンの分泌を促しますが、血糖値の高低にかかわらず作用するため、膵臓が疲れてしまいますし、低血糖を起こしやすくなります。
それに対しザファテックは血糖値が高い時だけ作用しますので、膵臓の負担を軽くでき、低血糖を起こす可能性も単剤では低いのです。
さて冒頭でもお話したザファテック最大の特徴、週1回投与について。
ザファテックは武田薬品から販売されている1日1回タイプのDPP-4阻害薬「ネシーナ」をちょっとだけ改良した薬です。
ザファテックはネシーナにF(フッ素)を結合したものです。これにより半減期が38~54時間(ネシーナ約17時間)、作用も1週間持続させることが可能になっています。
ザファテックの薬価ですが、50mgが530.1円、100mgが995円となっており、腎機能が正常であれば100mgを週1回服用します。(※薬価は平成30年4月時のもの)
一方ネシーナは25mgを1日1回の服用となっており、ネシーナ25mgの薬価は167.3円です。7日分だと1171.1円となり、ザファテックの方が176.1円安いことになります。
気になる効果の方ですが、1日1回タイプのネシーナに対して非劣性、副作用の方も同程度とされています。
つまり効果と安全性については概ね同じ、と考えて頂いてよろしいかと思われます。
ただし冒頭でお話した通り、日本が世界で一番最初に発売されるため、発売後は注意深く見守る必要があるでしょう。
ザファテックの消失経路は腎排泄型となっています。肝臓でほとんど代謝されず、多くが未変化体として腎臓から尿として排泄されます。
腎機能障害のある方は血中濃度が上昇する可能性がありますので、高度の腎機能障害の方は禁忌、中等度の場合は以下を目安に減量して対応します。
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ザファテックの効能効果・用法用量
ザファテックの副作用
副作用ですが、まずは低血糖。薬の性質上ザファテック単剤では起こりにくいですが、インスリン分泌を促進するSU剤などと併用する場合はやはり注意が必要です。
他にも便秘や腹部膨満感なども出現する可能性があります。急性膵炎や腸閉塞、肝機能障害なども稀ですが報告されています。
急激な腹痛や嘔吐、黄疸などが現れた場合は直ちに病院を受診するようにして下さい。
それではザファテックについては以上とさせて頂きます。最後まで読んで頂きありがとうございました。
出典:
ザファテック錠100mg/ザファテック錠50mg 添付文書・インタビューフォーム